映画だと基本的に一人の監督が最初から最後まで担当するのに対し、ドラマではミニシリーズであっても一人の監督がすべてのエピソードでメガホンを取るのは珍しい。複数の監督が存在するドラマシリーズを作る点でのポイントとは何だろうか? 海外ドラマの世界で活躍してきた監督たちが、ドラマシリーズでメガホンを取る上で重視している点やコツについて、米Varietyのインタビューで語っている。
『クリミナル・マインド FBI行動分析課』や『SUPERNATURAL スーパーナチュラル』でシーズン1から10話以上にわたって監督を務めてきたベテランのガイ・ノーマン・ビーによれば、コツはセッション・ミュージシャンのように次々と感覚を切り替えていくこと。「現場に着いてプラグを差し込んだら即スタートだ。ギアを上げて走ってる電車に飛び乗った後、優雅に飛び降りるようなスキルを持っていることが、この業界で生き抜くためには必要なんだ。自分の評判が付いて回るからね」とコメント。そして自分の場合は、カメラ部門からキャリアをスタートしたためにカメラや機材の知識が豊富なことも、監督を務める時に大いに役立っているとも述べている。
大ヒット映画『ワンダーウーマン』の監督パティ・ジェンキンスは、ドラマシリーズでは『ブル~ス一家は大暴走!』や犯罪捜査ドラマ『THE KILLING ~闇に眠る美少女』などで監督を務めているが、ドラマの仕事では次のエピソードでメガホンを取る監督のために概略図を作成しているという。キャリア初期の頃にドラマの現場を経験したジェンキンスは、各部門のトップや俳優に簡潔にメッセージを伝えることの大切さを学んだとのこと。自分がしていることや、その仕事の引き継ぎにしっくりくるトーンを大まかに、かつ明確に伝えることが不可欠で、「引き継ぐ人がベストな仕事ができるよう万全のサポートをするよう努めている」と語っている。
そして、飛び飛びでエピソードを担当する場合はシリーズの「リズムを掴むこと」がコツだと主張するのは、コメディドラマ『モダン・ファミリー』や『ユニークライフ』などを手掛けてきたライアン・ケイス。ドラマシリーズの監督は演技などを含めてコントロールできることも多いが、新しくストーリーを作り直すわけではないため、自分のアイディアは出しつつもショーランナーのビジョンを的確に映像化できているかどうかを確認することも大切だと指摘している。
最後に、刑事コメディドラマ『ブルックリン・ナイン-ナイン』やシットコム『それいけ!ゴールドバーグ家』などでエピソード監督を手掛けるクレア・スキャンロンは、自分がメガホンを取るシリーズのこれまでのペースやビジュアル的なスタイル、トーンなどをリサーチして理解しておくことが欠かせないとしている。そうすることでショーランナーの好みが分かり、これまでのトーンと合わせるための骨組みを作ることができるが、それは「ロケでも舞台での撮影でも同じ」だと説明した。そうした姿勢が評価されたのか、スキャンロンはシーズン2から数話担当したコメディドラマ『アンブレイカブル・キミー・シュミット』の特別編で再びメガホンを取ることが決定している。
やはり映画とドラマではかなり要領が異なる様子。よって事前にシリーズの作風を把握したり、次の監督にうまく引き継ぎできるよう配慮することが重要になってくるようだ。
Photo:
『クリミナル・マインド FBI行動分析課』
(C) ABC Studios