ハリー杉山&柏木しょうこも絶賛! BBC×KADOKAWA英国ドラマのススメ  『ドクター・フー』編

大人気の『SHERLOCK/シャーロック』を始め、その本格的で斬新なストーリーと才能ある人気俳優たちにより、今や世界を席巻する勢いのBBCドラマ。その中でも、1963年放送開始の長寿SFドラマ『ドクター・フー』は、主人公"ドクター"が様々な時代や場所を行き来出来るマシン"ターディス"に乗り、地球にやってくる宇宙人たちと戦うという普遍的なストーリーと、世代交代を繰り返しながら、それぞれに個性を放つドクター役の俳優たちの活躍により、50年以上もの長きにわたりイギリス国民に愛されてきました。

その高い人気と歴史の長さから、まさにイギリスの国民的ドラマと呼ぶにふさわしいこの作品の魅力を、イギリス出身で、本国での人気ぶりをよく知るハリー杉山さんと、数々の海外ドラマの翻訳に携わり、イギリスのテレビドラマにも詳しい字幕翻訳者・柏木しょうこさんに語っていただきました! 歴代ドクターに対する想いなど、本作を愛するお二人の情熱溢れるトークをお楽しみください!

 

――昨年日本でも待望のDVDパッケージがリリースされた『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション』。奇抜なビジュアルに、ユニークなキャラクターもたくさん出てきて、あのスピルバーグ監督もエリザベス女王も大好きだという『ドクター・フー』とは一体どんなドラマなのか、イギリス本国ではどんな存在なのかを教えて頂けますか?

ハリー:はい。まず、イギリスというと『007』シリーズのジェームズ・ボンドのイメージが強く、「かっこいいなあ」と思う方も多いと思います。――が、実際のところ、イギリス人にとっては、ドクターは、もう子どものときからの"あこがれ"なんですね。みんな一度は「ドクターになってみたい!」と思う。そういう存在なんです。一見、「SFだから...」と思って、ちょっとためらう方もいるかもしれないけど、とにかく夢があるんです! 日本だと子どもの時にみんな『ドラえもん』見ますでしょ? それに近いと思います。

 

柏木:私も大賛成。夢がある! 『ドクター・フー』はイギリス人の知人に勧められました。翻訳の仕事柄さまざまな映画・ドラマを観るのですが、「これを観たら気分転換になるよ。面白いよ」と言われて。行ったこともない未知の世界へドクターと一緒に行けるなんて、日本だと漫画の『銀河鉄道999』とか、それこそ『ドラえもん』の世界だったけど、「イギリスは実写でやるんだな」と思いましたね。

ハリー:そうなんです。まず、画(え)がハデなんです。他のイギリスものに比べて。『ドクター・フー』はイントロからしてもうハデ! 僕もう30のいい大人ですけど、「ウィ~イ~イ~ン」ってターディス(※外見はポリスボックス:ドクターが移動するタイムマシンのこと)がまわって、オープニングのあの曲が始まるともうテンションが物凄く上がるんです! ワクワクする!

柏木:本当にそうですよね。『ドラえもん』だと、机の引き出しからタイムマシンに乗るわけですけど、『ドクター・フー』はあのポリスボックス(60年代によく見られた市民が警察に通報するための電話ボックス)がタイムマシンになっているじゃないですか! ...ところでイギリスにポリスボックスは今もあるんですか?

ハリー:この間ロンドン行ったときは...ピカデリーの辺りでは見かけていないですね。でも僕が住んでいた頃...15年くらい前には、いろいろな所にあったと思います。『ハリー・ポッター』の中でも、ポリスボックスで魔法界に通じていますよ。今でもイギリスに、まだ存在している場所があるんじゃないかな。

 

柏木:ターディス、本当に凄いですよね。「どうやって異言語がわかるの?」って聞くと、ドクターが「ターディスには自動翻訳機能がある」とちゃんと説明してくれたりして、「私も欲しいッ!」って思いましたよ、仕事柄(笑)ターディスがあれば、翻訳の仕事いらなくなっちゃうかもしれないけど(笑)それでけっこうファンになったんです。ハチャメチャなようで、ちゃんと説明してくれるというのも『ドクター・フー』のいいところですよね。あとエイリアンがかわいい。おもちゃやガラクタみたいな外見なのに。「こんなちっこい奴にやられるのか~!」って思わず言っちゃいたくなるようなのも出てきますよね。

ハリー:そうそう! で、たまに本当に怖いのもいますよね。ガチでエイリアンぽいやつ(笑)エイミーが子どもの時に壁の中にいたやつ。

柏木:あ~~あれは怖いです!(笑)

ハリー:『ドクター・フー』シリーズでは本物の科学者がゲスト出演していますし、やはりボンドに負けないくらい、みんなのあこがれなんですよ、ドクターの存在は。もしマット・スミスが町中を歩いていたら「あ!ドクター」って言われるんですよ。

柏木:ヘレン・ミレンが、何かのインタビューの時に、「そろそろ女性ドクターが登場してもいいんじゃないかしら。私もやりたいわ」って言っていたことがあったんです。名女優ヘレン・ミレンですよ。純粋に"なりたい"っていう役があるって、すごいなと思いましたね。

 

――お二人はお気に入りのドクターはいますか?

ハリー&柏木:デヴィット・テナントが好きです。

――10代目デヴィット・テナント、大人気ですね!

ハリー:テナントはドクターをセクシーに演じることができたんです。ドクターの時のテナントはトム・クルーズやブラピよりセクシーだった! ドクターって、かっこよさはそこまで求められないはずなんです。頭がキレて面白いけどちょっとモテなさそう。でもテナントはセクシーだった!

柏木:コンパニオンとは恋愛関係にならないはずだけど、テナントのドクターをみてると「こりゃ好きになっちゃうよ」って思っちゃうんですよね。優しいんだけど、全面的に出すわけじゃないし。ちょっと孤独な感じもして。告白したいんだけど、できない。告白してしまったら、何か友情関係が崩れてしまうような緊張感がありますよねえ。

ハリー:あー、友達になってしまったパターンですね。

柏木:ローズ・タイラーの気持ちが良くわかる。

 

――ちなみに、ドクターとコンパニオンが結婚するかも、というような可能性はあるんでしょうか?

ハリー:いや、それはないでしょう。(ビシッ)ドクター、相当の年齢のおじいさんですからね。そもそも人間じゃないし。

――そうなんですね...。でもかっこいいからなあ、ドクター。

ハリー:テナントは、今でも愛されているドクターですね。ここまで愛されている、というのは彼の力量が素晴らしいのだと思います。

柏木:実は、11代目マット・スミスになってからは、「このドクターちょっとな...」と思っていたんですよ。セクシーさが足りない...というか、最初はどうも違和感があって。でも、観ているうちにクセになる魅力があるというか、パグとかチャウチャウみたいな(笑)いつの間にか、ハマってしまって、次のシーズンには大好きになっていました。だからあれだけ私にとってはテナントがドクターだったにもかかわらず、いつの間にか、ドクターは彼(マット)になっていくんですよ。もしも似ていたら比較してしまうのでしょうけど、全然違う個性があるから、そこが良いのでしょうね。

ハリー:マットに関して、それは母性本能がくすぐられる、ということですか? 僕はすんなりマットを受け入れられることが出来たんですよ。知性も感じられるし、不器用じゃないですか。僕にとってはピンアップ的な人で、しかも歴代で一番若いドクター。シーンによって物凄く若くも見えるし、めっちゃおっさんにも見えるし、いい役者さんですよね。

 

柏木:そうですね。味がある。現12代目ドクターのピーター・カパルディはどうしてもリシュリュー枢機卿(笑)なんです。(※柏木さんは、ピーターが出演しているBBCドラマ『マスケティアーズ/三銃士』の字幕翻訳を担当)マットはやさしげなドクターだったけど、ピーターになったら「なんか怖い!」(笑)と。でも「今回のドクターはどうかな?」という期待を感じで続けてみていけるドラマってなかなかないですよ。

ハリー:本当に。ドクターが代わる時は、ツイッターが大荒れしますからね! 社会現象になる。「自分の世代のドクターが一番だぞ」ってそれぞれの世代が応えられる。自分もその世界に入って、ドクターを見守りつつ入り込んでいきたくなります。

柏木:そうそう。そういう見方をして日本の女性も楽しめるんじゃないかな。夢があるし、ロマンチック。SFとかオタクっぽいとか、そういうのだけで観ないのは、もったいない。

ハリー:家族全員で、サザエさんをみるような感覚で、こたつの中でみかんたべながら観て頂きたい。お父さん、お母さん、こども、みんなに大ヒットするのは間違いないですよ!身近に感じられる宇宙。敵も怖いけど、本当にカラフルでおもちゃみたいな世界。まさに非現実的。90年代なかばのブラーのミュージックビデオみているみたいなんです。非常にオシャレですよ。マットは今年は映画『ターミネーター:新起動/ジェニシス』にも出ますし、とにかく『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション』は必見です!

 

■DVD情報
「ドクター・フー ニュー・ジェネレーション」DVD-BOX1-3
(C)2014 BBC Worldwide Ltd.
「ドクター・フー ニュー・ジェネレーション」スペシャル
(C)2015 BBC Worldwide Ltd.

発売:株式会社KADOKAWA &BBCワールドワイド
販売:株式会社KADOKAWA

■放送情報
『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション』 [字幕版] ミステリー専門チャンネル「AXNミステリー <BBC FIRST>」にて日本初放送
6月4日(木)スタート 毎週木曜22:00~深夜0:00 ※2話連続
※第1話プレミア放送 5月6日(水)22:00~23:05

 

Photo:『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション』
「ドクター・フー ニュー・ジェネレーション」DVD-BOX1-3
(C)2014 BBC Worldwide Ltd.
「ドクター・フー ニュー・ジェネレーション」スペシャル
(C)2015 BBC Worldwide Ltd.