【日本未上陸】奔放な性、世界の終わりと宇宙人...グレッグ・アラキ・ワールド全開の『Now Apocalypse』

刺激的映像で綴られる、ルール無用のサイケデリックな世界へようこそ。米Starzで3月上旬から放送中の『Now Apocalypse(原題)』は、マリファナとセックスの快楽に溺れる若者たちを追った、クセの強いコメディ・シリーズ。奔放なナイトライフを謳歌するうちに、夢と現実の狭間の世界に引き込まれてゆく――。

♦︎役者の夢に挫折した青年に、終末世界の予知夢?

男前だが怠け者の青年、ユリシーズ(アヴァン・ジョーギア)。「俺の人生は疑問符だらけだ」とこぼす彼は、俳優の道をすでに諦め、タバコとマリファナに浸る日々を送る。夜な夜なデートアプリで出会った男たちと同性同士の怪しげなパーティーに興じており、ガブリエル(タイラー・ポージー)が最近のお気に入りだ。

そんなユリシーズは、脚本家志望のフォード(ボー・マーショフ)とルームシェア中。性的趣向はストレートのフォードだが、ユリシーズ側が男性にも興味津々のため、なにやら複雑な関係に発展する予感が。さらにはネット中継のチャットガールをして稼ぐカーリー(ケリー・バーグランド)も加わり、ユリシーズの生活は輪をかけて刺激的になってゆく。次第にユリシーズは、性欲の強いエイリアンによって世界の終末(アポカリプス)が訪れるという夢を見るように。その夢には奇妙な現実感があり...。恋とセックス、そしてアーティストたちのプライドをテーマにした、サイケデリックなコメディ・シリーズ。

♦︎直球の性描写

恋愛と性を直球で描写する本シリーズには、おそらく眉をひそめる人もいるはず。しかし、それすら製作サイドの計算のうちだろう、と米Los Angeles Times紙は述べる。作中では色気のある濃厚なシーンが、相手と場所を変え何度も展開される。たとえばシリーズ冒頭では、主人公のユリシーズが情事を終えて帰宅。するとルームメイトのフォードとその彼女のセヴェリーヌ(ロキサーヌ・メスキダ)との濃厚なシーンに出くわすという流れだ。「一夫一婦制なんて自然の摂理に反する社会的束縛」と言い放つセヴェリーヌをはじめ、それぞれのキャラクターたちが強烈な印象を残す。

複数間での交際や男性同士の激しいセックスなどを、常識外なまでに素直に描写する作品、と米Hollywood Reporterはコメント。同メディアは出会ったばかりの二人が路地裏で行為を始めるくだりを紹介。万人に勧められる作品ではないが、独特の世界観に惹かれた人はとことんハマる作品だろう。

♦︎監督のクリエイティビティ爆発

『Now Apocalypse』は、その独創的なスタイルが一番の魅力。似たような作品は容易には思いつかない、とLos Angeles Times紙はクリエイティビティを認めている。強いて挙げるならば、2017年にリブートした『ツイン・ピークス』に近いと同紙はコメント。海外ドラマの原点となった同作のように、新しいジャンルを開拓する気迫を感じさせる作品だ。

監督・脚本は日系三世のグレッグ・アラキで、本作は彼の作風を色濃く反映している。完全に常識を超えて展開するその世界を、Hollywood Reporterはアラキ流が最大限に発揮された成果だと見ている。全10話のエピソードを監督とともに共同執筆するのは、カーリー・ショルティーノ。セックスと恋愛についての人気ブログ『Slutever』を開設した女性とあって、本作の執筆はおそらくお手の物。性とドラッグ、そして迷走する若者たちの姿を忌憚なく描き切ったドラマとなった。

夢と現実の境界をさまようコメディ『Now Apocalypse』は、米Starzで放送中。(海外ドラマNAVI)

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アヴァン・ジョーギア ©Tinseltown / Shutterstock.com