2021年に米CBSにて放送が開始され、爆発的なスタートダッシュを決めた海外ドラマ『イコライザー』がついに日本上陸を果たす。『イコライザー』と聞くと、2014年に公開されたアントワーン・フークア監督、デンゼル・ワシントンによる映画版を思い浮かべるファンも多いことだろう。しかし、ドラマ版『イコライザー』は、映画版とはかなり異なる作風が目を引く。映画版を観ていなくても楽しめるクライムアクションドラマ『イコライザー』の魅力に迫る。
『イコライザー』とは?
そもそも『イコライザー』は、1985年から1989年に放映されたTVドラマ『ザ・シークレット・ハンター』を原作としている。同作は元CIA諜報員であるロバート・マッコールが、元CIAならではの力を駆使し、助けを求める人々を救っていく物語が展開された。
その『ザ・シークレット・ハンター』をリメイクしたのが、2014年公開の映画『イコライザー』だ。映画版では、元CIAという設定を元DIA(国防情報局)の凄腕工作員に変更。昼間はホームセンターで働く何の変哲もない優しい性格の中年男性が、ある事件をきっかけにロシアン・マフィアとの激しい死闘を繰り広げることに。
1作目のラストで、自ら広告サイトを立ち上げ、助けを求める声に応えようとする姿が描写されていることから、『ザ・シークレット・ハンター』の前日譚的役割を果たした作品であった。そして、映画版は2018年に続編である『イコライザー2』が公開された。
TVドラマから映画へと舞台を移し戦いを繰り広げた“イコライザー”であるが、今度は再び、主戦場をTVドラマへと移し、現代に蔓延る悪事を成敗する戦いに身を投じていくことになる。
ドラマ版の主人公は元CIAのシングルマザー!
『イコライザー』の主人公は、元CIAでティーンエイジャーの娘を育てるシングルマザーのロビン・マッコール(クィーン・ラティファ『STAR 夢の代償』)。彼女が助けを求めてくる人々の声を聴き、もう一つの裏の顔である“イコライザー”となり、世に蔓延る様々な悪事を正していく姿が描かれる。元スナイパーや天才ハッカーといった仲間たちと協力しながら、自らの圧倒的戦闘スキルを駆使して戦うロビンの姿が実に小気味いい作品に仕上がっている。
映画版では圧巻のアクション描写が印象的な作品であったが、今回のドラマ版は、どちらかといえば、潜入劇をメインとしている印象を受ける。クィーン演じるマッコールが、多種多様な変装をし、標的となる人物の懐に入っていく、まるでスパイドラマを視聴しているかのような面白さを醸し出すのだ。本作は言うなれば、アメリカ版『必殺仕事人』のようなものだろう。同作も南町奉行所の中村主水が、それぞれのスキルに長けた仕事人チームをまとめ上げ、弱きを助け、悪を挫く姿が描き出されるが、『イコライザー』もまた同じような構成で物語が進行していくことになる。
映画版では、デンゼル演じる主人公がほとんど一人で活動しているのに対し、本作では主人公のロビンが仲間の意見なども取り入れながら、任務を遂行していく姿が実に新鮮。その中に警察との探り合いやティーンエイジャーを育てる母親の苦労話などが盛り込まれており、映画版やオリジナル版とは異なる人間ドラマとしての出来栄えも素晴らしいのが本作の魅力である。
イコライザー=均衡を保つ者
“イコライザー”とは「均衡を保つ者」という意味を持つ。まさに世の中の悪事を成敗することで、バランスをもたらす者に与えられるに相応しい名称である。ドラマ『イコライザー』で描かれる事件の数々は、現代に蔓延る差別に鋭く切り込んでいる。劇中で主人公ロビンが「人々は私たちを捕まえるための理由を常に探している」と娘に説く場面がある。あえて、現代のTVドラマでそういったシーンを取り入れる意味というものを考えさせられた次第である。
映画、海外ドラマでおなじみの実力派キャストたち
主人公ロビン・マッコールを演じるのは、映画、海外ドラマと幅広く活躍するベテラン女優のクィーン・ラティファ。アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞にノミネート経験のある彼女が魅せる貫禄の存在感には目を見張るものがあり、キレのあるアクションまでこなすその演技にぜひとも注目したい。
またCIA時代の元同僚で、時には彼女にとって強力な助っ人となるウィリアム・ビショップ役に、『セックス・アンド・ザ・シティ』のミスター・ビッグ役でおなじみクリス・ノースが起用されており、相変わらずのダンディな表情を大いに見せつけてくれる。
その他、元スナイパーのメロディ役に『NCIS~ネイビー犯罪捜査班』のライザ・ラピラ、天才ハッカーのハリー役に『96時間 ザ・シリーズ』のアダム・ゴールドバーグ、ロビン率いるチームの頼れるメンバーたちもまた、海外ドラマ好きには堪らない実力に折り紙付きの面々が顔を揃えている。
映画版とは異なり、毎回ロビンとそのチームが数々の事件を解決へと導いていく、一話完結型のクライムアクション『イコライザー』。テンポの良いストーリー展開が非常に魅力的な作品で、次のエピソードが待ちきれなくなること間違いない。
『イコライザー』放送情報
AXNにて(全10話)
【字幕版】 9月1日(木)23:00スタート
【二カ国語版】 9月5日(月)23:00スタート
(文/Zash)
Photo:『イコライザー』© 2021 Universal Television LLC and CBS Studios Inc. ALL RIGHTS RESERVED.