2018年のベストドラマとして、英米各紙がこぞって推した秀作スリラー『キリング・イヴ/Killing Eve』。サンドラ・オーがゴールデングローブ賞ドラマ部門主演女優賞にも輝いた本シリーズにシーズン2が登場した。MI6職員・イヴと、美しき暗殺者・ヴィラネルの攻防が再始動する。
憎しみ合い惹かれ合う宿敵たち
英国保安局で平凡な事務処理を担当していたイヴ(サンドラ・オー)は昨シーズン、冷酷な暗殺者・ヴィラネル(ジョディ・カマー)による政治家の暗殺を見抜いたことで、英秘密情報部・MI6の秘密チームに登用される。ヴィラネルを拘束しようと攻めに出るが、逆に命を狙われる事態に。ヨーロッパを舞台に繰り広げられる二人の女性同士の命の駆け引きは、明るいユーモアを交えながら早いテンポで展開し、各メディアから絶賛を浴びた。
新シーズンは昨年のショッキングな幕切れの直後からスタート。ロンドンに戻ったイヴは、MI6での上司・キャロリン(フィオナ・ショウ)から、ネット界のとある大物が不審死した件の調査を命じられる。一方で重傷を負い持ち金も尽きたヴィラネルは、昨年の凛々しさは何処へやら。パリの街をあてどなくさまようことに...。宿敵同士の行く末が気になるシーズン2が始動する。
敏腕でもないエージェント
本作は、スリリングなシーンの合間に流れる独特のユーモラスな描写が大きな楽しみのひとつ。シーズン2のあるエピソードには、イヴの同僚がタンブラーに水を注ぐシーンが――。ただひたすら水が溜まるのを待つだけのシーンだが、なんとも言えない巧妙な間の使い方とイヴの絶妙な表情に思わず笑いのツボを刺激される。イヴ役のサンドラはこういった繊細な表情の演技が非常に上手で、沈黙しているだけでもおかしいと、米Entertainment Weeklyは褒め称えている。
シーズン2冒頭のエピソードでは、前期フィナーレの影響でヨレヨレになったイヴの姿が哀しくも愉快。米Newsweekは、ときおり奇行に走るイヴの姿を描写している。ある時は数千円分の大人買いしたキャンディーを駅で貪い子どもの注目を浴びてしまい、追い払わんとばかりに子ども染みた視線で睨み返す。またある時はイライラを鎮めようと掌をボールペンで刺してしまい、ドラッグ中毒者と勘違いされることも。クールさとは一味違ったキャラクター性で新しいエージェント像を切り拓くシリーズだ。
主演・サンドラのパフォーマンスに心酔
『グレイズ・アナトミー』で知名度を上げたサンドラは、本作シーズン1の名演でゴールデングローブ賞を受賞。一見無愛想な中にも輝きを放つ彼女の演技は、そのほか多数の賞にノミネートされており、実績を考えればそれも当然だとEntertainment Weeklyは語る。
シーズン1も含め、本作でのサンドラの演技は各方面で大きな賞賛を浴びている。訳のわからない状況のなかで混乱するイヴだが、サンドラの演技によってどこかその状況に説得力が加わり、スッと感情移入できるようになっている。ヴィラネルに魅力を感じ始めているのか、あるいは彼女の生き方を真似したいとさえ思い始めているのか。シーズン1末尾の行動に込められた意味など、表情を崩さないイヴの内側に秘められた思いをつい想像してしまうほどだ。
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『キリング・イヴ/Killing Eve』©Parisa Taghizadeh/BBCAmerica