
映画『ベスト・キッド』シリーズの約30年後を描くNetflixの人気ドラマ『コブラ会』でアマンダ・ラルーソ役を演じた俳優コートニー・ヘンゲラーが、約20年にわたる俳優キャリアからの引退を表明した。
成功の裏にあった長年の葛藤
コートニーは先月、自身のSubstackに投稿したエッセイで、「演技の世界から身を引く決意をした」と明かし、「私はもう“機械の歯車”でいたくない」と心境を綴った。
コートニーは、これまで『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』『ママと恋に落ちるまで』『フラーハウス』『ジェーン・ザ・ヴァージン』『BONES』など、数多くのテレビドラマにゲスト出演。『コブラ会』では6シーズンにわたり主要キャストとして活躍し、キャリアの中でも大きな成功を収めていた。
しかし、成功の裏にはリアルな葛藤があったという。
「私がこれまで経験してきたのは、演技の仕事というより“生き残りをかけた日々”でした。仕事を得るための競争、いつ来るとも知れないチャンスを待ち続ける日々。その合間に、たまにセリフがもらえる程度の仕事があって。例えば『Dr. HOUSE -ドクター・ハウスー』での一言、“ごめんなさい”。それが私の出演シーンのすべてでした」
また、何度も「再登場するはず」と言われたゲスト出演がそのまま終わってしまうことも多く、不安定な生活の連続だったと明かす。「わたしたちは、わずかな希望にすがって日々をつないできました。期待ばかりが膨らみ、実際の生活は空回りの連続。それでも“もしかしたら明日こそ大きなチャンスが来るかもしれない”と自分に言い聞かせていました」
心は疲れ果てていた
『コブラ会』は、そんな彼女にとってようやく訪れた「手応えのある仕事」だった。シリーズは大ヒットし、広告にも顔が出るようになった。監督を担当した名優ジョージ・クルーニーの現場に立つという貴重な経験も得た。
「それはたしかに、私が20年以上憧れ続けてきた場所でした。“これぞ成功”と誰もが言うでしょう。でも、心の中にはずっと“これでいいの?”という問いが残っていたんです」
コートニーは、「もうやめたい」と心の声が訴え続けていたことにも言及する。演技そのものが嫌になったわけではない。演技にたどり着くまでの競争や仕組みに、疲れ果てていたのだという。「かつては、これが“当たり前”で、“自分のやりたいことのために必要な苦労”だと思っていた。でもいつの間にか、その前提自体が息苦しいものになっていたんです」
彼女は最後に、こんな問いを投げかけている。「私たちは、本当に自分の意思でこの道を歩いているのか? “こうするしかない”と刷り込まれ、自分の手で自分の力を手放してきたのではないか? もっと違う選択肢があったのではないか?」
俳優業からの引退は一つの終わりであると同時に、彼女自身の意思で選んだ新しい方向への転機でもある。今後、彼女がどのような歩みを見せていくのかに注目したい。(海外ドラマNAVI)
Photo:© 2024 Netflix, Inc.