第一次世界大戦のある任務をテーマに、全編ワンカットで撮影した映像が話題となっている戦争映画『1917 命をかけた伝令』。本年度アカデミー賞で10部門にノミネートされている同作で二人の主役にフレッシュな俳優を起用した理由について、サム・メンデス監督(『アメリカン・ビューティー』『007 スペクター』)が語っている。
本作は、第一次世界大戦の真っ只中である1917年を舞台に、一触即発の最前線にいる1600人の味方に作戦中止の命令を届けるという重要な任務を命じられた二人の若き英兵士、スコフィールドとブレイクの姿を壮大なスケールで描く。コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチら英国実力派俳優たちが集結する本作で主人公の二人に抜擢されたのはジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマン。スコフィールド役のジョージは1992年生まれで、2003年の『ピーター・パン』などで子役として活動し、近年はヴィゴ・モーテンセン主演映画『はじまりへの旅』やホラー映画『マローボーン家の掟』で印象的な演技を見せてきた。ブレイク役のディーン=チャールズは1997年生まれで、トム・ホランド(『スパイダーマン』シリーズ)も輩出した『リトル・ダンサー』ミュージカルで主人公を演じたほか、大河ファンタジードラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のトメン・バラシオン役で知られる。
19歳で入隊し、伝令兵として西部戦線で活躍したという祖父から聞いた戦時中のエピソードを元に、本作の制作に踏み切ったメンデス監督。そんな想い入れの強い作品でフレッシュな俳優を起用したことについて、「ごく平凡に見える二人の若い兵士の物語だから、観客にあまり知られていない俳優を起用したかった」とその意図を明かす。
メンデス監督はさらに、二人それぞれの特徴についても解説。兵士としての経験が豊富で冷静沈着なスコフィールド役に起用されたジョージに関しては、「どこか古風なところがあって、道義心や尊厳、勇敢さといった美徳を体現してくれた。スコフィールドは中流階級出身の優等生で、礼儀正しく控えめな人間になるように躾けられているが、大志を抱いた青年でもある。ジョージにはそういった要素を体現できるスキルと繊細さがあったんだ」と説明。
一方、地図を読むのが得意なブレイク役を勝ち取ったディーン=チャールズについては、「オーディションで初めて会ったんだが、彼にはブレイク役に最適な脆弱さと愛らしさがあった。すごく自然体だし、天性の才能がある」と評しており、トメンを彷彿とさせるキャラクターを演じる上で的確な配役だったことが窺える。
彼ら二人にとっても今回の仕事は大きな収穫だったようで、「本当に光栄だった。監督はこの壮大な経験を通じて僕らを導いてくれた。物語を伝える手腕が卓越している。唯一無二の監督だよ」(ジョージ)、「出演が決まった時から夢が叶った気分だった。オーディションで監督に会った時、早口で物語を説明してくれたんだけど、最後にさらりと"ワンカットで撮るから"と言われて、本気かと驚いた(笑) でも長回しの撮影は役に没頭できるから、とても貴重な経験だった。監督は天才だよ」(ディーン=チャールズ)と、メンデス作品に参加した喜びを口にしている。
スコフィールドとブレイクが過酷な戦場を駆け抜ける様子を臨場感たっぷりに描くべく、全編を途切れることなく繋がった映像として見せるワンシーン ワンカット方式で構成するためには、想像を絶するほどの努力が必要とされたようだ。メンデス監督は「完璧に途切れなく物語を描くため、すべてにおいて秒単位まで計算するなど緻密な調整をした。特にリハーサルには、過去のどの作品よりも時間を費やした。自身のキャリアにおいて最もエキサイティングな仕事だった」と語っている。もともと舞台出身でリハーサルをみっちり行うことで知られるメンデス監督が「過去最長」と言うからには、並外れた時間と労力が費やされたことだろう。
そんな完成度の高さが評価され、アカデミー賞前哨戦と言われるゴールデン・グローブ賞で作品賞と監督賞を受賞した『1917 命をかけた伝令』は、2月14日(金)より全国公開。(海外ドラマNAVI)
Photo:
『1917 命をかけた伝令』
(c)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.