マーベル映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』で初代キャプテン・アメリカのスティーブ・ロジャースが去り、その後を彼の親友である二人、ファルコンことサム・ウィルソンと、バッキー・バーンズであるウィンター・ソルジャーが継ぐことになった。そんなファルコンとウィンター・ソルジャーの活躍を描くミニシリーズ『The Falcon and the Winter Soldier(原題)』はDisney+(ディズニープラス)で年内に配信開始予定だ。本日6月11日(木)よりDisney+がついに日本でサービス開始することを記念し、ファルコン/サム・ウィルソン役のアンソニー・マッキーのインタビューをお届けしよう。ファルコン役でスターになった今も故郷ニューオーリンズで暮らしながら、知名度を生かして様々なプロジェクトに取り組む彼が、キャプテン・アメリカの後継者となったことがもたらした「心揺さぶられる体験」や役への取り組み方、今後の野望について語ってくれた。
――あなたは私生活についてほとんど明かしませんね。
私生活については語らない主義なんだ。遠慮を知らない人にズカズカと踏み込まれたくないからね。幸運にも、僕は外見的なことではなくちゃんとした仕事を介して名声を得ることができた。僕の住まいはニューオーリンズなんだ。いい意味で飾らない人たちとシンプルな生活を送っているよ。子どもの頃から目立つのが苦手なんだ。人気や名声が欲しくてこの仕事をやっているわけじゃない。高校生の時に演劇学校に通ったのは演技が大好きだからだ。ジュリアード(演劇や音楽の名門校)に行ったのもそれが理由だよ。セレブになったり写真を撮られたりなんてのは別にどうでもいいんだ。僕は俳優でいたいだけで、台詞や創作活動が好きなだけだから、普段は人目につかないようにひっそりと暮らしているよ。
――とはいえ、マーベル作品に出演したわけですね。
マーベル作品に出演したことで知名度がかなり上がったのは事実だね。ただ、僕にとって重要なのは、それによって自分が望むポジションを得られたこと。マーベル作品に出演したおかげで、それまでなら無理だったはずの仕事ができるようになったからね。例えば、『ヘイト・ユー・ギブ』のような小規模な作品でも、ファルコン役で知られる僕が脇役で出演することでお金が集まって製作できるようになった。 人々に伝える価値がある作品の力になれて嬉しいよ。
――業界から求められる人物像と自分が演じたい役の折り合いをどのようにつけているのですか?
キャリア初期からその点は意識してきた。これまでに出演した映画のうち2本はまったく誇れないものだけどね。でも、それがどれかを言うつもりはないよ。とはいえ、役は慎重に選んできた。例えば『8 Mile』で演じたのはワルになりたがっているキャラクターだったけど、そういう役でもいつも監督や脚本家と話し合って、人間らしい描写を入れてもらうよう求めているんだ。素晴らしい人間でなくても、その人がなぜそんな言動をしているのかの理由はあるはずだからね。
――若手俳優が自分の役柄を膨らませようとするのは珍しいことですが、それをしても大丈夫だという自信があるのですか?
僕にとって初めての大きな仕事はカーティス・ハンソン監督の『8 Mile』だけど、最初に受け取った脚本では僕の台詞はたった6行だった。だから毎日カーティスと会って、一緒にキャラクターをどんどん膨らませていったんだ。それができたのは、僕が起用されたのは役に合っていて台詞回しもいいと評価されたためだと分かっていたからだよ。だから監督と面と向かって話し合うことに問題はない。もし相手がそれを良しとしなければ、僕はその監督に向いた人ではないわけで、それならそれで構わないよ。
――でも、そういう風に意見していると、役をもらえないリスクがあるのでは?
そんなのはしょっちゅうだよ。『ハート・ロッカー』で僕が演じたJ・Tは当初は黒人じゃなかった。でも(監督の)キャスリン(・ビグロー)に会って、脚本に対する僕の考えを伝え、僕がこのキャラクターにどんなものをもたらせるかを説明したんだ。幸運にも気に入ってもらえて、役を得たんだよ。
僕は、映画作りとはコラボレーションだと思っている。どんな人であっても一人でいい映画が作れるわけじゃないんだ。
――マーベル作品でそういうコラボレーションが実現する余地はありますか?
もちろんだよ。まさに『The Falcon and the Winter Soldier』でもそれをやっているんだ。僕らは脚本の様々なシーンを読み合わせし、どうすればうまくいくかについて論じ、書き直し、手を加えている。いつものようにね。マーベルは僕たちが役を掘り下げることに寛容だからね。僕にとって最初の出演作である『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の時からそうだったよ。(監督の)ルッソ兄弟はいつも僕の意見に耳を傾けてくれるんだ。
――マーベル作品に出るのは楽しいですか? そうした大作と小規模な作品に出演する上での違いとは?
最高に楽しいね。でも、こういう大作に出られることは特別なことだとちゃんと分かっている。小規模な作品では、撮影日数が限られているのでより長い時間働かなくてはならない。ジムに行くみたいなものだね。ワークアウトに励んで俳優としての"筋肉"を柔らかくし、身体を鍛える。そして大作に出た時には、小規模な作品で磨いた技術を生かすんだ。
――どうしてもお聞きしたいのですが、キャプテン・アメリカのシールド(盾)を持ったことはありますか? あれを持って歩くのはどんな気分なのでしょう?
正直、とても感情を揺さぶられるよ。この業界にもう20年いて、幸運なことに何度も驚くような経験をし、素晴らしい人たちと働いてきた。でも、黒人である僕がキャプテン・アメリカの象徴的なアイテムを引き継ぐというのは歴史的なことだ。エンターテイメント業界にとってだけでなく、僕自身の人生にとってもね。
本当に心揺さぶられる体験だったよ。なにせ、僕の祖父は小作人だったからね。僕が新しいキャプテン・アメリカになるまでには、多くの苦痛と成功、喜びがあったんだ。
――そんな誇りをお子さんたちと共有しているのですか?
そうだね。これが生涯功労賞を贈られたかのように素晴らしい点は、一人の父親として息子たちと別の話ができるからなんだ。かつて黒人の父親が自分の子どもたちに伝えていたのは、家の外で安全に過ごすための方法だった。警官の注意を引かないようにしたり、近所の特定の場所に行かないように教えることが「親子の会話」だったんだ。でも今は息子たちに、「お前たちも成長したらキャプテン・アメリカになれるかもしれないぞ」と話すことができる。最高の気分だよ。
――最近、あなたはDisney+の『The Falcon and the Winter Soldier』のほか、Netflixの『オルタード・カーボン』、Apple TVの『ザ・バンカー』と、動画配信サービスの作品に立て続けに出演していますね。新しいプラットフォームに参加する中で、やってみたいプロジェクトはありますか?
『The Falcon and the Winter Soldier』まではろくにドラマに出たことがなかった。いや、キャリア初期に『LAW & ORDER』シリーズ(『LAW & ORDER クリミナル・インテント』)に一話だけ出たね。「ニューヨークで俳優として認められたければ、(同地が舞台の)『LAW & ORDER』シリーズに出ないと駄目だ」ってみんなが言うからさ(笑) これまではそれが唯一のドラマ経験だったんだけど、あの撮影は僕のキャリアを通じて最もつらい10日間だった。長時間にわたるハードワークなんだ。ドラマシリーズに出ている人たちは本当に凄いと思うよ。
こうした動画配信サービスは、アーティストが従来とは違った形で自己表現できる手段になっている。この新しい波に僕も乗りたいと思っているよ。
――将来監督をしてみるつもりはありますか?
実はある本を見つけたんだ。ストーリーがユニークで面白くてすごく気に入っているよ。いつか監督をする準備ができたら、そのストーリーを伝えたい。今はその本の企画を進めているところなんだ。でも、「僕にチャンスをくれ」と誰かを説得するのは難しいものだね。もし僕がレオナルド・ディカプリオなら、僕の情熱がみんなの情熱になるんだろうけど(笑)
――環境問題には私も関心がありますよ。
それこそ僕が言っていることなんだ。でももし君がアンソニー・マッキーなら、君の情熱は基本的に君だけのものでしかないんだよ(笑)
Photo:
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 (C)2016 Marvel.
『ハート・ロッカー』 (C)2008 HURT LOCKER, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.