結論から先に言ってしまおう、
「面白いっ、巧いっ。この作品はおススメ!!」
きっとアメコミの世界のファンなら、この作品がDCコミックの世界を代表する人気を誇る"Green Arrow/グリーン・アロー"というヒーローが題材になっていることを、誰もが知っているのかもしれない。
しかし、僕は知らなかった。
"グリーン・アロー"という男が、"バットマン"や"スーパーマン"、"ワンダー・ウーマン"らと共に、
「ジャスティス・リーグ」という正義のヒーローチームを構成する一員なのだということさえ。
でも、
知らなくても、まったく問題はない。
予備知識など無くとも、惹き込まれてしまう力がある。
それはドラマとして、地に足がついた、説得力のある作りになっているからだ。
"ヒーロー"の物語と言っても、主人公のオリバー・クイーンは人間だ。
心の奥底に葛藤を抱える若者である。
嵐による海難事故で、当然死んだと思われていた億万長者の息子オリバーは、
奇跡的に流れ着いたある島で壮絶な5年間を過ごし、生き延びた。
そして彼は、悪の権力者たちが蔓延る街、スターリング・シティに生還する。
しかし、その5年の歳月がオリバーを、以前のオリバーとは違う男に変貌させていたのだ...。
彼は、亡き父との最後の約束を実行するため、
様々な秘密が潜む家族らとの距離を計りつつ、社会の悪と闘っていく。
主人公オリバー・クイーンを演じるのは、期待の若手俳優スティーヴン・アメル。
大富豪の息子で、もともとはプレイボーイであるというオリバーの設定は、
バットマンことブルース・ウエインと境遇が似ているが、
ブルースと大きく違うのはオリバーには家族がいて、彼らとの関係にも常にドラマが生まれるということだ。
パーティーに興じる金持ちの息子のフリを演じながら、
家族には、絶対に見せられない一面がある。
この落ち着きぶり、心の内を見せずに、冷静に、しかし時に激しく、
時に優しさをたたえながら目的を遂行していく、スティーブン・アメルの表情がいい。
プロデューサーで脚本も担当するグレッグ・バーランティ(『ブラザーズ&シスターズ』『ダーティー・セクシー・マネー』『グリーン・ランタン』などを手がけているハリウッドの売れっ子)は、スティーブンについてこう語っている。
「これほど速く配役を決定した例は、過去ないよ。最初に会ったのが彼。それで決めたんだ」
その肉体美が目に飛び込むポスターを見れば、彼の筋骨隆々とした身体も選ばれた大きな要因だったのだろうとつい思ってしまうが、そうではないらしい。
「実は、製作に入るまで彼がシャツを脱いだ姿は見たことが無かった。すべて、演技で決めたのさ」
と、バーランティ氏はスティーブンがオリバー役のすべての要素を兼ね備えていると確信したという。
僕の知り合いの米国テレビ批評家の方はこう評していた、
「アローの役に、彼を見つけて配役したってことだけで、この番組の成功は予想できたわ!」
と。
スティーブンの存在は、それらの高評価に違わず、実に格好いい!!
もし将来、DCコミックとワーナー・ブラザーズが噂されている通りに"ジャスティス・リーグ"を完全実写化することがあるのなら、彼をそのまま起用して欲しいものだ。
彼なら、スクリーンの世界にもそのままピタリとハマるだろう。
いや、バットマンのブルース・ウエインと人気を二分する、
影のあるヒーローになれる可能性さえある。
それにしてもなぜ、
正確無比に「矢を射る」姿がこれほどセクシーに映るのだろう?
(ライバルであるMARVELコミックス&映画の世界にも、やはりアーチェリーの名手"ホークアイ"がいるではないか!)
オリバーが、人知れず、寡黙に、鋼のような身体をさらに研ぎすませようとトレーニングする姿には誰もが惚れてしまうはずだ。
この、クールで屈強だが心の奥は優しく、傷を負ったヒーロー像は、
放送する米CWネットワーク(『ニキータ』『スーパーナチュラル』)の強い支持層である女性ファンたちの心をしっかりと掴んでいる。
褒めるべきは、俳優だけではない。
この作品の撮影監督のグレン・ウインター(『ヤング・スーパーマン(Smallville)』や『フォーリング スカイズ』などで複数エピソードを担当)が撮る画も素晴らしい。特に、アローが暗躍する夜や闇の描写の美しさと奥行きは、どのショットも映画に近いレベルだ。
編集のポール・カラシックの技も見事だ。
VFXなどの視覚効果やCGなどに大きく頼ることが無く、映像ショットの切り替えや繋ぎ方で、アローの特殊能力や素早さ、強靭さなどを巧みに見せ、「ハッ!」とさせられる楽しさがある。
テンポに切れがあり、観る者を視覚的に欺く工夫も多く、演出で飽きさせることがない。
撮影監督と編集が優れている作品というのは、
ドラマの会話部分だけでなく、"アクションシーン"に迫力とリアルさを生むという点でも、『ARROW/アロー』は成功している。
きっと多くの海外ドラマファンが、"アメコミ原作"という壁や苦手意識などを忘れて、ただただ優秀な連続ドラマとして堪能することだろう。
そしてもちろん、コミック(&映画)ファンにとってもたまらない魅力を秘めた期待のシリーズであることも、間違いない。
ケイティ・キャシディが演じるオリバーの元恋人ローレルは、
ある重要なDCコミックの女性ヒーローキャラクターが下敷きだ。
彼女がそのヒーローに変身する時は果たしてやってくるのか、
その過程にも惹き付けられそうだ。
他にも、このシリーズには数々のDCキャラクターたちが登場することが約束されている。
ひとつ興味深いのは、
米国アジア系女優のケリー・フーがシーズン1から主要な役柄で登場していることだ。
ケリーといえば、FOX映画が製作した『XーMEN2』("Xーメン"は、DCにとってライバルであるMARVELコミックスの代表的キャラクター)で、
レディ・デスストライク役として、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンと壮絶な死闘を繰り広げた女優である。
彼女が、今度はDCの世界で『ARROW/アロー』と堂々と向き合う展開があるというのは、アメコミのファンたちにとって大きな(驚きの)ニュースであったに違いない。
米国はこの夏、同じDCコミック原作の『マン・オブ・スティール』という、
スーパーマンの新シリーズの1作目を公開したばかりだ。
この映画がサマームービーの話題となっていることはもちろんだが、
秋にシーズン2をすでにスタートさせる『ARROW/アロー』にも大きな期待が寄せられている。
『ARROW/アロー』に今後登場するキャラクターたちがファンの心を捉え、
成功すれば、CWネットワークが以前から計画を温めている"ワンダー・ウーマン"のドラマ化にもゴーサインが出るかもしれない。
となれば、多くのファンが待ち望んでいる"ジャスティス・リーグ"の背景となる世界観をTVドラマが充実させ、牽引することになるかもしれない。
それほどの命運のカギを握っているのが、この作品なのだ。
正義(ジャスティス)を貫く、ハードボイルドな主人公の心の奥を、
疾風のように駆け、矢を瞬く間に放つ男の姿を、
女性ドラマファンも、コミックファンも、追いかけてしまうだろう!!
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★『ARROW/アロー』
2013年9月よりAXNにて初放送!
※これに先駆け、7月7日(日)に第1・2話のプレミア放送もあり。ぜひチェックを!
★さらに!
『ARROW/アロー』<ファースト・シーズン>DVD
8月21日(水)ワーナー・ホーム・ビデオ/デジタル・ディストリビューションよりリリース!
同日よりオンデマンド配信もスタート!
Photo:『ARROW』 (c) 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.