先月発表された第89回アカデミー賞で8部門にノミネートされ、作品賞・脚色賞・助演男優賞の3部門を受賞した『ムーンライト』。異例の1ヵ月前倒し公開も決定した同作では、オスカーを獲得したマハーシャラ・アリの出演時間の短さも話題となっている。
約90年にわたるアカデミー賞の長い歴史において初めて、LGBTをテーマにした作品として作品賞を獲得し、「映画史の歴史を変えた」と言える同作。2016年のテルライド映画祭での上映を皮切りに、圧倒的な支持を得て北米で大ヒットを記録、ゴールデン・グローブ賞の作品賞(ドラマ部門)をはじめ、数多くの賞レースを制してきた。
そんな話題作で、自分の居場所を見つけられずにいる主人公リトルの面倒を見る麻薬ディーラーのフアンを演じるのは、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のレミー・ダントン役、『4400 未知からの生還者』のリチャード・タイラー役などで知られるアフリカ系アメリカ人俳優のマハーシャラ・アリ。今回、新たな場面写真が初解禁された彼が登場するのは3部構成の第1部のみ、しかも出演時間はわずか24分にもかかわらず、本年度の国内外の映画賞を総ナメ、アカデミー賞ではノミネーション発表前から本命視されてきた。出演時間24分でのオスカー受賞は、過去10年の同カテゴリー受賞者と比べても最短となる。
<過去10年のアカデミー賞助演男優賞受賞者>
第79回 アラン・アーキン(『リトル・ミス・サンシャイン』)
第80回 ハビエル・バルデム(『ノーカントリー』)
第81回 ヒース・レジャー(『ダークナイト』)
第82回 クリストフ・ヴァルツ(『イングロリアス・バスターズ』)
第83回 クリスチャン・ベイル(『ザ・ファイター』)
第84回 クリストファー・プラマー(『人生はビギナーズ』)
第85回 クリストフ・ヴァルツ(『ジャンゴ 繋がれざる者』)
第86回 ジャレッド・レトー(『ダラス・バイヤーズクラブ』)
第87回 J・K・シモンズ(『セッション』)
第88回 マーク・ライランス(『ブリッジ・オブ・スパイ』)
「アリの圧倒的な雰囲気は、その上品さにある。甘く優しい声に、脳を溶かすような優しい笑顔を持っている」(Guardian紙)、「彼はいつも、スクリーンの中でプロフェッショナルな姿を見せる。通常であれば型にはまりがちな役柄に命を吹き込み、しかもそのパフォーマンスは自然なのである」(New York Times紙)、「アリのパフォーマンスは、登場していないシーンでもその影がちらつくような爪痕を残している。登場シーンは多くはないが、その間であっても彼が存在しない喪失感を感じる」(BUSTLE誌)などとメディアで称賛されたマハーシャラ。本人は、大反響を受けて次のように語っている。「自分の演技についていろんな人が語ってくれるなんて、とっても素敵な気分だよ。だけどそれはアンサンブルものだからなんだ。僕はその世界の一部。僕よりも彼らの演技がすごいんだ。昨夜、もう一度映画を観たんだけど、改めてみんなの演技のすごさを認識させられたよ。共演できて光栄だった。この映画は、人との関わりを描いた作品だ。自分の居場所を見つけられなくて自分の住む地域に受け入れられない人たちの話。また、手を差し伸べる人の話でもある。自分を愛してくれて、浮き輪を投げてくれる人たちを描いているんだ」
名前はシャロン、あだ名はリトル。内気な性格で、学校ではいじめっ子から標的にされる日々の彼にとって、同級生のケヴィンが唯一の友達だった。高校生になっても何も変わらない日常の中、ある夜、月明かりが輝く浜辺で、シャロンとケヴィンは初めてお互いの心に触れることに...。
『ムーンライト』は3月31日(金)、TOHOシネマズシャンテほかにて全国ロードショー。(海外ドラマNAVI)
Photo:『ムーンライト』© 2016 A24 Distribution, LLC