「タグ付け」とは...TwitterやInstagramなどのSNSにおける投稿で、関連する人物の名札を付けること。SNSアカウントを持っているならば、「〇〇さんがあなたをタグ付けしました」などの通知を受け取ったことがあるだろう。この「タグ付け」行為は誰にでもできることであり、家族でも友人でもない見知らぬ人からの通知を目にすることも多い。
そんな「タグ付け」をサスペンス要素として捉え、ミステリーとして映像化した作品が2019年、日本上陸を果たした。ここではHuluにて絶賛配信中の海外ドラマ『t@gged/タグド』の魅力を紹介しよう。
※これは、あなたの身近でも起こりうるお話です。
目次
『t@gged/タグド』を製作したAwesomenessTVとは?
『t@gged/タグド』は2016年より、米AwesomenessTVにて放送が始まった。同局は、俳優やプロデューサーとして活躍していたブライアン・ロビンスにより、最初はYouTubeチャンネルとしてローンチされた、いわばWeb配信系の放送局だった。10代から20代へ向けた番組制作を主にしていた同チャンネルは、そのYouTubeでの功績が認められ、のちにスティーヴン・スピルバーグの製作会社としても知られるドリームワークスに買収された過去も持つ。
『t@gged/タグド』あらすじ
夏の終わりを惜しむ女子高生のローワン(ルル・アンタリクサ)とヘイリー(リア・マリー・ジョンソン)が新学期を迎えた、ある日、彼女たちのSNSアカウントに「モンキーマンさんにタグ付けされました」という通知が届く。タグ付けされた動画には、彼女たちと同世代と思しき女の子がショットガンで射殺される様子が映し出されていた。
最初は加工によるフェイクだと思っていた二人だったが、次第に身の回りで不可解な現象が起こり、大きな不安を抱き始め、彼女たちの他にタグ付けされていたエリシア(ケイトリン・ネイコン)という女子生徒とコンタクトをとることに。
過去に親友だったが今は仲違いしているローワンとヘイリー、そしてミステリアスな雰囲気を纏ったエリシアの3人は、モンキーマンと名乗る謎の人物が仕掛けるゲームに強制的に参加させられる。次第に全く繋がりがないと思われていた人物たちが大きく関わり始め、衝撃の"事実"へと誘われていく...。
「SNSって怖い」と思わせる猟奇スリラー
タイトルや内容的な部分では、日本でも大ヒットを記録した『プリティ・リトル・ライアーズ』や全世界で社会現象を巻き起こした『13の理由』などを彷彿とさせるものがあるのだが、本作はその先入観をガラリと変えてくる。
もはやティーン・スリラーの域では留まらない猟奇的なストーリーや描写が繰り広げられ、TwitterやInstagramといったSNSに対して恐怖すら感じさせるほどだ。まさに今この瞬間にも見知らぬ誰かと繋がっていることに言いようのない恐怖を覚え、誰かに監視されているのではないか、仲の良いフォロワーも実はヤバイ奴なのではないかといった疑心暗鬼に陥ってしまう...本作はそんなSNS社会への危惧を、ホラー要素たっぷりに描き切った、猟奇スリラーなのである。
ぜひとも画面の隅々にまで目を向けてほしい...あらゆる伏線の数々や怪しげな監視者の存在に身が震えるだろう。
ティーンの危うさを浮き彫りにした秀作
本作で描かれるのは、SNSの恐怖だけではない。むしろもっと怖いのは、劇中で描かれるティーンのリアルな日常なのだ。
誰もが誰かを陥れようとするドロドロとした人間模様、信じていた友人による裏切り、親の過保護から手を出してしまうドラッグ問題、自らを罰するように行う自傷行為など、現代のあまりにもむごく屈折した学園生活から生じるティーンエイジャーたちの苦悩や葛藤が赤裸々に、そして克明に描写されている。
ともすれば死へと繋がりかねないティーンの危うさを浮き彫りにした秀作でもあり、より一層の恐怖を与えてくる作品でもあるのだ。
次世代を担う若手女優たち
本作にはハリウッドの未来を担う次世代の若手女優がメインキャストとして出演している。
学校での人気はいま一つだが、年上男性と交際中のローワンを演じるのは、ルル・アンタリクサ。彼女は『ジェシー!』や『とび蹴りアチョ~ズ!』などディズニー・チャンネルで経験を積み、2018年から米The CWで放送が始まった『ヴァンパイア・ダイアリーズ』のスピンオフ『Legacies(原題)』にも出演している新進女優だ。
ローワンの元親友で人気者のヘイリー役には映画『新しいワタシの見つけ方』のリア・マリー・ジョンソンが扮し、自傷癖のある謎多き女子生徒エリシア役は『ウォーキング・デッド』イーニッド役で知られるケイトリン・ネイコンが演じる。
彼女たちの他には、『プリズン・ブレイク』でスクレの悪友ヘクターを演じたカート・カセレスや『MACGYVER/マクガイバー』で天才ハッカーのライリーを演じたトリスティン・メイズらが出演。海外ドラマファンなら思わずニヤけてしまうような役柄で登場している。
現代社会では、ありとあらゆるツールを利用して他人と繋がることができる。そんなSNS社会に生きるすべての人たちの人生に起きうるリアルな恐怖を描き出した作品が、『t@gged/タグド』である。決して目を背けてはならない現実があることを教えてくれる海外ドラマだ。
(文・Zash)
Photo:『t@gged/タグド』©2016 Awesomeness, LLC All Rights Reserved