俺もオトコだ、なめるなキャラメル!
最近でこそ、字幕で見ることが多くなってきた洋画、そして海外ドラマ。でも、以前は吹き替え版のほうが一番二番三番におもしろかったりした。そんな吹き替え黄金期を支えていた声優のおひとりが広川太一郎さん。
たとえば本サイトでも紹介した『ダンディ2 華麗な冒険』。奇しくも出演するは広川太一郎さん担当俳優のお2人、ロジャー・ムーアとトニー・カーチス。
「さすがに一人二役をずっとはやれないから~」という理由だったのかはわからないが、トニー・カーチスを広川さん、ロジャー・ムーアをささきいさおさんが担当。
うん、でもこれはトニーで正解。ヤンキーないい加減さが広川太一郎さんによって倍増。そしてささきいさおさんによって貴族ロジャーのスノッブさが際立つ。吹き替えだけでこんな演出ができるんですぞ! 素晴らしきかな吹き替え傑作、楽しめるのは日本語がわかる人だけ。本国イギリスで楽しめないなんて、ほんとかわいそかわうそざんす。
お気に入りはモンティのエリック!?
ついこの2月(2008年)にDVDで発売されたのは『空飛ぶモンティ・パイソン』。日本語吹替復活とめいうったファン待望のしろもの。モンティ・パイソンといえば、イギリスはBBCでブラックなネタをさんざっぱらパラダイスしほうだいだったコメディ集団。
そのメンバーのなかでもトリッキーなエリック・アイドルの吹き替えを担当したのが広川太一郎さん。
マイナー!?な『ダンディ2』よりも、やはり広川太一郎さんといえばモンティ・パイソンのエリック。エリックといえば、モンティのなかでも群を抜いて言葉遊びの達人。さらに言葉遊びをあやつる広川太一郎が吹き替えときたらもう芸のきわみ。ゲイのきわみはグレアムだけど。
あのムーミンにも!
もちろん、アニメでも広川太一郎さんはご活躍。
あの『宇宙戦艦ヤマト』の古代守も広川さんだった! 『宇宙戦艦ヤマト』はささきいさおさんも伊武雅刀さんも参加してたなー。
なんといっても『ムーミン』(1969/1972)のスノークの声が広川さんだったことが驚き。岸田今日子ムーミンと高木均ムーミンパパに気をとられすぎていたか。
原作者トーべ・ヤンソンはこの初代『ムーミン』がお気に召さなかったらしいが、ファンとしてはこっちのほうがムーミン。いったいぜんたいフローレンってなんだよ。原作(だとスノークのお嬢さん)とどうせ違うんだからノンノンでいいんだ!みたいなね。
そして、モンティ・パイソンのエリックと『ムーミン』のスノーク役は広川さんのお気に入りだったそうな。
広川太一郎ワールドについて
『ダンディ2 華麗な冒険』のDVDに収録されている広川太一郎さんとささきいさおさんのインタビュー。
あの広川ワールドはアドリブで簡単に生まれたように見えるけれど曰く、「だいぶ軋轢があった」と。たしかにシナリオがまっくろになるほどセリフの書き込みが多かったという広川太一郎さん。そしてそんな声優がいなくなったと嘆くささきいさおさん。現在の吹き替え、いや声優業界にに「気取りすぎる」という苦言を呈している。
広川太一郎さんは、翻訳シナリオよりもおもしろければ、それを採用するのがいいんじゃないか、といっていたけれどほんとにそう思う。たとえ意訳にしても、ストーリーからかけ離れているのではなく、ストーリーを盛り上げる超訳であれば、ファンとしてはぜんぜんオッケー。
広川太一郎さんは、こういう吹き替えをいま、求められているんだろうか?なんて不安げにいってたけれど、求めてます!こんな吹き替え。
字幕じゃないおもしろさが吹き替えにあるからこそ、『モンティ・パイソン』も『ダンディ2 華麗な冒険』の吹き替え版に根強い人気があるんです。
そのほかの広川太一郎ワールド
広川太一郎さんの担当俳優といえば、エリック・アイドルにトニー・カーチスとロジャー・ムーア。それにロバート・レッドフォードも数多くこなしている。みんなイロ男さんね。もひとつ、異色のマイケル・ホイも忘れちゃいけない。
映画『キャノンボール』なんてロジャー・ムーアとマイケル・ホイが共演したもんだから、一人二役やったりしたもんダッタン蕎麦。
007シリーズでかぶるといえば、『女王陛下の007』。007シリーズのなかで唯一ダークで救いようのない展開なのだけど(だけどだけどすごくよい!)、このボンド(ジョージ・レーゼンビー)の声も地上波で放送されたときには広川太一郎さん担当。うーん幅広すぎるぞ、キャラづくり。
最近は吹き替え完全版のDVD再発などが多いので、みなさんもぜひとも広川ワールドにおはまりあれ。
5月にはモンティ・パイソンのあの名作『ライフ・オブ・ブライアン』のDVDが発売されます!
広川太一郎さん!
お世話にさんざっぱら!