【ネタばれ】スティーヴン・キング原作『ミスター・メルセデス』、シーズン2でついに超常現象導入 キング節の真骨頂

米Audienceで放送中の『ミスター・メルセデス』は、スティーヴン・キングの小説を映像化したミステリースリラー。ホラーで名高い同氏初の本格ミステリーのドラマ化とあり、シーズン1は大きな話題となった。8月22日(水)から放送が始まったシーズン2では、超常現象が登場。意外な路線変更となったが、こちらも大変に好評だ。

【関連記事】スティーヴン・キング×デヴィッド・E・ケリーの最強タッグが贈る戦慄のミステリー『ミスター・メルセデス』

(本記事は『ミスター・メルセデス』のネタバレを含みますでご注意ください)

■凶悪犯は病床に
アルコールに溺れる元刑事のビル(ブレンダン・グリーソン)は、ぶっきらぼうだが愛すべき男。シーズン1では「メルセデス・キラー」を名乗る人物からの挑戦を受け、在職中に解決することができなかったベンツ暴走事件の真相究明に乗り出すことに。歩行者を無差別に殺害した犯人が根暗な青年ブラディ(ハリー・トレッダウェイ)であることを突き止めた上、芸術祭のオープニングで華やぐ中心街をブラディの計画する新たな爆破事件から救った。

シーズン2でビルは、ブラディの病室に足繁く通っている。以前の爆破事件の解決の際、ビルの相棒ホリー(ジャスティン・ルーペ)の強力な一撃がクリティカル・ヒット。事件は防がれたものの、ブラディは昏睡状態に陥っていた。1年以上眠り続ける彼に対し、神経外科医のフェリックス(ジャック・ヒューストン)は開発中の血清を投与する。これが引き金となり、他人の意識下に侵入する能力がブラディに発現。病床につきながらも人々を操り新たな犯罪を目論むブラディと、ビルは再び対決を迫られる。

■掟破りの超常現象
スティーヴン・キング原作の純粋なミステリーとして注目を集めたシーズン1に対し、今作は冒頭からブラディに念能力が開花。これにより作品のジャンルが変化したように思える、と米Hollywood Reporteは綴る。ブラディの恐ろしさの源は、彼が現実味を帯びた残虐な人間だった点に尽きるが、それが失われてしまったと惜しむ。

ただし路線変更の後も、ドラマ全般としては非常に高い評価を維持している。全米批評家サイトRotten Tomatoesでは、批評家と視聴者双方の評価スコアが100%を記録。人気の理由は監督の手腕にあるようだ。米Pittsburgh Post-Gazatteは、いまだ昏睡から醒めないブラディの精神世界を効果的に表現したジャック・ベンダー監督の手腕を讃える。『LOST』の製作総指揮や、『ゲーム・オブ・スローンズ』のエピソード監督として知られるベンダーは、昨シーズンにも登場した地下のアジトをブラディの意識の世界として描写。いくつものコンピュータ画面と、これまでに殺した人々の墓に囲まれたブラディの姿は、天才かつ異常者としての彼を的確に表現している。超常現象をベースにしたことは綱渡りだった、と振り返るベンダー監督だが、思い切った変更でおおむねファンを喜ばせる結果となった。

■キャラクターも魅力たっぷり
謎に力点を置くあまり人物描写がおざなりになるミステリーも多いが、本作はキャラクター劇としても秀逸。小説を超えた魅力を振りまくのは、ビルの相棒ホリーを演じるジャスティン。原作以上に愉快で可愛らしく、ふとした拍子に悲しみの表情を浮かべるという好感できるキャラクターで、画面に華を添える。ビリーや他のキャラクターとともに活躍する姿は、今シーズンで最も楽しめる点の一つだ、とHollywood Reporterは賞賛する。

Pittsburgh Post-Gazatteは、ブラディの身の毛もよだつ思考に注目。昨シーズンに盗んだメルセデスベンツで歩行者をはねて殺害した彼は、私が生き残ったからこそ彼らは死んだ、と独り呟く。よって彼らは稀に見る大きな影響を世界に残したと言えるだろう、という論理の帰結には、常軌を逸した正義感が漂う。強烈なキャラクターで視聴者の人気を博すブラディ。この素晴らしいキャラクターにこれからもフォーカスしたいとベンダー監督は語っている。

元刑事が仲間たちと病床の悪人ブラディに挑む『ミスター・メルセデス』シーズン2は、米Audienceで放送中。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ミスター・メルセデス』
© 2018 Sony Pictures Television Inc. All Rights Reserved.