大ヒット大河ファンタジー『ゲーム・オブ・スローンズ』が先日ついに完結した。それを受けて、デナーリス・ターガリエン役のエミリア・クラークが物議を呼んだラストも含めて振り返っている。本作がずっと記憶に残り続ける理由、そして迫力たっぷりのスピーチに隠された苦悩などについても語ってくれた、米Varietyのインタビューをお届けしよう。
――『ゲーム・オブ・スローンズ』がついに完結しましたね。気分はいかがですか?
なんだかとても現実とは思えないの。正直、すごく不思議な感じがするわ。あれだけ大きな作品だったから、感覚が麻痺しているのかも。私たちはかなりの期間、お別れを言い続けてきたの。ラスト2シーズンはまるで、"ああ、本当に終わりが近づいているんだわ!"って感じだった。作品全体が来たる冬に向けて動いていたから、撮影現場ではずっと終わりに備えて準備していたの。みんなで長い時間をかけて物語を紡いできて、私のパートや他の人のパートの撮影が次々に終わり、作品が完成した。そして最終章の第1話が放送され、最終章で最も大きなエピソードであるシリーズ最終話もついにお披露目された。本当にすごい体験だったから、物語の結末を見る頃にはすっかり無感覚になってたわ。
――デナーリスが赤の王城〈レッド・キープ〉で大軍を前にスピーチする様は圧巻でした。あのシーンの撮影にはどう取り組んだのですか?
それについて聞いてくれて嬉しいわ。私はそれまでにもドスラク語やヴァリリア語という存在しない言語について勉強して様々なスピーチをしてきたけど、あのシーンに対してはすごくプレッシャーを感じていたの。俳優なら誰でも同意してくれると思うけど、セットで長い時間を過ごした後で家に帰って翌日のためのセリフを覚える時、存在しない言語のセリフを覚えるのはすごく大変なの! 死にそうな気分だったわ。普段は早目に取り掛かるんだけど、このスピーチは違った。失敗するんじゃないかってすごく心配になったの。
だからそのシーンの撮影までの2カ月くらいの間、毎晩遅くまで起きて、家のレンジや冷蔵庫を相手にそのスピーチの練習をしていたの。窓からベルファストの人々に向けても話しかけたわ! とはいえ、窓はちゃんと閉めておいたけど。近所の人から「何をどなってるんだ?」とは思われたくないから(笑)
セリフを言いながら買い物したり部屋の片づけができたら、そのセリフをモノにしたってことなの。そうやってしっかり時間をかけることで、例のスピーチに備えることができた。それでも撮影前夜は"できないわ。絶対失敗しちゃう"と泣きながら考えて全然眠れなかった。このシーンはデナーリスというキャラクターを形作る上で不可欠な場面だと分かっていたから、重圧を感じちゃってたのよね。
撮影では、グリーンスクリーンを相手にスピーチしたわ。誰もいないガランとした部屋にあるのは、カメラとグリーンスクリーンだけ。そしてスタッフは"おやおや、女王が存在しない言語をしゃべってるぞ"って感じで、私は誰ともつながっていない状態だったの。だから、しっかり準備しないと、バカなことをやるであろうことは分かっていた。私が絶対に失敗するとあまりにも強く確信していたものだから、ダイレクトコーチがすぐそばに控えていたわ。でもそこで不思議なことが起こったの。撮影現場に足を踏み入れると、リハーサルも必要なく、最初のテイクで完璧にこなすことができたのよ。その日はずっと、私の中にデナーリスが一緒にいる気分だったわ。あの時だけは、カメラの前でまったくとちることなくスピーチをやり切ったの。もし翌日もやるよう言われていたら、すっかり忘れちゃってたから無理だったでしょうね(笑)
存在しない言語でスピーチするにあたって、今振り返ってみるとおかしいけど、いろんな独裁者や権力者が話している映像をたくさん見たわね。彼らが話しているのが自分が知らない言語であっても、その内容が分かるのかを知りたかったの。そして実際、分かるのよ! 例えばヒトラーがドイツ語で何を言っているのかが理解できるの。だから思ったの。"私が自分の言葉一つひとつを信じれば、視聴者には字幕なしでも伝わるはず"って。
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――最終章をめぐって視聴者の意見がかなり割れています。あなた自身は、本作が遺したものは結局何だと思われますか?
私が思うに、『ゲーム・オブ・スローンズ』がこれまでずっと描いてきたのは、権力と、それが個々の人間、あるいは集団に与える影響に対する問いかけね。それが一番最初のエピソードから最後のエピソードに至るまで描かれてきたことだと思うの。それってまるで太陽の光をつかむようなものよね。太陽の光であれ何であれ、そのパワーを理解し、それが個々に与える影響について考え、各自がそれを自分たちのために使おうとする。
様々な駆け引きによって牛耳られる世界で人々が共存していくためには話し合いが不可欠だと思うの。それが最後のエピソードで提示された問いかけなのよ。ただし、その答えは語られていない。なぜなら、それは簡単に答えが出るようなものじゃないから。無理よ。私たちにできることはただ、正しい答えを出せるよう努力し続けることだけなの。でも、この作品はその答えに近いものは提示できたと思うわ。
『ゲーム・オブ・スローンズ』最終章は、BS 10スターチャンネルにて6月22日(土)9:15より字幕版が全話一挙放送。二カ国語版は6月28日(金)22:00スタート。さらにスターチャンネルEXにて字幕版が全話配信中。また、舞台裏に迫る2時間のドキュメンタリー番組が6月22日(土)18:45より独占日本初放送となる。
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『ゲーム・オブ・スローンズ』
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