【お先見!海外ドラマ日記】わかっちゃいるけどやめられない『Teen Wolf』のドライブ感(from NY)

依然として、米国の若い衆にヴァンパイアものがウケている。
映画『トワイライト』サーガの大ヒットは言うに及ばず、テレビドラマでもHBOの『トゥルーブラッド』が今月末からシーズン4に突入、またCWの『The Vampire Diaries』も今秋からシーズン3の放映が決定するなど、吸血鬼の人気は健在だ。

少なくとも18世紀初頭には「ヴァンパイア」という言葉が存在していたというから、それから300年近く時を隔てた今もその存在がメディアで引っ張りだこというのは、まさに恐るべき長寿人気キャラ。この西洋の古典的妖怪の活躍ぶりには、日本のお岩さんやろくろっ首にも見習うべき点があるだろう。

 

もっとも、近年のヴァンパイアものは、吸血鬼本来の「恐ろしさ」を前面に押し出すより、ヴァンパイアにイケメンを配し、人間のヒロインとの「禁断の恋」をウリにした、いわば「吸血ロミオとジュリエット」的物語が多いのが実情だ。「障害があればあるほど盛り上がる」恋愛の特質を活かし、吸血鬼のキャラがうまいこと「ダシ」に使われている感は否めない。

ただ、ヴァンパイアがこれだけモテハヤされたら、いつまでも黙って見ていられないのが狼男だ。西洋妖怪界のツートップともいえるこのご両人、ヴァンパイアが東の横綱なら狼男は西の横綱、ヴァンパイアがAKBの前田敦子なら狼男は大島優子といった具合で、そのライバルとしての歴史は長く、これまでもヴァンパイア映画がヒットしたら必ずといっていいほど狼男の映画が製作されてきたほど。

最近では、映画『アンダーワールド』や『トワイライト』のようにヴァンパイアと狼男がセットで、というより、最近ホットなヴァンパイアのおまけ(あるいはバーター)で狼男が共演する機会が増えていたが、ここにきてついに狼男メインのドラマシリーズがMTVで始まった。その名も『Teen Wolf』。読んで字の如く、ガラスの十代で狼男になってしまった高校生が主人公だ。1985年にマイケル・J・フォックス主演で製作された同名映画のリメイクだが、コメディだった映画よりも、前述のヴァンパイアものに近いテイストに仕上がっている。

パッとしないごく普通の高校生スコット・マッコール(タイラー・ポージー)は、狼男に噛まれたことをきっかけに、満月の夜や興奮状態になると狼男に変身する体質になってしまう。その秘密を知っているのは今のところ、親友のスタイルズ(ディラン・オブライエン)と彼を噛んだ狼男のデレク(タイラー・ホークリン)の2人だけ。狼男になったことでスコットの運動能力は飛躍的に高まり、万年補欠だったラクロス部で一躍ヒーローになり、そのおかげもあって美人の転入生アリソン(クリスタル・リード)ともいい感じに。しかし、ラクロスの試合やアリソンとのラブシーンで興奮してしまうと、つい狼男に変身してしまうスコット。狼男であることがバレないよう、ラクロスの試合に出ないことをスコットに勧めるスタイルズだが、スコットはせっかく掴んだ彼女とレギュラーの座を手放せない。その一方で、ヒーローの座を奪われたラクロス部のキャプテン、ジャクソン(コルトン・ヘインズ)はスコットを敵視、また愛しのアリソンの父親はあろうことか狼男ハンターであり、さらに狼男の存在が公になると種族の存亡に関わるデレクが常にスコットに目を光らせていて・・・

と、大筋だけ読むとありがちな設定で、わざわざ観るまでもなさそうなこのドラマ、イケメンの多さとその圧倒的なテンポの良さが快感で、退屈させない。端役だが、チームが勝つことしか考えてないラクロス部のコーチ(くりぃむしちゅーの有田にチョイ似)や、親友スタイルズの底抜けの能天気さが笑いを誘い、青春アクション・ロマンチック・コメディ・サスペンス・ホラーとでもいうべき盛り沢山な内容になっていて、おおよその展開はわかっちゃいるのだが、楽しくてやめられないのだ。

そもそも、アドレナリンが暴走しがちな若さと、狼男とは、相性が良さげだ。それに比べてヴァンパイアは、身体が冷たすぎて抱き合うこともできなければ、太陽光で溶けちゃうから一緒にビーチにも行けないしで、青春ドラマには不向きな人材のように思える。どうせデートするなら、寒い冬でも毛皮で温めてもらえる狼男の方がよいのではないだろうか。(そのかわり、夏はかなり暑苦しいが)。

ともあれ、昨今のダークで日陰者的ドラキュラ恋愛模様に辟易し、太陽の下でスポーティな異人種間恋愛ドラマを楽しみたい方に、ぜひこの『Teen Wolf』をおすすめしたい。