大ヒット映画『ゴーン・ガール』で100倍返しの復讐妻を演じた女優ロザムンド・パイクが、最新作『パーフェクト・ケア』でピーター・ディンクレイジ(『ゲーム・オブ・スローンズ』)演じるロシアン・マフィアもひれ伏す筋金入りの"ワル"を怪演! 高齢者を餌食にする詐欺問題にもメスを入れる社会派エンタテインメントとしても注目の一作だ。【映画レビュー】
"完璧なケア"で裁判所から厚い信頼を得ている法定後見人のマーラ・グレイソン(ロザムンド)。だが、その正体は、合法的に高齢者の資産を搾り取る悪徳後見人だった。そんなマーラが次の獲物に定めたのが資産家の老女ジェニファー(ダイアン・ウィースト)。身寄りがなく格好のターゲットとなるはずだったが、彼女の背後にはローマン(ピーター)率いるロシアン・マフィアが目を光らせていた。
まず目を引くのが、本作で第78回ゴールデン・グローブ賞ミュージカル・コメディ部門主演女優賞を受賞したロザムンドの怪演ぶりだ。頭脳明晰、饒舌多弁、モデル並みのヴィジュアルとジムでバッキバキに鍛えた美ボディで、どんな相手も圧倒する。恋人は仕事のパートナーでもあるフラン(エイザ・ゴンザレス)。はっきり言って男は不要。高齢者を"獲物"と捉える冷徹さはいったいどこで培われたのかは定かではないが、マーラという人間はとにかく強靭。
一方、彼女の前に立ちはだかるのがピーター演じるロシアン・マフィアのボス、ローマン。ある密接な"関係"から老女ジェニファーを必死に守ろうとする姿は、犯罪者ではあるものの、ちょっぴり好感を持てたりする。ところが、そんなローマンを鉄の女マーラが許さない。そんなこんなで壮絶な攻防戦が勃発するのだが、果たしてどちらに軍配が上がるのか?
全編を通して、「この女、早く地獄に堕ちろ!」と、正直怒りしかこみ上げてこないのだが、トドメを刺されそうになってもローマンに食らいつく彼女の超人ぶりにいつの間にか引き込まれ、釘付けになっている自分がいる。「いやいや嘘でしょ、冗談じゃない!」と心の中で否定しても、その凄まじい暴挙にやっぱりゾクゾクしてしまうのだ。「腹が立つほど頭にくるが、腹が立つほど観たくなる」...ロザムンドの常軌を逸した怪演ぶり、ここまできたら芸術だ。
映画『パーフェクト・ケア』は、全国劇場公開&デジタル配信中。
(文/坂田正樹)
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『パーフェクト・ケア』©2020, BBP I Care A Lot, LLC. All rights reserved.
配給:KADOKAWA