『ジョーカー2』山田裕貴「大好きだからこそプレッシャーが大きかった」

『ジョーカー』の続編にして完結編となる『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』で、ハービー・デントの日本版吹替キャストを務める山田裕貴さんにインタビュー! アメコミもといジョーカーファンならではの見どころや、洋画吹替のやりがいについて語ってもらった。

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』山田裕貴さんインタビュー

――本作への参加が決まった際の率直な感想をお聞かせください。どのようなシチュエーションだったのでしょうか?

確か車の中で聞いて、どういった役柄なのかまだ決まっていない状態だったのですが「え、すご」と率直に思いました。(アメコミ作品は)元々好きではあったのですが、好きなのと実際に作品に関わらせてもらうのってまた違うじゃないですか。好きという気持ちだけではいられないので、少し遠ざかりたい気持ちもあって。なので、うれしい気持ちはありつつも、プレッシャーが大きかったです。僕はバットマンよりジョーカー派で、アメコミの中でも、そしてDCの中でも一番好きなんです。大好きだからこそ「やったー! イエーイ」とはならなかったですね。

――これまでもアニメや特撮シリーズなどで吹替の経験があるかと思いますが、洋画は初挑戦かと思います。アフレコ現場ではどういったことを意識しながら望んでいますか?

ハービー・デント役のリー・ローティーさんへのリスペクトありきですね。声のトーンや喋る高さ、雰囲気を寄せたいんですよ。でも、ニュアンスを近づけるとボリュームが足りないということもあって。これは僕の印象なのですが、日本語吹替版って、原語版よりも少し声が大きい気がしていて。なので、どう合わせればより自然に聞こえるのか悩みました。

――ちなみに、ご自身が見るときは字幕と吹替どっち派ですか?

昔は吹替版を多く見ていましたが、今は字幕派です。アニメが大好きなので、声優さんも大好きな人ばかりです! 声を聞けば、〇〇さんだって名前がわかるくらい。それこそ、ジョーカーの声を担当している平田さんは、僕が出演した『海賊戦隊ゴーカイジャー』のマッハルコンですし、「ONE PIECE」でも声を担当されていますし…。実は13年前、『海賊戦隊ゴーカイジャー』きっかけでお会いしたときにサインをもらったこともあるんです。そのあと、僕が出演していた舞台の劇場近くで平田さんも公演をされていて偶然お会いしたり、『ONE PIECE FILM RED』で再会したり…。

吹替声優をやるにあたり、参考として声優さんの収録風景を見たりもしました。とはいえ、僕は本職の皆さんの真似事みたいなことしかできないじゃないですか。僕は俳優としてやらせてもらっているので、リアルな方向性でやったほうがいいのかなとも考えました。僕としては、原語の音になるべく近い、リアルな声の出し方を意識しましたが、現場で監督はじめスタッフさんから色々なご意見をいただいたので、吹替というのはやはり難しいですね。

――近年では『BLUE GIANT』や『Ultraman: Rising』などでも吹替されていますが、どれも高い評価を得ていますよね。個人的にとてもお上手だなと感じますが、何かコツなどありますか?

『海賊戦隊ゴーカイジャー』で一年間アフレコを学ぶことが出来たのは大きかったですね。うまいかどうかは自分ではわからなかったのですが、アフレコは好きでした。

あとは、自分が演じるお芝居のときも音をかなり意識しています。嘘っぽい演技は音が違うと思うんです。だから、自分が実際に怒っているときや笑っているときの声をインプットしておいて、それをお芝居のときに引き出す。自分だけではなく、仲良くさせていただいている人たちのちょっとした違和感を読み取ることも得意だと思います。

――声を担当したハービー・デントのキャラクターについてお聞きします。普段から役柄の心理を研究されるそうですが、本作はいかがでしたか?

ハービー・デントって、ずっと淡々としていて意図を見せないようにしていると思うんです。勝たせたいのか、思いっきり有罪として認めさせたいのか…。台詞では言っているけれどそれが本心とは限らない。何を考えているか、正直わかんないんです。そもそも、この作品自体が全部嘘かもしれないというところもありますよね。「何にも見えてこない方が面白いな。」なんて思いながら声を入れていました。

――ジョーカー派とのことですが、本作のジョーカーについて、どう感じましたか?

先程もお話しましたが、本作自体、本当じゃない可能性もありますし、最後の結末だって妄想だったかもしれない。本作の中で、アーサーが「ジョーカーはいない」というじゃないですか。それを認められる強さがあるのならば、全部ジョーカーのせいにすればいいのにと。人間としての何かを守ろうとしているアーサーの気持ちが、僕にはまだ読み取れなくて。何を思ってその考えに至ったんだろうみたいな。それ自体も気まぐれかもしれないですし。

――ジョーカー役のホアキン・フェニックスの演技について、俳優の視点からどう思いますか?

コアな部分をいってもいいですか? 彼って、横顔のカットだけでも何かを感じさせるものがあるじゃないですか。あれって多分、心の底から役に入っていないと出てこないというか。でもだからといって、やりすぎてないんです。

発作の笑いもすごいですよね。相当な観察力がないと難しいと思います。あれをやろうと思っても、どうしてもやりすぎてしまってお芝居に見えてしまいそうですが、彼の場合は本物に見えますよね。本当に絶妙にリアルな位置に落とし込んでいるのがすごくて。考えて演技をしているのではなくて、ただ生きているんだと思います。入り込むというよりも、もうジョーカーとして生きてる域に到達しているんだなと。

あとは台本もいいですよね。日本でも漫画の実写作品はありますが、国が違うと作り方も異なるなと思いました。

――最初にもDCの大ファンだとおっしゃっていましたが、特に好きな作品はありますか? また、楽しみにしている新作があれば教えてください。

4時間以上ある『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』は見ました。あと『ダークナイト』シリーズはもちろん全部好きですし、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年)も見ています。『ジョーカー』に触発されたのか、よりダークな感じでしたよね。SNSでDCの公式アカウントをフォローしているので、『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』やるんだ! という情報も得ています。

――最後に、本作の魅力について教えてください。

前作に引き続き、本作でも「誰も見てないじゃないか、僕のことを」という台詞がありましたが、そこが肝なのではないでしょうか。現実でも、他人の一面だけを見て「あの人ってこうだよね」と判断してしまう世の中なので、僕の中でこのセリフはすごく響いています。

ジョーカーのことをもう誰も語ってやるなと思いますし、「あいつはこうなんだよ」って決めつけるなとも思います。今見ているものが本当じゃないのかもという、疑う心を持って見るとより面白いと思います。

――ありがとうございました!

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は10月11日(金)より全国劇場公開。(海外ドラマNAVI)

Photo:配給表記: ワーナー・ブラザース映画
クレジット:(c) & TM DC (c) 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories