殺人事件を扱いながらも、どこか心地よく、安心して楽しめる──。近年、世界で人気を集めているのが“コージーミステリー”だ。その魅力について、英犯罪捜査ドラマ『ミステリー in パラダイス』の生みの親であるロバート・ソログッドが語っている。
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日本でも人気のコージーミステリー
『ミステリー in パラダイス』をはじめ、『グランチェスター 牧師と刑事の殺人捜査』や『パズル作家ルートヴィヒ 謎は解くためにある』など、コージーミステリーと呼ばれるジャンルはなぜ、これほどまでに人々を惹きつけるのだろうか。
『ミステリー in パラダイス』のクリエイターであり、小説「マーロウ殺人クラブ」シリーズの作者でもあるロバート・ソログッドは英Radio Timesのインタビューで、その理由はトーンにあると説明している。
コージーミステリーでは、殺人事件こそ起きるものの残虐な描写は極力抑えられ、遺体が大きく映し出されることも少ない。事件そのものは真剣に扱われる一方で、登場人物には個性的な実業家や落ち目のロックスターなど、どこか誇張されたキャラクターが多く登場する。その結果、作品全体に軽やかで遊び心のある雰囲気が生まれ、重苦しさよりも“謎解きの楽しさ”が際立つ。
ソログッドは、このジャンルが求められている理由を次のように説明。「現実が混乱に満ちた時代だからこそ、美しく閉ざされた世界で陰謀や裏切り、秘密を疑似体験できるのは魅力的です。そこでは裕福な人々が嘘をつき、互いを欺きますが、最終的には事件が解決して秩序が取り戻されます」と答えている。
こうしたコージーミステリーを語るうえで欠かせない存在が、“ミステリーの女王”ことアガサ・クリスティだ。ソログッドも幼い頃からクリスティ作品を何度も読み返し、その巧妙なトリックやユーモアに夢中になったという。とりわけ名探偵ポワロは「非常にコミカルなキャラクター」であり、その絶妙なバランスに大きな影響を受けたと明かしている。
現在でもソログッドは、クリスティが築いたミステリーの基本原則を大切にしている。第一に、「読者や視聴者に対してフェアであること」。探偵が真相を解き明かす瞬間には、視聴者も一時停止して、自分なりに犯人を推理できるだけの手掛かりが提示されていなければならないという。第二に、「犯人は必ず捕まること」。事件は最後に解決し、正義が果たされることで、観る者に安心感と満足感を与えることが重要だと考えている。
さらにソログッドは冗談交じりに、「そして第三に、必ずトカゲのハリーを登場させること」と笑いながらコメント。複雑な謎を組み立てるために苦労しても、人気者のトカゲが登場すると、いつも観客の視線をさらってしまうという。
もっとも、そんなソログッドにも「かなわなかった作品」がある。それがクリスティの代表作「アクロイド殺し」だ。「私が最初にあのアイデアを思いつきたかったですね。クリスティの最高傑作ではないかもしれないし、読者に対して完全にフェアな作品でもありません。でも、あの発想を思いついた瞬間を想像すると、本当にうらやましくなります」と振り返っている。
緻密な謎解きと心地よい安心感を両立させるコージーミステリーは、混沌とした時代だからこそ求められるエンターテインメントなのかもしれない。これからも多くの視聴者を魅了し続けそうだ。
『ミステリー in パラダイス』は、U-NEXTとHulu、Amazon Prime Video(プライムビデオ)で配信中。







