リアル『ブレイキング・バッド』!? 名門大学生、ウォルター真似て懲役15年

大学生といえば洋の東西を問わず、自由に使えるお金は限られ、多かれ少なかれ経済的な悩みを抱えているのが常。しかし、イギリスの国立名門大学に通う、ある大学生のグループは、バハマ、ジャマイカ、アムステルダムなどでパーティを行い、高級シャンペンで乾杯していたというから驚きだ。残念ながら、彼らの資産は合法に作られたものではなく、なんと! テレビドラマ『ブレイキング・バッド』の主人公さながらに闇の世界で活躍して得られたものだったという。

◆俺は"ウォルター・ホワイト"?

アメリカのケーブルチャンネルAMCによって放送されていた『ブレイキング・バッド』は2013年に放送終了を迎えたが、今もなお、多くのファンに熱く支持される名作である。

このドラマは、アメリカ南西部の田舎町に暮らす真面目な化学教師ウォルターが、自身がガンに侵されたことをきっかけに闇の世界へ足を踏み込むという、実際にもあり得そうなストーリー。しかし、死に行く自分が家族に財産を残せる方法はこれだけだと思って犯罪に手を染めたにもかかわらず、徐々に家族との絆は途切れ、心まで闇に染まっていくという物語だ。

3月21日付のイギリスのガーディアン紙によれば、問題の大学生らはこのドラマさながらに、闇ウェブサイトで総額1億2000万円程度にあたる麻薬を売りさばいていたという。彼らは26歳の男性が中心となった5人組で、大学ではそれぞれ、薬理学、コンピュータ科学(計算機科学)、石油化学エンジニアリング、地質学、マーケティングを学んでいたという。

今回逮捕された仲間のうち一人の携帯電話には、『ブレイキング・バッド』の主人公であるウォルターがフラスコで麻薬を製造しているワンシーンが保存されており、自分たちとウォルターを重ねるのは仲間内でのジョークだったようだ。

◆金の闇に取りつかれ、反省の色なし

裁判官は判決に当たり、「私には3つの義務があります。1つ目はあなた達のような人々から一般の人々を守ること。2つ目はあなた達を罰すること。そして3つ目は、将来、似たような思いで同じような行動を起こそうとする人が現れないよう、抑止することです」と述べた。名門大学で学ぶほど秀でた、将来ある年齢の被告人グループだが、首謀格の男性の15年をはじめとして、それぞれ11年から7年の懲役という、その言葉どおり厳しい判決が下された。

学生らが使用していた闇ウェブサイトは2013年10月にFBIの手によって閉鎖され、その繋がりで学生らは逮捕されたわけだが、学生らは金儲けのことだけを考えており、麻薬を広めたという点では全く反省の色はみられないようだ。イギリスのデイリー・レコード紙によれば、首謀格の男性は「自分たちがやったことに対して、懲役刑を受けるのはなんてことない」「刑務所から出てきた頃には、(決済システムとして使われていた)ビットコインの価値が上昇して、ビリオネアになっているだろう」と語っているという。

◆金儲けがもたらす闇の魅力

名門大学で将来を約束されていた優秀な学生らが、ひと時の物欲や贅沢な暮らしに目がくらんで犯罪に手を染めた今回のケース。

『ブレイキング・バッド』のウォルターが犯罪に手を染めた理由は家族愛だ。ドラマでは、家族愛に溢れた人間が追い詰められた時にどのように変わるのか。そして、経済的な富に欲望が膨らみ、その闇に飲み込まれていく人間の弱さを描き出しているのであるから、遊ぶ金目当てに麻薬を広めるこの学生らと比べられるのは、とんだとばっちりだと言えるだろう。もちろん、最後にはウォルターも「生きていると実感できるからやったのだ......」と告白しているため、非日常の世界というのは一度足を踏み入れたらもう戻れないほど、とてつもない魅力を持っているのだろう。

モノや金が全てでなく、物質に左右されない心の豊かさが幸せな生活をもたらしてくれる、というのは簡単でも、実際にはそんな考え方が一番、難しいと考えさせられる事件である。

ちなみに、『ブレイキング・バッド』の本編で映し出されている通りに薬品を混ぜても麻薬は生成できないように編集されているので、変な考えを起こすことのないように......。(海外ドラマNAVI)

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Photo:『ブレイキング・バッド』
(C)Lewis Jacobs/AMC