
同名の大人気サバイバル・アクションゲームのドラマ版『THE LAST OF US』。シーズン1では、そのクオリティの高さで2024年のエミー賞8冠に輝いた大注目ドラマだ。2020年に発売したゲーム版の続編「The Last of Us Part II」の物語を新たにドラマ化したシーズン2の配信にあわせて、本作でドラマ版の脚本・製作総指揮を務めたクレイグ・メイジン(『チェルノブイリ ーCHERNOBYL―』)にインタビューを行った。
『THE LAST OF US』製作総指揮クレイグ・メイジン
『THE LAST OF US』の舞台は、世界中で謎の菌類が蔓延し、文明が崩壊してから20年が経った近未来のアメリカ。最愛の娘を失ったジョエルが、少女エリーを隔離地域から連れ出す任務を課される。赤の他人だった二人は反発し合いながらも少しずつ絆を育みつつ、目的地までサバイバルの道を進んでいく。
――シーズン2はどのような方向の展開になりますか。
どういう方向というのは考えていません。ジョエルとエリーという素晴らしいキャラクターの関係性を考えています。エリーが14歳から19歳という人間として一番変化を遂げる上で、二人の関係がどうなっていくのかというのを描いています。ですので、作品の方向性というよりも、ただこの二人の人間の物語になっています。もちろんシーズン1からの視聴者の期待に応えられるような質も目指して制作しました。
――シーズン2は、シーズン1の最初に謎の病原菌で世界が混乱に陥ってからちょうど5年後の設定ですが、実社会でも今年はパンデミックからちょうど5年になりますね。無意識下で、今の我々の状況がこのシーズンに反映されている部分があると思いますか。
面白い質問ですね。本当に偶然5年後になっていますね。ちょうどパンデミックの時にシーズン1を制作していたので、色々なメディアがウイルスのことを報道しているのを見ながら撮影をしていました。人間というのは面白いもので、何か大変なことがあっても徐々に対応し、そしていつか忘れていきます。シーズン2の第一話ではそれがよくわかると思うのですが、ジャクソンに住み始めたジョエルとエリーは、世の中が大変なことになっていたことを忘れ始め、ここでの生活に慣れ、年末に住民たちでパーティも開催するくらいになります。感染者を排除することも簡単すぎるくらいになり、脅威でもなんでもないようになります。ですがそれは人間の思い上がりなんです。そしていつの時代もその思い上がり、傲慢さが、悲劇を生み出すのです。
――シーズン2で、ジャクソンの街は難民を受け入れるかどうかという問題に直面するようですが、これは現実社会の政治的な問題を仄めかしているのでしょうか。
今の政治を仄めかしているわけではありません。ただ、人間というのは影響を受けやすいものなので、世の中のことに影響されている部分を反映させようとは思っています。影響というのは、素晴らしい方向に作用するものでもあるのですが、反対に暴力、外国人排除、差別、移民排他主義などを生み出すものでもあります。この作品ではそういったものが描かれているので、非常に興味深いとは思います。
また、キャラクターたちも無知ではありませんし、それぞれの視点も全て一理あるのです。普通は誰もが困っている人を助けたいと思うでしょうし、そうするべきです。アメリカという国は、(移民の国なので)“これがアメリカだ”というものがないのが、アメリカなのです。ですが昔から、“アメリカには来させるな”という風潮はあります。今に始まったことではありません。ですがその感情は人間の本質なのです。何かを奪われたり、傷つけられたりするとやり返そうとするのも人間なのです。そしてそれがいつの間にか大きくなりその負のサイクルが永遠に終わらなくなるのです。そこで、この作品を見ていくにつれ、疑問が湧いてくるはずです。“いつ終わるんだ?” “どう終わるんだ?”と。その結末は、視聴者には政治的なものに見えるかもしれません。ですが私個人としては、あくまでも「その人間個人の物語」として見ています。
――シーズン1第3話「長い間」は、本作だけでなくドラマ史上最も美しく素晴らしいエピソードの一つだと言えます。(このエピソードでエミー賞を受賞したニック・オファーマン演じる)ビルと(マーレイ・バーレット演じる)フランクの物語をゲーム版より深く描こうと思ったきっかけはなんですか。また、シーズン2でも似たようなエピソードはありますか。ネタバレでお答えできなければ、ノーコメントでも結構です。
(笑)話せないといえば、「きっとあるに違いない!」と周りは言うでしょうし、「ない」と言えば、「嘘だ!」と言われるんです。でも、話せますよ(笑)
ビルとフランクの物語は、シーズン1の第2話までを書いた後に、やりたいと思ったのです。この2話があまりに暗い話だったので、希望を見出せるような物語を描きたかったのです。(ゲーム版脚本家の)ニールにそのことを伝えました。ですが、あの話がこれほどまでに反響があるとは思っていませんでした。とても光栄に思っています。シーズン2で、「またあれをやろう!」とはなりませんでしたが、似たようなことはいくつかあります。特にある二人のキャラクターに注目した話があります。そのうちの一人のキャラクターのちょっとした話が、実はこの作品全体を示唆しているようなものになります。描き方は異なりますが、意図していることはシーズン1のものを似ているかもしれません。
――ゲーム版をドラマ版にするにあたっての苦労、チャレンジはどのようなものでしたか。
チャレンジは大好きです! 私にとってドラマ版の制作は、苦労ではなく“チャンス”でしたね。どちらかというとゲーム版の脚本を書いたニールとハリーの方が大変だったと思います。ゲームはプレイヤーが自分で物語をどんどん進めていきますが、ドラマでは、過去に戻ったり視点を変えたり色々と時系列など順番も入れ替えたりすることができます。ですからシーズン2ではそれを多いに活用しました。そこがドラマの面白いところなんです。ゲームではどんどん進んで行ってあまり見られなかった部分も、ドラマでは見られると思います。
――視聴者に本作を通じて、どのような印象やモラルを感じてもらいたいですか。
従来の“慰め”と言うようなものを挑発するような作品であるようにしました。ヒーローとヴィラン、善と悪が存在する世界で、両者が対峙するだけではなく、本作ではヒーローと思われる人物も、キャラクター全員との人間関係を築きます。ヴィランともです。自分が守りたいと思う人への愛情と、ヴィランに対する感情、それにどう向き合うか、どう解決するか、それを考えるうちに自分の感情の変化をどう消化していくのか。そういう思いが複雑に絡み合っていくのです。ゲームもドラマもこの作品の根底にあるのはそのような人間関係や感情です。非常に難しいテーマです。
――この物語は現代社会の通ずるものがあると思いますが。
ないと言いたいところですが、残念ながら通ずる部分が多いです。この物語は、人間と自然界との奮闘、人間同士の争い、親であること、子どもであることの苦悩、愛する人を失うことの痛み、こういったもの全てが描かれています。今の世の中では、何が正しく、何が間違いなのか、どう人助けができるのか、自分と他者の優先順位、そういうことを悩みながら皆過ごしています。ドラマ製作を通じて社会を変えられるとは全く思っていません。そういうタイプの脚本家もいますが、個人的にはそれは妄想に過ぎないと思っています(笑)ですが、視聴者に少しでも共感してもらえたり、希望を見出してもらえたらといいなと思ってはいます。国連からメダル授与なんてことはないでしょうが、何かいい影響をもたらすことができれば嬉しいです。
『THE LAST OF US』シーズン1~2配信情報

・『THE LAST OF US』シーズン1
U-NEXTにて全話配信中
・『THE LAST OF US』シーズン2(全7話)
【字幕版】U-NEXTにて4月14日(月)第1話配信開始 以降毎週月曜週次配信
【日本語吹替版】2025年6月配信予定
【視聴ページ】
・『THE LAST OF US』シーズン1
・『THE LAST OF US』シーズン2
(取材/翻訳:Erina Austen)
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Photo:『THE LAST OF US シーズン2』U-NEXTにて独占配信中 © 2025 WarnerMedia Direct Asia Pacific, LLC. All rights reserved. Max and related elements are property of Home Box Office, Inc.