【お先見】『フリンジ』『X-ファイル』を超越する本格派SFヒューマンドラマ『Debris』宇宙から落ちてきた謎の物体は人類を救うのか?

SFドラマというと、好きな人、苦手な人とが別れるジャンルかもしれない。完全な前者である筆者は、本作がJ・H・ワイマンが手がけている作品だと知り、これは絶対に見なければならないと思った。ワイマンは、世界中で社会現象を引き起こした『LOST』などのクリエイター、J・J・エイブラムスとともに、フリンジサイエンスを題材にした『FRINGE/フリンジ』や、人間とアンドロイドの警官が活躍するSFクライム・アクション『ALMOST HUMAN/オールモスト・ヒューマン』などを製作してきた逸材だ。そんな彼が放つ米NBCの新作ドラマ『Debris』は、SF好きはもちろんのこと、普段あまりそういうジャンルは好まないという人にも見て欲しい作品だ。

それでは、この新作の簡単なあらすじと見どころを紹介しよう。

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国が違う、性別が違う、性格も違う。そんな二人が人類に迫る謎の破片を追う!

本作は、宇宙から謎の物体の残骸、通称Debrisが地上に降ってきたところから始まる。各地に散らばったその破片が何なのか、どこから来たのか、何を引き起こすものなのか誰も知る由はなかった。そこでイギリスMI6捜査官、フィノーラ・ジョーンズ(リアン・スティール『NCIS:ニューオーリンズ』)とアメリカCIA捜査官ブライアン・ベネヴェンティ(ジョナサン・タッカー『スリーパーズ』)がパートナーとなり、この破片を調査することになる。フィノーラは温厚で勘が鋭く細部までこだわるタイプだが、ブライアンは自信家で警戒心が強い。国籍も性格も異なる彼らは、残骸周辺で起こる現象を追っていくのだった。

だが捜査の中で、その破片を収拾していると思われるロシアや中国と思われる正体不明の組織の存在も浮き彫りになる。彼らは何のために破片を集めているのか。この物体の力を知っているのか。また、パートナーであるフィノーラとブライアンだが、実は二人にはお互いに言えない国を背負ったある事情もあり....というストーリー。

これぞ正統派SF超大作!特殊効果に度肝を抜かれる!

SFドラマといえば、やはり特殊効果なしでは語れないだろう。『Debris』はSFをずっと手がけてきたクリエイターのいわば十八番の集大成であり、これこそが正統派SFドラマだといわんばかりの映像が見られる。時には、ぞっとするようなシーンもあり、SFでありつつもホラーやスリラーの要素も楽しめるだろう。とにかく彼の生み出す映像には妥協が見られず、「ここちょっと作り物っぽいな」というシーンが一切ない。高度なテクノロジーを駆使した映像は、超大作映画顔負けレベルで、毎週このような作品が見られるのは、SFファンにはたまらないことだろう。

捜査官パートナーは敵か味方か?二カ国を背負う彼らの運命は?

これまでにも『FRINGE/フリンジ』『X-ファイル』など、男女の性格が異なる捜査官がペアになるドラマはあった。正反対の二人が歩み寄りながら協力関係を築いていく姿は、非常に面白く感情移入できる。だが今回はその設定に加えて、国籍が違う。アメリカとイギリスはどちらも英語圏で意思の疎通もでき、一見それほど違いはないように思える。だが、国家の秘密組織に所属している捜査官となると話は別だ。お互いそれぞれ国を背負ったタスクや事情がある立場で、全てをさらけ出すわけにもいかないのだ。宇宙から降ってきた謎の物体には全世界を変えてしまいそうな特殊な力がある。そうなると、ロシアや中国だけでなくアメリカ、イギリスなどそれぞれが他国には譲るまいと躍起になるのだ。そんな裏事情がありながらもそれを見せず協力し調査していこうとする二人の捜査官という、異質な主人公たちの関係性にも惹きつけられる。

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こんな時代だからこそ、人と人との繋がりを感じたい

J・H・ワイマンが関わった『FRINGE/フリンジ』も『ALMOST HUMAN/オールモスト・ヒューマン』も、SFではあるものの実は人と人との繋がりを描いた作品だ。特に『FRINGE/フリンジ』は、家族の繋がり、親子の愛を最初から最後までテーマにしており、涙した人も多いだろう。そんな彼が製作する『Debris』も、家族や人との絆が描かれている。設定はSFといえども、家族や親しい人に何かあって初めて気がつく思いや後悔が毎回語られ、視聴者の胸を打つ。パンデミックで家族や友人とも会えない日々が続いた今だからこそ、離れていてもできること、そして会えた時には何をするべきなのか、何を伝えるべきなのか。そんなことを考えさせられるヒューマンドラマでもある。SFドラマに興味がない人にも、ぜひ見てもらいたいポイントだ。

破片は結局何なのか?破片であることに意味はあるのか?

UFOやエイリアンという設定は昔からSFの定番だった。未知の怪物やゾンビなどもある種そういうお決まりカテゴリーに入るだろう。だが今回の未知の物体は、残骸、破片だ。なぜ、何かの残骸を謎の物体という設定にしたのか、そこには意図があるのか非常に興味深い。魚のうろこのようなデザインも不思議だが、毎回この破片は、各地で異なる現象を起こしている。それぞれの現象には果たして意味や接点があるのか。そして各地の破片がもし1箇所に全て集まったらどうなるのか。最大のミステリーであるこの物体の正体を知らずにはいられないだろう。

ヒット作を生み出してきたクリエイターが製作する新作ドラマ『Debris』。様々な魅力が積み込まれたエンターテイメント性満載の本作で、今一度、人との繋がりを見届け温かい気持ちで満たされたいものだ。日本ではU-NEXTにて、今夏の配信を予定している。

(文/Erina Austen)

Photo:InstagramアカウントDEBRIS ON NBC(@debrisnbc)より