『ボストン・パブリック』ニッキー・カット死去。ロバート・ロドリゲス監督らが追悼

学園ドラマ『ボストン・パブリック』で地質学の教師ハリー・セネトを演じたニッキー・カットが、54歳で他界した。当初訃報を伝えた弁護士は死因を明らかにしていなかったが、その後、自殺によるものであることが明らかに。今月8日(火)、家賃を徴収するためにロサンゼルスのバーバンクにある彼のアパートを訪れた家主が、ニッキーが首を吊って死んでいるのを発見。少なくとも死後数日は経っていたと見られている。米Varietyなど複数のメディアが伝えた。

ソダーバーグやタランティーノとも組む

ニッキーの妹は次のような声明を発表した。「兄はひそかに苦しんでいた鬱との勇敢な闘いの末に命を絶った。こういう苦しみはどの家族にも味わってほしくないけど、実際には多くの家族が経験している。メンタルの病は実際にあり、非常に強力にもかかわらず、多くの場合、目には見えない。この話をみんなに伝えることで、メンタルヘルスに苦しんでいる人たちが周りに助けを求めるきっかけになってほしい」などと綴っている。

デイビッド・E・ケリー(『アリー・myラブ』『ビッグ・リトル・ライズ』)がクリエイターを務め、米FOXで2000年から4シーズン続いた学園ドラマ『ボストン・パブリック』にシーズン3途中までレギュラー出演していたニッキー。降板理由は、本人が映画界でキャリアアップするためだったという。

1970年に米サウスダコタ州に生まれたニッキーは、もともと子役出身で小学生の時に『ファンタジー・アイランド』『白バイ野郎ジョン&パンチ』といった人気ドラマに出演。大人になってからは、リチャード・リンクレイター(『バッド・チューニング』『ウェイキング・ライフ』『サバービア』『スクール・オブ・ロック』)、ジョエル・シューマカー(『評決のとき』『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』)、スティーヴン・ソダーバーグ(『イギリスから来た男』『フル・フロンタル』)、ウィリアム・フリードキン(『英雄の条件』)、クリストファー・ノーラン(『インソムニア』『ダークナイト』)、ロバート・ロドリゲス(『プラネット・テラー in グラインドハウス』『シン・シティ』)、クエンティン・タランティーノ(『デス・プルーフ in グラインドハウス』『シン・シティ』)、ニール・ジョーダン(『ブレイブ ワン』)、オリヴァー・ストーン(『ワールド・トレード・センター』)といった大物監督の映画に出演していた。

ドラマ界では、前述した作品のほかには、『フレンズ』『堕ちた弁護士 ~ニック・フォーリン~』『名探偵モンク』『LAW & ORDER』などにゲストとして出演。2018年にコメディドラマ『カジュアル』に参加して以降はエンタメ業界から遠ざかり、老いた母親が2023年に亡くなるまで面倒を見ていたという。

彼の訃報を受けて、一緒に仕事をした監督たちが追悼メッセージを発表。30年以上前からニッキーを知っていたリンクレイターは、「ニッキーは映画史を代表する性格俳優たちに強い畏敬の念を抱いていて、彼自身もその傾向があった。『バッド・チューニング』のオーディションを行った時、多くの俳優が当然ながらこの作品において自分が興味を持った役としてメインキャラクターの名前を挙げていく中、ニッキーはクリント役が気に入ったと言うから、“端役だけどいいの?”と聞くと“いいよ”と彼は答えた。そして彼はクリントのユニークな面を引き出した。ひねくれたユーモアセンス、予想不可能な言動といった秘めた内面をね。きっと彼はこれまで演じてきた役のすべてを脚本に書かれていた以上の存在にしてきたはずで、だからこそ忘れがたい存在なんだ。それは彼自身の人生についても言えること。彼の持つ輝きが恋しいよ」と、長年見てきたニッキーについて語った。

ロドリゲス監督は、何度も仕事をしただけあり、ニッキーのプロフェッショナルぶりを絶賛。「ニッキー・カットはいつだってあらゆる面で頼りになった。彼は自分が演じる役の衣装や小道具に関してしっかり準備した上で現場入りしていたよ。彼自身が独創性と創造性にあふれているおかげで、演じるキャラクターは生き生きとしていて観客を驚かせた。彼が言う台詞は、もともと脚本に書かれていたものでも、まるでアドリブのように聞こえるくらい臨場感があった。実際にアドリブを言った場合も素晴らしかったよ。身体を使った笑いや間の取り方も別次元の出来だった。彼との仕事は楽しかった。真のアーティストであり友人だ。彼が亡くなってとても悲しい。ただ、彼を知れたこと、一緒に仕事ができたこと、彼にしかできない“魔法”が生まれる様子を目の当たりにできたことに感謝している」

そのほかにも、監督のクリストファー・マッカリー(『誘拐犯』)やデヴィッド・ゴードン・グリーン(『スノー・エンジェル』)、俳優のアダム・ゴールドバーグ(『バッド・チューニング』『ウェイキング・ライフ』)などがその死と才能を惜しんでいる。ニッキーの冥福を祈りたい。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Variety米Deadline①米Entertainment WeeklyDeadline②Deadline③