アメリカドラマ界にとって年に一度の祭典、第70回エミー賞授賞式が9月17日(月)に行われる(現地時間)。各カテゴリーで魅力的な作品・俳優などが候補に挙がる中、ドラマ・シリーズ、コメディ・シリーズ、そしてリミテッド・シリーズ/TVムービー部門の主要部門について、現地メディアの予想をまとめ、受賞の行方を様々な視点から追ってみよう。昨日の【ドラマ・シリーズ部門】に続き、2回目の本日は注目の【コメディ・シリーズ部門】をご紹介。
■作品賞
『アトランタ』...対抗
『バリー』
『Black-ish(原題)』
『ラリーのミッドライフ★クライシス』
『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』...大穴
『シリコンバレー』
『マーベラス・ミセス・メイゼル』...本命
『アンブレイカブル・キミー・シュミット』
コメディ・シリーズ部門は『アトランタ』、『マーベラス・ミセス・メイゼル』のどちらかが栄冠を勝ち取りそうだ。昨年までこのカテゴリーは『Veep/ヴィープ』の独壇場だったが、同作が退いたことで、昨年の対抗馬だった『アトランタ』と、新作の『マーベラス〜』が台頭。現段階で、各メディアの予想は完全に二分されている。
『マーベラス〜』は、今年のゴールデン・グローブ賞でミュージカル/コメディ部門の作品賞&女優賞に輝いており、『モダン・ファミリー』や『Veep』に続いてコメディ・シリーズのトップの座に就くことが期待されている。一方で、エミー賞の作品賞にノミネートされた作品は、各カテゴリーに1名ずつノミネートされるのが標準的だが、『アトランタ』は監督賞と脚本賞に二人ずつノミネートされており、これは『Veep』と同じ傾向にある。
■主演男優賞
ドナルド・グローヴァー『アトランタ』...本命
ビル・ヘイダー『バリー』...対抗
アンソニー・アンダーソン『Black-ish』
ラリー・デヴィッド『ラリーのミッドライフ★クライシス』
ウィリアム・H・メイシー『シェイムレス 俺たちに恥はない』
テッド・ダンソン『グッド・プレイス』...大穴
作品賞の流れから、主演男優賞はドナルド・グローヴァーが単独リードしている。昨年、『アトランタ』は作品賞を逃してしまったが、ドナルドは個人で主演男優賞と監督賞の2冠に輝いていた。トロフィーは今年もドナルドの手に渡る可能性が高そうだ。
間違いなく最有力候補はドナルドだが、彼の次に名前が挙げられているのは、『Veep』を製作してきた米HBOの新作『バリー』のビル・ヘイダー。ノミネートされるのにふさわしいコメディアンとして、しっかり視聴者の心を掴んでおり、今年のゴールデン・グローブ賞ミュージカル/コメディ部門男優賞にもノミネートされていた。
しかし、やはりこのゴールデン・グローブ賞を受賞したのもドナルドであり、現段階で彼の右に出る者はいないようだ。
■主演女優賞
パメラ・アドロン『Better Things(原題)』
トレイシー・エリス・ロス『Black-ish』...大穴
リリー・トムリン『グレイス&フランキー』
イッサ・レイ『インセキュア』
アリソン・ジャネイ『Mom(原題)』...対抗
レイチェル・ブロズナハン『マーベラス・ミセス・メイゼル』...本命
主演男優賞がドナルド1択なら、女優賞はレイチェル・ブロズナハンの存在感が群を抜いている。平穏な生活から一転、コメディアンとして人生を歩むことになったメイゼル夫人を陽気に、華麗に演じきっている。このような役は博打的な要素があり、ドラマを成功させるか、壊してしまうかに分かれるが、レイチェルは見事に前者となった。ほとんどのメディアが彼女の受賞を予想しており、Gold Derbyの投票ランキングでは23人/24人中の専門家が彼女を支持している。
レイチェルに一番近い競争者として挙げられているのは、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』で本年度のアカデミー賞助演女優賞に輝いたアリソン・ジャネイ。エミー賞では、『ザ・ホワイトハウス』で助演女優賞と主演女優賞を2回ずつ、『Mom』で助演女優賞を2回、計6回の受賞歴がある。
このカテゴリーは、昨年まで6年連続で『Veep』のジュリア・ルイス=ドレイファスが手にしていたため、『Veep』の放送がなかった今シーズンは彼女の不在により、7年ぶりに新たなコメディクイーンが誕生することになる。
■助演男優賞
ブライアン・タイリー・ヘンリー『アトランタ』
ヘンリー・ウィンクラー『バリー』...対抗
ルーイ・アンダーソン『Baskets(原題)』
キーナン・トンプソン『サタデー・ナイト・ライブ』
アレック・ボールドウィン『サタデー・ナイト・ライブ』
トニー・シャルーブ『マーベラス・ミセス・メイゼル』...本命
タイタス・バージェス『アンブレイカブル・キミー・シュミット』...大穴
コメディ・シリーズの主演賞は男女ともに一人の候補者が受賞を確実視されているが、助演男優賞はより競争が激しそうだ。各メディアの予想で注目されているのが、ヘンリー・ウィンクラーとトニー・シャルーブ。Gold Derbyの専門家投票では17人/23人中がヘンリーに票を入れており、『バリー』の中で最高の演者だと絶賛されている。
しかし、勢いのある『マーベラス~』からトニーの名前が呼ばれることも現実的。タイトルロールを演じた『名探偵モンク』では2度のエミー賞受賞経験がある。さらに、今年はトニー賞でミュージカル部門主演男優賞(「迷子の警察音楽隊(The Band"s Visit)」)を獲得。トニーが昨年のWinnerであるアレック・ボールドウィンに打ち勝つのではないかと予想するメディアは多い。
■助演女優賞
ザジー・ビーツ『アトランタ』
ベティ・ギルピン『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』...大穴
ローリー・メトカーフ『Roseanne(原題)』
エイディ・ブライアント『サタデー・ナイト・ライブ』
レスリー・ジョーンズ『サタデー・ナイト・ライブ』
ケイト・マッキノン『サタデー・ナイト・ライブ』...本命
アレックス・ボースタイン『マーベラス・ミセス・メイゼル』...対抗
ミーガン・ムラリー『ウィル&グレイス』
コメディ・シリーズ部門助演女優賞では、ケイト・マッキノンが1歩リード。2016年から2年連続で受賞しており、今年ハットトリックを決めることが期待されている。そんな彼女の最大の敵となりそうなのが、『マーベラス〜』のアレックス・ボースタイン。面白さとチャーミングさを兼ね備えたスージーという役は視聴者からとても愛されており、このドラマの成功の重要な要素だと評価されている。
また、『GLOW』では演技賞にただ一人ノミネートされたベティ・ギルピンを「脅威」と表現するメディアや、『Roseanne』はキャンセルされてしまったがベテラン女優ローリー・メトカーフの演技が圧巻だという声もあり、選考が最も難しいカテゴリーの一つになりそうだ。
栄冠を手にするのはどの作品、誰だろうか? 明日は現地メディア予想【リミテッド・シリーズ/TVムービー部門編】をご紹介。授賞式は9月17日(月)にロサンゼルスのマイクロソフトシアターにて開催され、日本では FOXチャンネルにて9月18日(火)午前9:00より独占生中継する。海外ドラマNAVIでも速報をお届けするのでお楽しみに!
*今回参考にした米メディアは以下の通り。
(Cheat Sheet, Harper"s BAZAAR, Deadline, The Hollywood Reporter, IndieWire, Variety, Gold Derby, Rush Hour Daily, Awards Watch, Digital Trends)
(海外ドラマNAVI)
Photo:『アトランタ』(c)2016 FX Productions, LLC. All rights reserved.