まだ10代にしてドラッグを売って稼ぐ少年が、ある日街から忽然と姿を消す。その消息を追うのは、全盲で意志堅固、そしてたまに卑屈で大酒呑みと、特徴豊かな20代女性主人公。そんなキャラクター設定の好評な『In the Dark(原題)』が、米CWで4月上旬から放送されている。
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友の失踪を信じるのは私だけ
20代の盲目の女性マーフィー(ペリー・マットフェルド『シェイムレス 俺たちに恥はない』)には、すぐに酒とタバコに逃げてしまう悪い癖が。その性格が災いしてか、理解あるルームメイトのジェス(ブルック・マーカム『ディードラ&レイニーの列車強盗』)のほかに友達と呼べるのは、ティーンエイジャーにしてドラッグの売人として稼ぐタイソン(サメラ・プムルワナ『世にもおぞましい物語』)くらいのもの。
あるとき街に出たマーフィーは、足元に転がっていた物体につまずきよろめいてしまう。手の感覚を頼りに確かめると、それは人間の死体。しかもその顔に触れた彼女は、タイソンの死体に間違いないと確信する。
慌てて警察に通報したまでは良かったものの、警官が現場に到着するまでに死体は忽然と姿を消してしまう。自分の娘も盲目だという警官はマーフィーに優しく接するが、さすがに死体なしに殺人事件の捜査を始めることもできない。タイソンの従兄弟さえもタイソンは生きていると諭すが、一度信じれば歯止めが効かないのがマーフィーの性格。警察の制止を振り切りタイソンの携帯のGPSを追跡すると、果たして高架下に打ち捨てられている彼の携帯を発見。しかし、辺りに本人の姿はなく...。
盲目の女性を自然に表現
主演のペリーは、幼くして視力を失ったマーフィーという女性をごく自然に演じている。決して盲目の女性を演じようとしているのではない、とDecider誌は指摘。ある一人の女性を演じようとしており、そのキャラクターがたまたま目が見えないというだけだ、と同誌は語る。あたかも盲目も一つの個性といった具合に、さり気なく演じる力加減は絶妙。視界の有無ではなく、むしろ常にふさぎこんでいるなど、一人の人間としての性格のほうが印象に残るようになっている。
本作のストーリーについてTV Guide誌は、盲目の人々を勇気づけるだけでなく、より広い範囲の人々に語りかける可能性があると評価。ハンディキャップだけを特徴とせず、豊かな特性を持った一人の人間としてキャラクターを掘り下げたことで、信念の下に真実を追うマーフィーの物語が輝きを放っているだ。
新系統のシリーズ、CWの未来を担う
本作放送局のCWと言えば、熱烈に元カレを追う弁護士を描いた人気コメディ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』がシーズン4で終了して間もない。他局に比べ、まだ設立から年数のたたない同局には看板シリーズも多くはないが、本作のような作品がある限りその将来は明るい、とTV Guide誌は見る。ほかには『ARROW/アロー』などスーパーヒーローものでも一定の評価を得ている同局だが、『In the Dark』ではまったく違ったジャンルを開拓。ダークでアダルトな雰囲気をまとったストーリーで魅せている。
とくに第1話は至高の出来栄え。CWが近年放送したさまざまなドラマの初回と比べても最高の仕上がりだった、とDecider誌は述べている。パイロット版は今から約1年前、アメリカの大手6スタジオが共催する試写会「LAスクリーニング」にて披露され、好評を得ていた。初回放送話ではまだ一貫したトーンが確立されていない点が気になるが、今後のエピソードで改善されることだろう。
マーフィーの個性に惹かれる『In the Dark』は、米CWで放送中。レビュー中に触れた同局のコメディ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』は、Netflixで日本からも視聴可能。(海外ドラマNAVI)
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ペリー・マットフェルド
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