自身の出生の秘密に気づいた少女が、その全貌を解き明かすために一路ロサンゼルスへ。好奇心から始まった調査の糸は、ハリウッドを震撼させたスキャンダルに繋がってゆき----。1960年代の実話を題材にしたミステリー『I Am the Night(原題)』は、米TNTで1月下旬から放送中。
♦︎16歳のファウナが迷い込む、映画界のタブー
ネバダ州・リノの街で育ったファウナ(インディア・アイズリー)は、裕福な白人夫妻が黒人のカジノ客に預けた養子だと聞かされてきた。しかし16歳のある日、血筋の矛盾に気づいてしまう。過去の真実に強い興味を覚えた彼女は家を飛び出し、秘密の鍵を握るロサンゼルスへ。冒険のパートナーとなるのは、途中で出会った記者(クリス・パイン)。とある事件を追う彼は、巨大な秘密に深入りしすぎたために身を滅ぼしつつあった。それぞれが追うミステリーの糸は、やがてロサンゼルスの医師の黒い過去へと二人を導く。ジョージと呼ばれるその産婦人科医(ジェファーソン・メイズ)は、ハリウッドが隠す大規模なスキャンダルと未解決の殺人事件「ブラック・ダリア事件」への関与が囁かれていた。
本作は実話にヒントを得た、全6話のダーク・ミステリー。実在のファウナは一昨年の9月に亡くなっているが、製作陣は彼女の生前にストーリーへの助言を得ることに成功。また、ファウナの娘たちがドラマ関連のポッドキャストに出演している。医師のモデルとなった男性は1999年に亡くなっているが、ストーリー中に登場する殺人事件への関与が警察より追求されていた。現実の事件を強く反映したシリーズだ。
♦︎アクション大作の監督と俳優、異分野での再会
『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンス監督とクリス・パインが、ミステリーという新境地で再度のタッグを組んだ本作。ジャンルや製作規模の違いはあれど、前作と同じく法外に楽しい作品になっている、と米Mercury Newsは評価。記者役のクリスは素晴らしいパフォーマンスを見せており、エンジン全開で役に没入。やんちゃな問題児がそのまま大人になったような記者は、鉄砲玉のようなエネルギーを感じさせる。
米Varietyは、ジェンキンス監督とクリスが再び引き寄せられたのは自然な流れだと見る。ワイルドな中にも清潔感のある印象のクリスは、その整った目鼻立ちが人気の俳優。しかし単にハンサムな男に終わらせず、ジェンキンス監督は役者としての旨みを丸ごと引き出している。頭脳明晰で人柄も魅力的だが、すぐ得意気になるなど欠点も目立つ記者は、誰もが親しみを感じられるキャラクターだ。ファウナやジョージ医師などとは違い、クリス演じる記者は実在の人物ではない。しかしクリスの個性際立つ演技のおかげで、魅力ある人物像に仕上がっている。
♦︎古き時代のLAを感じるミステリー
脚本を担当するのは、監督の夫であるサム・シェリダン。もちろんストーリーは実際の事件をなぞるだけに終わらず、ドラマとしての脚色を追加。事件が予想外の方向へ動き出したり、それまでの前提が覆ったりと、全6話の時間枠いっぱいまで魅力的なひねりを詰め込んでいる。稲妻に打たれるような衝撃とまでは行かないものの、推進力と興奮を感じる瞬間が何度もある、とVarietyは述べている。
いつまでも不吉な感覚が胸に残る、ムードある作品だとMercury Newsは評価。1960年代ロサンゼルスの雰囲気を出すため、撮影にデジタルではなく、コダックの35mmフィルムを使うこだわりようだ。ヴィンテージカーや豪華なアパートなどの並ぶ街並みも相まって、画面いっぱいに広がる当時の街の雰囲気が視聴者を圧倒する。
『I Am the Night』は、米TNTで放送中。ジェンキンス監督とクリスのチームワークを堪能したい方は、2017年のアクション・アドベンチャー『ワンダーウーマン』がNetflixで配信中。(海外ドラマNAVI)
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インディア・アイズリーとクリス・パイン
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