ヒット・メーカー、J・J・エイブラムスのインタビューは、最新作『パーソン・オブ・インタレスト』についてたっぷりお話を伺います。
――『パーソン・オブ・インタレスト』の撮影裏話などありましたら教えてください。
撮影現場はニューヨークで、私はずっとロサンゼルスにいたから他の人に聞いた方がいいのかもしれないけど、私が聞いたのはファースト・シーズンの撮影中に道の向かい側で何か犯罪らしきものが目撃されたらしい。だれかが襲われたとか、ひったくりにあったとかそういう状況だったらしい。それで俳優の一人が割り込んでそれを止めたらしいんだ。でも、今訴訟中だったりしたらまずいから、細かいことは言わないでおこう。
現場の話はジョナサン・ノーランに聞いたほうがいいかもね。(笑)
――『パーソン・オブ・インタレスト』の面白さは監視システムとキャラクターの設定(緻密さや内面描写の丁寧さ/キャスティング)にあると思いますが。
まず設定からいうと、カメラが人々を監視しているというのは、隠れた願望の体現であると同時に訓戒でもあると思うんだ。フィンチやリースやカーターが他人の犯罪、あるいは自分自身が起こすかもしれない犯罪を未然に防ぎ、皆を守るというのは理想的な状況だが、彼らが仕事をできるのは、監視カメラがあらゆるところに張り巡らされているからこそだしね。
人々は、常にカメラの目にさらされ、話すこと成すこと全てが見られているという状況を当たり前のように受け入れるようになったが、5年前、10年前だったらパラノイア的なSFドラマかスリラーにしか思えなかっただろう。ところが、今は現実にかなり近い状況だ。
実際最近目にした記事で、『プログラム』という、『マシン』と全く同じようなものが出現しているというのを読んだんだ。『FRINGE/フリンジ』でもTVで放映してから数週間後に、それをまるでなぞったかのような記事を目にすることがあった。つまり、どんなすっとんきょうな発想でも意外にも現実が追いついてくる、或いは場合によっては前から現に起きていた、ということに気付くことがある。
キャラクター設定に関して言うと、脚本執筆の段階からフィンチやリースやカーターがどういう人物なのか、ジョナサン・ノーランがはっきり描いていた。キャスティングも素晴らしかった。マイケル・エマーソンは何をやっても狂人並みの才能を発揮してくれる。リースを演じるジム・カヴィーゼルとは、話し合いを重ねたが、正直どうなるかは予想がつかなかった。ところが現場で演技を見せてくれた彼は、多くを語らないが行動には出るというリースの寡黙な感じ見事に表現してくれたね。だからエマーソンとのコンビも完璧だったよ。二人はジョナサンが思い描いていた人物を見事に表現してくれた。カーター演じるタラジ・P・ヘンソンも昔から好きで、実は『フェリシティの青春』にもちょっとだけ出演してもらっている。彼女とまた仕事ができて嬉しいね。カーターはこれから面白いことになっていくよ。とにかくキャストに恵まれたシリーズだ。
――『パーソン・オブ・インタレスト』 爆発的ヒットの秘密は何でしょうか?
人々が『パーソン・オブ・インタレスト』に魅かれる第一の理由は、現代では皆、監視カメラに囲まれているからだと思う。いつ、どこにいても、監視カメラだらけだ。街を歩いていてもカメラを気にとめることもなくなってきた。"では、その監視カメラが記録した情報が実際に利用されていたとしたら?"というアイデアが興味深いと思った。監視カメラの情報を集めたマシンが存在していて、そのマシンが、これから起こる犯罪、又は被害者が巻き込まれうる犯罪の予知につながるとしたらどうだろう?そして二人の意外なヒーロー達がその情報を使って皆を守るとしたら?このアイデアを持ち込んできたのはジョナサン・ノーラン。ジョナサンはバットマン・シリーズの脚本を共同執筆しているから、シリーズにバットマン的なカラーをもたらせてくれる。いわばマントなしのスーパーヒーローたちが世界を感知する監視カメラという、現代の我々が非常に共感できるツールを使うという設定だ。
――J・J・から見た『パーソン・オブ・インタレスト<ファースト・シーズン>』の見どころを教えてください。
冒頭のリースとフィンチはカーターという警官に追われている。リースとフィンチはまだ打ち解けておらず、お互いを疑っているが、お互いを必要としている。一方、追っているカーターは彼らの事情を全く知らない。シーズンが終わるころには全く違う様相を見せることになるが、それでもストーリーの一貫性は保たれている。舞台はニューヨークだが、一話完結型のストーリーが展開される。だから、シリーズの途中から見出してもすぐに追いつける。一話目から全部見ている人(...本当はそうあってほしいけどね)は、それはそれで長期にわたるストーリーラインをしっかりと堪能できつつ、一話完結型のストーリーも楽しめるという二重の楽しみがある。アクションも素晴らしい!リース演じるジム・カヴィーゼルも素晴らしい!スティーブ・マックイーンやクリント・イーストウッドが昔演じていたような、クラシックなタフガイを演じてくれるんだ。
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――今後準備されているプロジェクトについてお教えください。
今は映画『スター・トレック』の新作の編集をしているところ。公開前に日本でのプロモーションも予定しているよ。その他にはTVのパイロットを数本、映画も企画段階のものが数本ある。面白いものばっかりだ。
――日本のファンがJ・J・.の来日を待ち望んでいますが、ご予定はありますか?
『スター・トレック』新作の公開前に日本に行く予定だが、どこよりも日本に行けることを楽しみにしているのはこの僕さ。君達にも会えるといいね。映画は夏に公開だから、その前に行くことになるかな。
――あなたの作品に出てもらいたい日本人俳優って誰か思い浮かぶ人がいたら是非教えてください。
一番楽しいのは、国を問わず、無名の役者を起用して彼らが注目を集められるような企画に出演させること。実際に今までいろんな国の俳優達を起用してきた。だからアメリカではまだ注目されていない日本の俳優や女優、脚本家や監督とコラボレーションをして彼らの名をアメリカで広めていくのが夢だよ。そういうコラボレーションをしてみたいね。
――最後に、日本のファンへ一言お願いいたします
まずはありがとう。大好きな日本でも、我々が手掛けている企画が大勢に気に入られているのは嬉しいことです。だからまた日本へ行って直接感謝していることを伝えたいね。今企画しているものも早くみんなに見せたいね。
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