父親との死別以来、生きる意味を見出せなくなってしまった30歳前後の男。だらしなく毎日を送るだけだった彼だが、価値観を共有できる仲間を見つけたことで人生が一転、仕事も恋も順調に進み出す。元ダメ男と現役ダメ人間たちのコメディ『ロッジ49』。8月中旬から、米AMCでシーズン2の放送が始まっている。シーズン1は日本でもAmazon Prime Videoで全10話を配信中だ。
放浪男がやっと出会った、かけがえのない仲間たち
底抜けに陽気に振る舞う、元サーファーの男・ダッド(ワイアット・ラッセル)。一見好き放題に生きているようだが、父の死による心の傷が癒えていない。遺された借金も頭痛の種だ。一攫千金を夢見て海辺で金属探知機を使った宝探しをしていると、砂の中から不思議な指輪を発見。そこに刻まれた紋章が縁で、ロッジ49と呼ばれる不思議な「秘密結社」の仲間入りを果たす。シーズン1では冒険とも奇行とも言えるメンバーの日常に巻き込まれるうちに、ダッドは新たな親友と仕事、そして生きがいを見つけ、心の傷を癒していった。
ゆったりムードだったシーズン1のオープニングから一転、今期は墜落しつつある飛行機のなかの、騒々しいシーンからスタート。ダッドとロッジ49の古株・アーニー(ブレント・ジェニングス)がキャビンで寛いでいると、謎の男(ポール・ジアマッティ)が駆け込み、非常事態を告げる。慌てふためく3人だが、脱出用のパラシュートは二つしかなく...。
破茶滅茶コメディ、時々しんみり
ドタバタ喜劇が山盛りの本作を、とにかく愉快な作品だと述べるのは米Hollywood Reporter。イタズラ好きなウサギのバッグス・バニーが暴れ回るカートゥーン作品『ルーニー・テューンズ』を想起する、とも形容している。シーズン1も含めて何度も見返したくなるようなギャグの宝庫となっており、シーンが変われども一貫して緩いムードが楽しい。
ギャグと同時に、しんみりと心に訴えかけてくる隠れたテーマも見逃せない。米IndieWireは、ロッジ49のメンバーたちはみな自由人に見えるが、内面では誰もが心の拠り所を探している、表する。結社のなかでの役割をこなしたり、ときには拠点の奥に設えられたバーで仲間と酒を酌み交わしたりしながら、ダッドたちは生きている実感を得ようとする。まったく関係ない人々の寄り合い所帯にも思えるロッジ49だが、その実態は、ともに頼り合うかけがえのない仲間なのだ。
お気楽コメディと死の足音
能天気な日々を送るメンバーたちだが、ときおり訪れる決死のエピソードがあってこそ物語も引き締まるというもの。つつがない毎日を送れれば十分だというダッドたちの前に、生きるか死ぬかを賭けた壮大な問題が持ち上がる。しかし、そんな重大な局面でも、背後のテレビからはカリフォルニアの名所紹介番組の呑気な音声が。こうした意図的なミスマッチのほか、力が入っているようで的外れなスローガンや親父ギャグの応酬など、シリアスとナンセンスの絶妙な配合で笑いを仕掛ける。制作総指揮はイギリスの同名コメディをアメリカ版にリメイクした『ザ・オフィス』をプロデュースしたピーター・オッコ。共同製作・脚本のジム・ギャヴィンとともに脚本を方向づけ、教養と無知とが入り混じった世界を作り上げた、とHollywood Reporterは高い評価を与える。
「決死の状況」とはまた違った形で死が描かれることもある。それは、メンバーが心の奥底に抱えている、親しい者との死別の記憶だ。ダッド自身が父親との離別を消化できないでいるほか、シーズン1ではメンバーのなかからも死者が...。その悲しみから立ち直れない登場人物も多く、突如訪れた別れへの無念さが去らない、とIndieWireは彼らの心境を表現。努めて明るく振る舞うメンバーたちが過去とどう決着をつけるのかも見ものだ。
コミカルな喜劇の合間に生きる者への応援歌を感じる『ロッジ49』シーズン2は、米AMCで放送中。日本ではAmazon Prime Videoでシーズン1を配信中(海外ドラマNAVI)。
Photo:『ロッジ49』シーズン2
© Jackson Lee Davis/AMC