圧倒的予算を投じた高クオリティで定評のあるNetflixオリジナルシリーズに、新作ドラマが続々登場している。ハリウッドの華々しい復活劇を描く『ハリウッド』や、『ペーパー・ハウス』製作者が贈るどこか陽気なクライム・ミステリー『ホワイトライン』など、魅力の5作品をご紹介したい。
『ハリウッド』
第二次世界大戦後のアメリカで映画産業を育てるべく、若き俳優と監督たちがハリウッドに集結。惜しげもなく大金を注ぎ込む映画関係者たちとの出会いを経て、歴史に名を残すスターに昇り詰めるべく慌ただしい日々を送る。
主人公となるのは、イタリアの戦地から戻ったばかりの若き退役兵士・ジャックだ。映画で見たハリウッドでの華々しい生活に心酔し、なんとかエキストラの枠に食い込もうとスタジオを訪れるものの、あえなく門前払いに。金銭的に追い詰められるジャックだが、バーで接近してきた男に救われることに。男は地元でガソリンスタンドを営んでおり、なぜかジャックのハンサムな容姿を理由に彼を採用する。ただの給油所なのに夢のような額のチップが舞い込むという職場には、それなりの「労働条件」が。妻のいる身でありながら、艶かしい裏のサービスを求められて...。
夢見る若者と裕福なスポンサーが出会えば、そこに常識など必要ない。そんな破天荒なハリウッドの世界を華麗に描くヒューマン・ドラマだ。原作・制作はライアン・マーフィー。『Glee/グリー』『アメリカン・クライム・ストーリー』で見せた、ダレン・クリスとのゴールデン・コンビが復活を果たす。
『ジ・エディ』
パリの片隅でジャズクラブを経営するエディの信念と、彼の前に立ちはだかるほろ苦い現実をテーマにしたヒューマン・ドラマ。音楽を愛するエディは、最高のパフォーマーが集まればクラブが満席になると信じて止まない。しかし理想とは裏腹に、運営は危機的な状況。閉店後のバーに素性の知れぬ男たちが押し寄せ、手荒なやり口で金を返せと迫る。思うように事が運ばない現状から、信頼しあっていたはずの出資者との関係にもほころびが...。
経営面だけに留まらず、出演するバンドメンバーとの間にも緊張が広がる。さらには娘のジュリーがパリのインターナショナル・スクールに入学するが、学校生活にいまひとつ馴染めていない様子。懐かしいニューヨークに戻りたいというジュリーに対し、エディはあの街はもう捨てたのだと硬い姿勢を崩さない。
より良い暮らしを思い描きながらも、同じ場所で足踏みを続けてしまう登場人物たち。ままならない彼らの日々を、ときおり挿入されるジャズの数々で優しくしっとりと包み込む――。
『スイート・マグノリアス』
ラブ・ロマンスがお好きな方には、一人の女性の再出発を温かく描くこちらの作品がおすすめ。アメリカの田舎町・セレニティで育ったマディは、信じていた夫・ビルの浮気を知る。夫は愛人との新生活にしか目がなく、マディに詫びるどころか、財産分与の場で出来る限りの資産を奪おうとする強気の姿勢。夫の裏切りに加え、周囲から容赦なく浴びせられる野次馬的な視線もマディを痛めつける。
家を失い働き口も見つけなければならなくなったマディは、まさに人生のどん底。しかし彼女には幸いにも、その苦難をわかってくれる親友たちがいる。同じ地元で育ち法律に明るいヘレンと、街でささやかなレストランを営むダナだ。再出発の力になろうと、二人は使われなくなった豪邸をマディに内緒で購入。ダナとヘレンの得意分野を生かし、改装した豪邸にマディを迎えて、一緒にスパのビジネスを開こうと持ちかける。気持ちに余裕のないマディは手ひどく断ってしまうが、息子たちとの衝突を通じ、人間として一回り成長。決してショックから立ち直ったわけではないマディだが、果たしてスパ候補地の前で待つ二人の前に姿を現すのだろうか。
『ホワイトライン』
続いては雰囲気が変わり、クライム・ミステリーのご紹介。スペイン・バレンシアの東に浮かぶイビサ島で、著名なDJの男・アクセルが失踪する。行方不明のまま20年が経ったころ、島からかなり距離のある同国アルメリアの地で、彼のものと思しきミイラ状の遺体が発見される。
身元確認のため遺体と対面した妹のゾーイは、記憶のなかで兄がつけていたアクセサリを確認したことから、兄の遺体だと確信。彼女の脳裏に、アクセルとの懐かしい日々がフラッシュバックする。大昔の事件の再捜査はしないと言い切る警察に業を煮やしたゾーイは、失踪と死亡の謎を解明すべく現地の島を訪問。ところが、頼りにしていた兄の昔の友人は、DJで麻薬の売人というクセのある人物。さらに島では、裸の男女が集団で絡み合うといういかがわしいイベントが。兄のためにと意気込んでいたゾーイだが、島の狂気にあてられ、瞬く間に快楽的で退廃的な危ない世界へと引きずり込まれていく――。
Netflixオリジナルのクライム・シリーズといえば、造幣所への立てこもり作戦と犯行グループ内部の人間模様をスリリングに描く、スペイン発の『ペーパー・ハウス』が人気。本作ではその製作総指揮を務めるアレックス・ピナがクリエーターとして参加している。
『スペース・フォース 』
最後はスティーヴ・カレル主演のコメディ『スペース・フォース』。2019年に実際にアメリカで宇宙軍「スペース・フォース」が創設されたが、堂々と同名を冠した本シリーズは、それを痛快に皮肉る内容だ。
空軍大将に昇格したマークだが、その暁にトップに据えられた部隊は、まさかの宇宙軍。新設されたばかりのこの軍は、衛星を搭載したロケットの打ち上げを初のミッションとして控え、ピリピリとした空気にさらされている。政府高官たちもミッションに注目しており、視察団が打ち上げ場を訪問。着任したばかりのマークは実績を示そうと、万全の体制でのロケットの発射準備を命じる。
しかし発射当日、天候が万全でないことから、科学者たちは日程の延期を断固として進言。いくら待っても発射に至らないことから、視察団の間にあきらめムードが広がる。今日の発射はもはやないものと見た全員が、見限って施設を去る姿勢に。その刹那、科学者のとあるクセを見破ったマークの見事な采配が光る。
以上、Netflixが贈る新作ドラマ5本をお伝えした。終戦後のハリウッドから最新の宇宙軍まで、豊かなラインナップを楽しみたい。(海外ドラマNAVI)
Photo:『ハリウッド』©SAEED ADYANI/NETFLIX 『ジ・エディ』©Lou Faulon 『スイート・マグノリアス』©ELIZA MORSE/NETFLIX 『ホワイトライン』NETFLIX 『スペース・フォース 』©AARON EPSTEIN/NETFLIX