あの時チェルノブイリで何が起きたのか...33年前の事故を克明に描く『チェルノブイリ』

33年前の旧ソ連で起きた、チェルノブイリ原子力発電所事故。史上最悪の人災とも言うべきこの事態の現場では、一体何が起きていたのか? 英米共同製作のミニシリーズ『チェルノブイリ』は、ヨーロッパ中を恐怖に陥れた一連の事態を克明に描写する。米HBOと英Skyなどで5月上旬から放送中。

深夜の実験を緊急事態が襲う

現地時間1986年4月26日、深夜1時23分。原子力発電所で実験中だった4号炉は制御不能に陥り、炉心溶融と水蒸気爆発に至った。事故発生後、発電施設内にいた職員たちは致死量の放射線を被ばくする危険性に気づき、恐怖に震える。館内が停電に見舞われるなか、全身火傷を負い、助けを求める作業員も複数という惨状。しかし事態の沈静化に全力を傾ける上役と政府は、発電所での事故とその危険性を認めようとしない。そんななか、高線量の放射線に晒された鳥がバタバタと空から墜ち始める...。

事故後に所内で活動した人間のなかには、被ばくの危険性やそれによる健康被害などを十分周知されていなかった者たちも。爆発による火災を鎮火するため多くの消防士たちが現場に投入されたが、放水が届く至近距離まで炉心に接近しながらも、現場で呼吸したり物体に触れたりすることがいかに危険であるかを告げられることはなかった。さらに住民のなかには、死の灰が降り注ぐなかで野外に立ち尽くす者も。悲惨な事故の顛末を、政府当局、発電所員、周辺住民などの複合的な視点で振り返る。

状況は刻一刻と悪化

チェルノブイリ事故では数々の不手際が重なり、状況は悪化の一途を辿った。本作『チェルノブイリ』は、その様子を生々しく描写する。冒頭2話は実にやり切れない、と息も詰まるような視聴体験を英Telegraph紙は綴っている。当局や施設管理者が不適切な対応を続けた結果、事態は1秒ごとに最悪の方向へ。時間を浪費するばかりの煩雑な事務手続きや、責任逃れに必死の担当者たちなどが、極限状態に陥った現場の混乱に拍車をかける。

そして当時のソビエト政府は事態の隠蔽に躍起になる。無知な者たちによるリーダーシップと腐敗行為が、事態をいっそう悪化させ死者の数を跳ね上げる結果となった、と米Hollywood Reporterは厳しく指摘している。現場から遠く離れた場所で官僚たちが保身に走る間にも、チェルノブイリの地では次々と犠牲者が発生。病院に担ぎ込まれた人間からただれた皮膚がはがれ落ちるなど、ホラームービー級の映像が押し寄せる、と同メディアは表現。一人たりとも正確な知見を持ち合わせない現場で、時が経つほどに混迷が深まってゆく。

並外れた才能が揃う

本作の緊迫のシーンを盛り上げる役者たちも粒揃いだ。主演を務めるのは、英国出身のベテラン俳優ジャレッド・ハリス。事故の調査委員会責任者を務めたヴァレリー・レガソフを熱じる。唯一真実に向き合おうとする彼は、爆発と委員会の対応に怒りと恐怖の感情を募らせる。副エンジニア長役のポール・リッターは、『ヴェラ ~信念の女警部~』の病理医ビリー・カートライトで知られる53歳の実力派俳優。未曾有の大惨事が目の前で起こりながらも、その現実をまったく認めようとしない頑固な技術者を演じる。当局の機嫌を伺ってばかりの発電所長には、英国BBCの犯罪サスペンス『ハッピー・バレー』や北欧ミステリーの英国社会派ミステリー『The Tunnel-サボタージュ』などで活躍する俳優コン・オニール。ドラマを牽引するこうした才能をはじめ、あらゆる演者が並外れた才能を発揮している、とTelegraph紙は賛辞を贈る。

製作・脚本は意外な人選となっており、コメディ畑で実績のあるクレイグ・メイジン(映画『ハングオーバー』シリーズ)がペンを執り、音楽活動と並行してドラマ『ブレイキング・バッド』や『ヴァイキング ~海の覇者たち~』でも名を馳せるヨハン・レンクがメガホンを取る。こうして完成した本シリーズについてHollywood Reporterは、黒煙が容赦なく迫る事故現場を説得力のある描写で再現している、と高く評価している。

現場の憔悴と無能な上層部へのフラストレーションに、否応なく脈拍の高まる『チェルノブイリ』はU-NEXTにて配信中。(海外ドラマNAVI)

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ジャレッド・ハリス ©Denis Makarenko / Shutterstock.com