BBC新ドラマ『Press』 知ってはいけない証拠映像を追った新聞記者、行き着く先に...

英BBC Oneで9月6日(木)より放送が始まった『Press(原題)』は、新聞記者と編集部のドラマチックな日々を追う、6話構成のミニシリーズ。大手新聞社ヘラルドは、デジタル化の波に呑まれそうになるのと同時に、過去のスキャンダルにも苦しめられていた。そんな中、仕事中毒の記者が、隠蔽されたひき逃げ事件の証拠映像に気づいてしまい...。大胆で魅力的なストーリーと、業界人をも唸らせるメディア界のディテールがユニークな作品。

■下っ端記者、巨悪の尻尾を掴んでしまう

ロンドンに社屋を構えるヘラルド社では、ワーカホリック気味の無名記者ホリー(シャーロット・ライリー)が今日も忙しく働いている。彼女が気だるそうに見えるのは、問題児の右翼系コラムニストに社内を案内するという、あまり有難くない任務を仰せつかったからか。

その頃、同じ街区に入居するタブロイド紙のザ・ポストでは、新人記者のエド(パーパ・ エシエデュ)がこれまた不運な仕事を割り当てられる。自殺したフットボール選手の両親宅を訪ね、コメントを引き出すのが今日の任務。業界で「デス・ノック」と言われるこの取材は、言わずもがな煙たがられる役回り。

無関係に思える二つの新聞社だが、やがてある事件を通じてストーリーが交差することに。パトカーによる女性のひき逃げ事件を追うホリーは、現場近くの店の監視カメラの映像が、エドの働くザ・ポスト紙にすでに提供されていたことを知る。ザ・ポストの編集者ダンカン(ベン・チャップリン)を訪ねて証拠映像の横流しを交渉するが、そこへメディア界の大物ジョージ(デヴィッド・スーシェ)が立ちはだかり、なぜかホリーの情報収拾を妨げる。やがてMI5の関与が明らかになり、事態は思わぬ方向へ動き出す。

■大手新聞社の編集室をありのままに描写

24時間眠らないメディアの編集部を、本作は克明に描写している。現実さながらの見事な設定に感心するのは英Telegraph。同紙は劇中のヘラルド紙を「うっかり」実在の英Guardian紙と綴りかけ、"失礼"と訂正する茶目っ気を見せる。実在の新聞社をモデルとしていることは、もはや公然の秘密といった態だ。

同様に英Timesも、劇中のディテールへのこだわりを賞賛。一例を挙げると、意外にもタブロイド紙の記者のほうが、高級紙のジャーナリストよりもきちんとしたスーツに身を包んでいるといった点。ドラマでもこれを忠実に再現しており、実際にタブロイド紙と高級紙の両方に勤務したという同紙記者は感心しきり。本作脚本家のマイク・バートレットと出演者たちは、イギリスに実在するメディアであるThe Sun、Daily Mirror、Guardianを実際に見学したとも言われており、熱の入れようが伝わってくるようだ。輪転機のカットでは上質紙に刷っているように見えるなど、小さなミスもあると指摘する同メディアだが、大筋で実務経験者を唸らせるほどの出来栄えは流石だと言えるだろう。

■心奪われるようなエンターテイメント作品

現実重視のリアルな設定とは異なり、ストーリーは娯楽性を重視したフィクションになっている。Telegraphは、心奪われるようなエンターテイメント作品だと評価。娯楽性の高いフィクションは、『女医フォスター』で業界にその名を轟かせた脚本家バートレットの得意分野だ。本作でも彼によるプロットのひねりがストーリーを意外な方向に導くほか、いきいきとしたテンポのよい会話が視聴者を飽きさせない。

Timesも、シリーズの今後の展開に期待を寄せる。冒頭の段階では、二人の記者ホリーとエドの関連はまだまだ希薄。しかし脚本家のバートレットの実力を鑑みれば、二人のストーリーが絡み合うほどに面白いドラマになるだろうと述べている。

メディア業界をリアルに描いた『Press』は、BBC Oneで放送中。同じ脚本家による、夫に不倫された妻の復讐劇『女医フォスター』は、日本ではHuluでシーズン1を配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:シャーロット・ライリー
(C) JMVM/FAMOUS