『ブラックライトニング』と『メディア王』は「まったく逆のホームドラマ」!? 町山智浩が語る

2月20日(水)に都内で『ブラックライトニング』『メディア王~華麗なる一族~』という2作品のDVDリリースを記念した試写会&トークイベントが開催され、映画評論家の町山智浩が両作について独自の視点を展開した。

『ブラックライトニング』の主人公は、DCで初めて自分の名を冠したコミックブックシリーズを持った黒人ヒーロー。荒れた街で暮らす人々を守るため、高校の校長として働くかたわら、夜になると電気を操るスーパーヒーローのブラックライトニングとなり悪と戦っているというキャラクターだ。彼は妻子のために一度は普通の生活に戻ったものの、結局離婚し、中年になってからヒーローに復帰と、珍しい経歴を持つ。

町山は、本作にはアメリカにおける社会問題を反映した要素が数多く盛り込まれていること、本国アメリカでの放送局はネットワークなので放送禁止用語が使われていないことなどを解説。そして主演のクレス・ウィリアムズが実は名門大学のUCLAに通うシェイクスピア俳優だったと紹介し、「彼もまさか48歳になってタイツ履いてアクションをやるとは思ってもみなかったかも」とコメント。そして主人公が怒ると雷が落ちる点を「まるで日本のカミナリ親父」と表現した。

深い知識に裏打ちされた町山の独特の視点はもう一作の『メディア王』に対しても発揮される。こちらはアメリカではケーブルのHBOで放送されているため、『ブラックライトニング』と違ってFワードが連発されるなど表現の制限が少ないことを紹介。世界の経済界をも牛耳るニューヨークの大富豪一族を描いた同作は、シェイクスピアの悲劇「リア王」を下書きにしつつ、実在するメディア王ルパート・マードックもモデルになっている。そのため、スタッフには社会風刺に長けたアカデミー賞受賞歴もあるアダム・マッケイを擁するほか、クリエイターのジェシー・アームストロングはかつてマードックに関する映画の脚本を書いていたという、ハリウッド通の町山ならではの情報も披露された。

父親だけでなく、子どもや妻もクセモノばかりということで、「大金持ちといっても成金なので教養もなくて下品で、庶民をバカにしているようなサイテー人間ばかり。そこが面白い。全員悪人の『アウトレイジ』の金持ちバージョンみたいなもの」と語る町山。ただし、この作品で描かれているような金銭や権力をめぐる衝突や裏切りは実際に有名企業や財閥で起きていることだと指摘し、「世界中でよくある話。これも一種のホームドラマでリアル」と描写した。

最後、両作は「まったく逆のホームドラマ」とまとめた町山。『ブラックライトニング』は「学校で非暴力を唱えながら夜な夜なギャングをこらしめているお父さんの話」、一方の『メディア王』は「世界の政治を左右する男を頂点にした家族同士の醜い争い」で「傍から見ていると面白い」と結論づけた。

『ブラックライトニング<シーズン1>』のDVDが好評リリース中、『メディア王~華麗なる一族~』のDVDは3月6日(水)にレンタル開始となる(どちらも発売・販売元はワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント)。(海外ドラマNAVI)

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町山智浩