『刑事ジョン・ルーサー』シーズン5 容赦ない残虐さ、気になるアリスとの関係

2010年から英BBC Oneで放送され、ハードボイルドでサイコな世界観が恐怖を醸し出す『刑事ジョン・ルーサー』は、英国アカデミー賞(BAFTA)やゴールデン・グローブ賞、エミー賞など数々の賞にノミネートされてきた人気のスリラーだ。2019年の元日から4夜連続で、最新作となるシーズン5が本国で放送された。

孤高の警部、3年越しに復帰

ガタがきている愛車のボルボをなだめながら犯行現場へと急ぐのは、本作の主役であるジョン・ルーサー警部(イドリス・エルバ)。灰色のコートを身に纏った彼の新エピソードは2015年12月以来、実に3年ぶりとなるが、一匹狼の勇姿は健在。このシーズンで初登場するサポート役は巡査部長のキャサリン・ハリデイ(ウンミ・モサク)。ジョンを尊敬しながらも規則にうるさい彼女は、さしずめ暴走しがちな警部のお守役といったところか。

現場に到着したジョンが警察の規制線を潜ると、その先にあったのは無残なバラバラ死体。ロンドン名物である2階建てバスの上部デッキにいた被害者を、何者かが襲撃されたものと思われた。監視カメラには、ピエロの仮面を被り凶刃を振るうサイコ・キラーの姿が......。ほかにもギャングの息子の失踪、殺意ある夫に怯える医師、かつての容疑者で今はジョンの友人であるアリス(ルース・ウィルソン)の再登場など、複数のストーリーラインが深みのある世界を見せてくれる、充実の最新シーズンだ。

その残忍さ、ハンニバル級

クリスマスシーズンの祝賀ムードは終わり、と宣言する英Telegraph紙は、年始早々に殺伐としたムードを届けた本作の復帰を歓迎。頭部に突きつけられた銃口、首に巻かれた爆弾、そして生々しい殺害シーンといった刺激の強い描写が持ち味の本作は、『羊たちの沈黙』『ハンニバル』などに登場する猟奇殺人犯、ハンニバル・レクターの影響を明らかに受けている、と分析する。さらには現在服役中の実在の連続レイプ魔・殺人魔に劇中で言及するといった趣向により、架空のストーリーとは思えないほどの緊張感を放っている。

作品が醸し出す恐怖を前に降伏寸前なのは英Times紙。シーズン3ではマスクを被った殺人鬼がベッドの下から音もなく這い出てきて若い女性を襲うシーンがあるが、記者はその描写がしばらく脳裏を離れず、おかげで夜のリラックスタイムを何ヵ月もフイにした、と述べる。そんな残虐性は新シーズンでさらに強まり、犠牲者が目と舌を切り取られたり、電動工具で身体中に釘を打ち込まれたりしている。この記者は、前述のバスの殺人シーンのせいで二度とバスの2階に乗れなくなった、とこぼす。

バイオレンスに深みを加えるアリス

本作に登場する数多いキャラクターの中でも見逃せない存在なのがアリス。かつてはジョンが連続殺人事件の容疑者として厳しく接した人物だが、やがて強固な友情で結ばれるようになり、さらにはロマンチックなムードにまで発展していた。このジョンとアリスの関係はまるで『羊たちの沈黙』のハンニバルとFBI捜査官のクラリスのようだ、とTelegraph紙。オーバーな演技と気の利いたセリフが魅力の彼女は、ともすれば陰惨なムードに沈みかねない本作に彩りを加えてくれる貴重なキャラクターだ。シーズンを重ねるごとに暴力的な描写に拍車がかかっているが、アリスの存在があるからこそ単に刺激を求めるだけの作品にならずに済んでいる、とTimes紙も彼女を高く評価している。(海外ドラマNAVI)

Photo:『刑事ジョン・ルーサー』
(C) 2019 BBC