「ジョディと一緒に冒険していきたい」『ドクター・フー』シーズン11 初の女性ドクター役、朴璐美さん直撃インタビュー

1963年に英BBCで放送が始まり、現在まで不動の人気を誇るイギリスの国民的長寿SFドラマシリーズ『ドクター・フー』。2017年には、最もエピソード数の多いSFテレビシリーズとしてギネス世界記録にも認定された本作の新シーズンにして、初めての女性ドクターということでも話題を呼んでいるシーズン11が、2月8日(金)よりHuluにて独占配信開始となった。今シーズンからドクターを演じるのは、『ブロードチャーチ ~殺意の町~』のベス役で知られるジョディ・ウィッテカー。そして日本語版吹替えでドクターの声を担うのは、『NANA -ナナ-』大崎ナナ役や『リゾーリ&アイルズ ヒロインたちの捜査線』リゾーリ刑事役の声優でお馴染み、朴璐美さん

本作の配信開始に合わせて、ベテラン声優の朴さんが作品の見どころや新ドクターの魅力などについて熱く語ってくれた。

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ドクターといえども本作のドクターは医者ではない。宇宙の間違いを正すのが仕事。残虐な異星人ダーレクとの全面戦争をただ一人生き延び、惑星ギャリフレイからやってきた主人公は、見た目は人間の姿をしているが、2つの心臓を持ち、死に瀕すると別の体へと再生することができるエイリアン。ポリスボックス型宇宙船「ターディス」に乗り、地球人の仲間と一緒に時空を自在に移動しながら、様々な事件を解決し人類の危機を救う――。

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――『ドクター・フー』は何十年も続く(55年にわたる)歴史あるシリーズですが、今回吹替を担当なさるにあたって、ドラマをご覧になった印象をお聞かせください。

知識として調べる程度には調べたんですけれども、作品自体はまだ観ていないんです。今回参加させていただくシーズン11に関しては、「きっと前作ではこういう流れがあったんだろうな」とか、「きっとドクターってこういう性格なんだろうな」というのがセリフやシーンから感じることができたので、凄く面白いなと思いながら今収録しています。

――今回、シリーズ初の女性ドクターを担うことが決まった時のお気持ちはどうでしたか?

アニメでも男性役だったり女性役だったりするのですが、外画(海外映画・ドラマ)でもあんまり性別の関係のない役をやることになるんだなあ、という風に、正直最初は思ったんですけれども...。でも見た感じ、(ドクターは)凄くキュートな女性だったので、あまりそのあたりは気にしないでやらせていただこうかなと思って。1話目に関しては、まだ女性に転生したばかりということで、言葉遣いとかも女性寄りではない言葉をチョイスしていこうかと、そんなことをディレクターさんとお話ししていたので、そんな感じにさせていただきつつ...。2話目以降は、徐々に女性寄りに...なっているかどうかちょっとわからないですけど(笑)、やってはいます。複雑な気持ちですね。

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――ドクターというキャラクターと、演じている女優ジョディ・ウィッテカーの印象について聞かせてください。

実は(この作品で)初めてこの女優さんを拝見させていただいているのですが、本当に可愛らしくて、ウイットに富んでいて。凄く体当たりで、全身全霊でドクターを演じているっていう感じがあって。彼女もノリにのって演じているんじゃないかなと思いました。そういうエネルギーみたいなものを凄く感じるので、私もあまりそこまで考え過ぎずに、彼女とは呼吸を合わせやすいなというのはありますね。あれだけ早口で、あれだけ膨大なセリフ量で、最初は「大丈夫かなぁ?」と思ったんですけれども、全身で(ジョディが)演じているのがわかるので、とらえやすい。凄く頭のいい女優さんだなということも感じます。

――1話目を拝見させていただいたんですけれど、朴さんの声がとても自然で、ドクターの雰囲気にぴったりだなと思いました!

ありがとうございます。本当に、演じづらさみたいなものはなくて。他の声優さんと掛け合いで一緒に(アフレコの)テストができると楽しいんですよ。ただ、本番は声が被ってしまうといけないので、別撮りになっちゃうんです。それがちょっと寂しいな、と。

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――これまで朴さんは色々な方の声を演じていらっしゃいますが、ジョディが演じるドクター限定で結構ですので、特にこのキャラクターの好きなところを教えていただけますか?

凄い正義感が強いところですかね。自分では、「ダメだよ、これをやっちゃダメだよ」って言いながらも、結局がやってしまっているというところ。理性や感情よりも、何より先に正義感が勝ってしまって自分が動いちゃうところが、エイリアンなのに人間らしいなぁって思っちゃいました。あと、ちゃんと責任感があるところ。人と関わった時にきっちりその人に対する責任を全うしようとしたりとか...。死というものに対して彼女なりにちゃんと「とても残念」という、たった一言かもしれないけれども、そういう言葉をきっちりかけるところとか、とても魅力的だなと思います。そうありたいと思います。

それから(ドクターは)とても寂しがりやな人だから、それがいつ出てくるのかまだわからないですけれども、そういうところも大事にしながらやりたいなぁと思いますね。彼女と一緒に楽しみたいです。

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――ドクターの他に、ライアンとヤズとグレアムの3人がレギュラーとして登場しますが、この3人のキャラクターについてはどのように思われますか?

最初は誰がレギュラー化していくのかもわからない状態で、この3人とずっと一緒に物語が続いていくことを(収録)現場に行って初めて知ったんですよ。なので「なぜこの3人なのかな」って凄く不思議だったんです。なんですけど、お話を進めていけば進めていくほど、そこに『ドクター・フー』の作品としての伝えたいメッセージとかが、キャスティングにも表れているんだなと感じて、「なるほど!」と思わざるを得ないです。面白いだけじゃなくて、凄くメッセージ性の強い作品だからイギリス人って凄いなって思います。

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――本作はイギリスのドラマということですが、アメリカのドラマと雰囲気は違いますか?

違いますね。派手にカッコよくエンターテイメント! っていうのも凄く素敵で素晴らしいと思うんですけど、『ドクター・フー』って、まだ先のことはわからないですけど、無駄がないというか、ぶっ飛ぶ理由がきっちりあるという感じで。全部ちゃんとロジックで説明できる。そんな感覚がある作品。それでいて、ウイットに富むところは富んでいる、とても見応えある作品づくりだなって思います。

――派手に見せるためだけのアクションではないと...

そうですね。変に恋愛ものとかっていうわけでもなく、人と人、生命と生命。こういう愚かな歴史を人間は繰り返しているとか...、何て言うんだろう、繰り返すことではないとか、人間としての反省点とか、っていうものがきっちりある上で、それをダイレクトに伝えるのではなく、こういう変化球が必要だからというところで作られている気がして。こういう作品を子どもの頃から観てたら、感じることはたくさんあるんだろうなぁって思って。イギリスって凄いなぁと思いました。

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――朴さんは、海外の実写作品からアニメ作品まで色々声優を務めていらっしゃいますよね。『リゾーリ&アイルズ』のように、長く続いていく主要キャラクターは、キャラクター自身もどんどん成長して変わっていくと思いますが、長く同じ役をやっていく上でこれは大変だなと思うことや、やってて良かったなと思うことなどありましたら教えていただけますか?

リゾーリは凄く低い(声の)トーンを使っていて、とても早口だったんです。ディレクターさんが躍動感を作品に出すために(セリフを)詰め込むだけ詰め込むんですよ! 絶対にプラス1行分は(セリフが)多いと思うんです。だけど「いや、入る」って言って削らずに入れていくんで、あれはちょっと大変でしたね。しかも、彼女自身がユニークな人なので、そういうところも入れこまなきゃいけなかったりとかしたので...毎週の収録日が怖い! みたいな感じはありましたね(笑)。でも、その分やりがいも凄く感じました。「長く続けばいいな」って思う作品が比較的早く終わってしまったり、逆に、「こんなに長く続くんだ!?」とかね。作品によって色々とストーリー展開に個性があって、面白いなと思いながら観ています。

『リゾーリ&アイルズ』に関して言えば、しんどいながらにも、割といろんな方々から『リゾーリ&アイルズ』観てますってお声をかけていただけて。吹き替えや声の仕事とは直接関係無い方とご一緒したときにも「まさかこれ、朴璐美?」って(笑)。そういうお声をいただけるのも長く続けていって嬉しいなと思うことです。

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――最後に視聴者の方にメッセージをいただけますか?

(今シーズンからドクターが)男性から女性になったというところを、かなりジョディさんが意識して演じられていることは間違いないので、私もそれを感じながらやらせていただきました。そのあたりを楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。でも、不思議なんですよね、どうして洋服のサイズが合っているんだろうって(笑)。そういう不思議はたくさんあるんですけど。前回の男性のドクターを引き継ぎながらも、彼女なりの魅力を相当入れていると思うので...そういうところも含めて新たなドクターを見ていただけたらなと思います。

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『ドクター・フー』シーズン11(全11話)は、Huluプレミアにて2月8日(金)より独占配信中で、毎週金曜日に新エピソードが追加。「情熱と希望とエネルギーに満ち、カリスマ性があって機知に富み、アクションもこなす」とジョディが語る、初の女性ドクターの活躍を是非ご覧いただきたい。

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Photo:

朴璐美さん
『ドクター・フー』シーズン11 Ⓒ BBC 2018