『スター・トレック(以下、ST)』のドラマシリーズとしての復活。長らくファンから待望されていたこのニュースは、今週のはじめに各メディアで大きく伝えられ反響を呼んだ。しかし、「新シリーズは初回のみTV放送、以降のエピソードは米CBSのストリーミング映像配信サービスで配信」との発表に、さっそく批判や不安の声が上がっている。
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その先陣を切ったメディアの一つはNew York Post。「TVにおけるSTのリブートを早くもダメにしている」と、CBSの戦略を強く批判している。
アメリカでのストリーミングサービスは、現在、Netflix、Amazon Prime、Huluが競い合って活況を呈し、クオリティの高いオリジナル作品も生まれている。しかし、STの新シリーズは、CBS All Accessというあまり聞いたことのないサービスで配信され、視聴するには月6ドルを新たに支払わなくてはならない。本来なら、TVを持つ全ての人が容易にSTを見られるようにするべきだ――というのが、批判の骨子だ。
一方、ニュースサイトThe Vergeも、CBSの戦略の意味を問いかけている。視聴率で上位にランクインする番組を多く放送するCBSは、地上波TVの王様とも言えるポジションにある。一方、ストリーミングにおいては、世界に7000万人もの加入者を持つNetflixがすでに存在する。ならば、STの新シリーズは、CBSの地上波TVで放送するか、もしくはNetflixで配信する、というのが理にかなった選択だろう。なぜ、CBS All Accessなのか?
この疑問に、The Vergeは「ストリーミングの未来を見据えているCBSにとって、STは必要とされる大きな投資」と答えている。CBSの社長兼CEOであるレスリー・ムーンブスは、TV界に起きている潮流の変化を見越して、ストリーミングに大きく力を注ごうとしている。STはそのキラーコンテンツになる、というのだ。
事実、ムーンブス本人も、上の見方を裏付けるようなことを話している。Hollywood Reporterによれば、「NetflixやHuluとのパートナーシップを継続する一方、CBS All Accessではオリジナルタイトルを設けて、プラットフォームの構築を進める。熱心なファンの多いSTは、その起爆剤となる。無数のチャンネルがある中で、CBS All AccessはSTが観られるサービスとして認知されるだろう」とムーンブスは述べたという。
ちなみに今年の春の発表によれば、CBS All Accessの加入者数はまだ10万人程度。TV視聴者が飛びつきたくなるオリジナルタイトルを、どのようにそろえ、強豪の立ち並ぶストリーミングでどう存在をアピールしていくのか、まだまだ不透明だ。今後1年の間に、具体的な戦略が見えてくることを期待したい。(海外ドラマNAVI)
Photo:オリジナルのTVシリーズ『スター・トレック』
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