世界的にヒットしたTVドラマといえば、米ケーブルテレビ放送局HBOの『ゲーム・オブ・スローンズ』や英BBCの『SHERLOCK/シャーロック』など、英語ベースの作品が連想される。しかし最近では、特にストリーミングサービスの視聴者の間で、イタリアやフランス、ドイツやスペインなど、英語以外の言葉で現地の物語をそのまま紡ぐ作品が支持を集める傾向にある。HBOでは、ヨーロッパ・アジア産の作品の調達も視野に入れているようだ。
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◆世界各地のローカルな逸話が続々と映像化
HBOは昨年10月のカンファレンスで、同社のヨーロッパ支部が製作した複数のオリジナル番組を、アメリカのストリーミングサービスに導入する計画を明らかにした。アジア作品の調達も視野に入れているという。異文化を味わえる作品を希望する視聴者が着実に増えているためだ。
さらに、HBOは同社として初めて、非英語ベースのドラマ『My Brilliant Friend(原題)』の製作に出資する。現在はストリーミングでニッチな人気を集める非英語ドラマだが、大手TV局での成功を占う試金石となるだろう。
他にも『X-ファイル』の脚本家フランク・スポトニッツの起用で国際的な注目を集めたイタリア作品『Medici: Masters of Florence(原題)』が成功を収めているほか、ドイツ製ミステリー『DARK ダーク』は視聴者の9割以上をドイツ国外から集める。
企画の調達先はドイツやイタリアなどヨーロッパ諸国が優勢だが、ブラジルやイスラエルも伸びつつある。また、デンマークとニュージーランドがタッグを組んだ『Straight Forward(原題)』など、多言語の作品も計画が進んでいる。
◆英語圏の人々、ローカルの隠れた魅力に気づく
これまで気づかれていなかっただけで、アメリカ以外にもクリエイティビティに溢れるドラマは多くあった...と振り返るのは米Variety誌の記事だ。
従来も一定の海外作品ファンはいたが、単館系の映画館に足を運ぶ形が主流だった。Screen Daily誌(3月30日)では、こうしたファン層が近年ではTVに流入していると見ている。外国語映画はアメリカでは流行らなかったが、ストリーミングは新しいものに敏感な若者たちも面白さを認めつつあることなどから、映画よりも好調だとしている。
配信側も外国語ドラマ流行の流れを把握しているようだ。同記事ではNetflixの株主宛レターを参照し、「高品質のドラマは言語に関係なく世界中に広まる」とするコメントを伝えている。
◆課題:ローカルかつグローバルな作品づくり
流行の兆しを見せる現地作品だが、課題もある。Variety誌では、国際的に支持される番組づくりができるかが鍵だとしている。例えば『グレイズ・アナトミー』のサンドラ・オーが主演する『Killing Eve(原題)』は、既存のスリラーを女性プロデューサーによる女性主体の番組に作り変え、ターゲット層に響かせた。
また、国際化しつつ、現地の雰囲気を残すことも課題だ。HBOがフランスのスタジオと共同製作した『ヤング・ポープ 美しき異端児』は、セリフの多くを英語化してしまったことから、現地の雰囲気を壊しているとして批判を浴びている。
ジャンルの偏りも気がかりだ。現在では文化の違いを超えやすいという判断からか、ミステリとクライムサスペンスの採用が目立つ。Screen Daily誌では、より幅広く受けるコメディーなども必要ではないかと提案している。
視聴者数を増やしているとはいえ、現時点ではストリーミング配信が主流だ。TV放送数を増やして市民権を得ることも発展の鍵となるだろう。(海外ドラマNAVI)
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