【海外ドラマ入門】受賞歴多数!『ブレイキング・バッド』の評価が高い理由は?

何気なく暮らしていた平凡な生活が突然崩れてしまう、そんな状況からどんどん考えたことがなかったような人生に突き進むスリルが味わえるドラマ。それがアメリカで放送された『ブレイキング・バッド』です。タイトルにもなっている「Breaking Bad」は「道を踏み外す」という意味を持つ英語のスラングで、まさにドラマの内容を象徴しています。しかし、単に犯罪を描いているわけでなく、軽妙なテンポでブラックユーモアを放つ魅力にあふれた作品です。そんな『ブレイキング・バッド』について詳しく紹介します。

◆『ウォーキング・デッド』の放送局が手掛けた衝撃作

2008年、ヴィンス・ギリガンによって制作されたアメリカのサスペンスドラマです。平凡な男だった主人公があることをきっかけに、それまでとは違った人生にどんどん進んでいく様子を描き、ブラックコメディ的な要素をふんだんに盛り込んでいます。放送されたのは有料放送のケーブルチャンネルAMCです。同局はもともとクラシックな映画などを放送していましたが、CMスポンサーに遠慮せず自由なドラマ制作ができる利点を活かし、本作以外にも『ウォーキング・デッド』『MAD MEN マッドメン』といった個性的なドラマシリーズを世に送り出しています。

主人公のウォルター・ホワイトはニューメキシコ州アルバカーキの高校で化学教師として働いている人物で、演じるのはTVドラマはもちろん、映画にも多数出演しているブライアン・クランストン。ウォルターの元教え子であるジェシー・ピンクマンはドラッグディーラーとして追われる身でしたが、ウォルターと再会してそのパートナーとなります。演じるアーロン・ポールは本作でブレイクしました。ウォルターの家族は妻のスカイラー、ジュニアと呼ばれているウォルター・Jrで、シーズン1で妊娠中だった妻はのちに娘ホリーを産みます。診療放射線技師として働くスカイラーの妹マリー・シュレイダー、その夫ハンクも主要キャラクター。さらに、地元では知られた人物である弁護士のソウル・グッドマンや、「ガス」と呼ばれファストフードのチェーン店やクリーニング店を経営するグスタボ・フリングが、実は裏の顔を持つ人物として登場するのも見どころです。

◆平凡な高校教師が麻薬界の大物に!

ウォルターはもともと優秀な化学者として期待されていたものの、会社を辞めて高校の化学教師として働いていました。性格は真面目で温厚、眼鏡をかけたいでたちも平凡そのもの。給料が安いため、洗車場でのアルバイトもしながら妻と脳性麻痺で障害を抱えている息子を養っていました。そんなある日、自分が肺がんに侵されていると知ったことで人生が大きく変わっていきます。自分が死んだ後に残された家族が困らないよう財産を残そうと考え、かつての教え子であるドラッグディーラーのジェシーとともに違法ドラッグのメタンフェタミン(通称メス)を製造・密売する道に進んでいくことになるのです。

◆多数の受賞歴を誇る伝説のドラマ

『ブレイキング・バッド』は単に視聴者に人気があるというだけではなく、多くの受賞歴を誇ります。ウォルター役のブライアン・クランストンは米ドラマ界のアカデミー賞と言われるエミー賞で主演男優賞を4度、ジェシー役のアーロン・ポールは3度助演男優賞を受賞しています。さらにはウォルタ-の妻役のアンナ・ガンも2度助演女優賞を獲得したほか、最終シーズンが対象となった2014年には前述の3人に加えて、作品賞、脚本賞、編集賞も受賞と主要部門を総なめにする勢いでした。同年には、ハリウッド外国人映画記者協会の会員によって選ばれるゴールデン・グローブ賞でも作品賞と主演男優賞に輝いています。ほかにも多数の賞レースを賑わせ、評論家たちから絶賛されました。

◆高評価のワケは見事な心理描写

もともと優秀な化学者だったウォルターは化学を愛していますが、生徒からは特に尊敬されることもありません。やがて、ドラッグが儲かると知った彼はその知識を活かして、従来のものより純度や効果の高いドラッグを精製していきます。しかし、最初はドラッグを製造するだけのつもりだったにもかかわらず、徐々にそうはいかないように...。当然、平凡な化学教師とドラッグ製造者という二つの顔を両立できなくなり、家庭生活も崩壊の危機にさらされます。

シーズン1が始まった当初は平凡だった高校の化学教師が犯罪に手を染めていくという話ですが、回を追うごとにストーリーは複雑さを増し、ウォルターの狂気じみた心の移り変わりも描かれていきます。息子のジュニアはドラマの開始当時、父親が教える高校の生徒でした。家族に対して愛情を持っており、父親ががんだとわかった際には治療費を募る募集サイトを立ち上げるなど、障害を抱えているのにもかかわらず前向きで行動力のある生き方をしている少年です。このように、裏の世界に生きることになった主人公の苦悩や家族との関わりなど、心情の移り変わりを見事に描いているのも高評価につながっているのです。

平凡だった男の人生が、犯罪に手を染めることで180度といっていいほど変わってしまう『ブレイキング・バッド』。次はどんな展開が待っているのかとハラハラドキドキすることもあり、極限とも言えるほど追い詰められた人間の心情に考えさせられることもあります。そもそも犯罪に手を染めたのは家族のためであり、その関係も見どころの一つ。数々の賞を受賞した本作は、『LOST』や『24 -TWENTY FOUR-』といった作品にも引けを取らない名作と言えるでしょう。海外ドラマ好きなら、一度は見ておきたい作品です。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ブレイキング・バッド』
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