本日12/29から、スピンオフ『ベルリン』が配信開始されることも話題のヒット作『ペーパー・ハウス』。そのテーマソング「Bella Ciao(さらば恋人よ)」には深い意味が込められていることをご存じだっただろうか?
革命や反抗のシンボル
イタリア人なら誰でも知っていると言っても過言ではない名曲「Bella Ciao」。『ペーパー・ハウス』で使用されたことで再び注目を浴びることになったが、製作陣はキャッチーだからという理由だけでこの曲を選んだわけではない。
革命や反抗の叫びであり、シンボルであるこの曲を生み出したのはイタリアの反乱者たち。起源は19世紀に遡り、元の歌詞では、過酷な労働条件を非難する田舎の稲刈り労働者による嘆きが叫ばれていたそう。その後「Bella Ciao」は抵抗の歌として根付き、時代を超えて歌い継がれることに。1940年代、ムッソリーニ独裁政権下のファシストによって率いられていたイタリアにおいて、パルチザンと呼ばれるレジスタンスグループが歌詞を現在のものに改良。ムッソリーニのファシストとナチスドイツの占領に対する党派の戦いについて歌う曲として定着された。
目が覚めると自分の国が侵略されていることに気づいたパルチザンが抵抗して死ぬ覚悟があり、もし死んだ場合には仲間たちに別れを告げ、山の中の美しい花の陰に埋めてくれるように頼む歌詞が抵抗運動の時に人々を団結させたように、『ペーパー・ハウス』でも赤いジャンプスーツを着た強盗達を鼓舞し、ひとつにさせる。
作中でファシストに抵抗した祖父からこの曲を教わった教授によってもたらされるこの曲。強盗たちはそれぞれ体制から大切なものを奪われた過去をもち、なぜ反逆者となったのかが描かれるが、こうした物語と相まって作品を象徴する一曲に。父が投獄されたために親なしで育ったデンバーや薬物に関与しているからと3歳の息子を取り上げられたナイロビ、恋人を射殺され、交渉のために母を使われたトーキョーなど。怒れる強盗たちを奮い立たせる。
彼らがただの強盗ではなく、不正と闘うロビン・フッド的革命児であることを思い起こさせる一方、自由には代償が伴うことも思い出させるこの曲。時に「Bella Ciao」は自由のために戦い命を落とした強盗達に捧げて歌われたが、登場人物だけでなく視聴者の心も響かせた。
このように、様々な場面で登場した「Bella Ciao」だが、勝利を祝う大合唱のシーンで覚えているファンも多いはず。不可能と言われた作戦を成功させた喜びを爆発させ、グラスを投げ、群衆にお金を投げ込み、ただ勝利の瞬間を味わうシーンでは何も保証されていないからこそ今この瞬間を楽しむべきというメッセージも加わり、また特別なものになっている。
革命について大事なことを教えてくれる「Bella Ciao」。先の見えない友人たちとの感動的な別れの歌となり、生き延びられなかった人たちに対する悲しい歌となり、そして生きていくことへの幸せな歌となるこの曲は、作中で効果的に使われたことで瞬く間にブレイク。これまで独立運動などで使われることが多かったが、ストリーミングで世界中のファンに聞かれクラブでも演奏されるように。ヨーロッパのサッカーチームで耳にすることもあれば、音楽コンペティション番組でも流れるようになるなど、新たな形で愛されるようになった。
『ペーパー・ハウス』のスピンオフ『ベルリン』は、本日よりNetflixにて配信。(海外ドラマNAVI)
Photo:©Netflix