バットマンの執事アルフレッドの若き頃を描く『Pennyworth』予想外のキャラ設定が話題に!

硬派で屈強、そして孤独なイメージが強いバットマンことブルース・ウェイン。そんな彼にとって最も身近な人物と言えるのは、邸宅を守る執事であり助言役のアルフレッドかもしれない。ダークヒーローを支える影の立役者に迫る『Pennyworth(原題)』が、米Epixにて7月下旬から放送中。ゴッサムシティを舞台にしたクライムドラマ『GOTHAM/ゴッサム』のスピンオフである本作は、バットマンが登場しないにもかかわらず、予想を超える面白さだと評判だ。

1960年代のロンドン市街。将来バットマンに仕えることになるアルフレッド・ペニーワース(『刑事モース ~オックスフォード事件簿~』のジャック・バノン)は、ここではまだ20代の若者だ。イギリス空軍の特殊空挺部隊を除隊した彼は、腕っぷしの強さを生かして警備会社を興すことを決意。父親(『女刑事マーチェラ』のイアン・プレストン・デイヴィス)は彼に執事の職に就いてほしいと望んでいるが、アルフレッドは意に介さない。

ある日、ひとまずクラブの用心棒として働いていた彼は、怪しげなアメリカ人に出会う。この相手こそ、将来ブルース・ウェインの父親となる、若き日のトーマス・ウェイン(『Fleabag フリーバッグ』のベン・オルドリッジ)だった。ビジネスで大金を手にしたトーマスは、アルフレッドにある任務を依頼。数十年続くことになる、ウェイン家とアルフレッドとの絆がスタートする。

まるでジェームズ・ボンド?

主人公はバットマンでなく執事のアルフレッド。脇役を起用したドラマである上に前日譚ということで、結末もある程度予想できてしまう。本来ならば脚本家にとって極めて扱いづらい題材だ。しかしそんなハンデを物ともせず、まだ執事になる前のアルフレッドを中心に据えた魅力的な物語が展開する。そんな本作について、想像をはるかに上回る優れたドラマであり、『007』シリーズのような雰囲気さえ漂わせていると米Indie Wireは述べている。

シリーズが成功した秘訣はキャラクター像のギャップだ。バットマンの世界のアルフレッドは、ヒーローを陰から支える名脇役。いつも温和な表情を崩さず、ひたすら主人に忠実な印象だ。しかし本作での彼はまったく異なり、横柄な態度が鼻につく粗暴な男として描かれている。将来なるはずの品の良い執事の影を微塵も感じさせない様はまるで一種のホラーであり、だからこそ面白い、と米Hollywood Reporter誌。のちの性格が知れ渡っていることを逆手に取り、計算し尽くされた脚本の妙。スピンオフならではの試みに、視聴者は心地良く翻弄されることだろう。

『GOTHAM』のゴールデンコンビ再び

本作の製作にあたり、『GOTHAM』を手掛けたゴールデンコンビが再結成。クリエイターのブルーノ・ヘラーと、製作総指揮のダニー・キャノンが再びタッグを組んでいる。Hollywood Reporter誌は、『GOTHAM』は彼ら二人のビジョンの賜物である一方、『Pennyworth』は原作コミックの雰囲気を汲み、よりダークで大人なトーンを楽しめるようになっていると分析する。

『GOTHAM』は今年放送されたシーズン5をもって完結。非常に良い出来だった、とIndie Wireが回想したそのクオリティが示す通り、本作の完成度も高い。戦闘シーンの片隅に描かれる路地裏の空気感などのリアリティあふれるビジュアルは、過去にほとんど例がないほどにロンドンを巧みに描写した作品だと称賛されている。

ゴールデンコンビが描くバットマン前日譚『Pennyworth』は、米Epixで放送中。本家『GOTHAM』はシーズン1~3がNetflixで配信されている。(海外ドラマNAVI)

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『Pennyworth』LAプレミアで主演のジャック・バノン(左端)と共演者たち
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