Netflix『After Life/アフター・ライフ』笑いのなかに隠された人生への応援歌

イギリス英語が小気味よいコメディドラマが登場した。3月上旬より独占配信中のNetflixオリジナルシリーズ『After Life/アフター・ライフ』は、苦笑、爆笑、同情、そして、ちょっと感動させてくれる秀作となっている。製作指揮、主演を務めるのは英国コメディアン、リッキー・ジャーヴェイス。八重歯がのぞく笑顔が可愛らしい印象を与えるリッキーだが、ゴールデン・グローブ賞の司会などで有名な毒舌は健在で、彼が放つダークなジョークと、ドラマのあちこちにちりばめられた心に響くセリフがキラリと光る作品だ。

◆妻に先立たれた夫に同情無用 愛犬さえいればいい

地元紙の編集部員トニー(リッキー)は、愛妻リサに先立たれ、生きる意味を見失っていた。きちんとした食事はもちろんしない。台所には汚れた皿が積み重なり、冷蔵庫には飲み物が入っているだけ。買物に出かけても購入するのは愛犬サンディーのためのドッグフード。もしもサンディーがドッグフードの缶を開けられるようになったら、この世に自分がいる必要がなくなるだろうと思っている毎日だ。

仕事に行ってもトニーは同僚に悪態をつき放題。リサを失った悲しみのために彼が変わってしまったと皆知っているため優しくしていたが、そろそろ限界のようだ。でもトニーは気にしない。彼は、自分の思うまま、誰にも気をつかわずやりたい放題に生きることで、超能力を手に入れたように感じていた。しかしトニーは、ある事件をきっかけに次第に周りに心を開いていくのだった。

◆泣いて、怒って、笑って...誰の人生にもある浮き沈み

地元イギリスのメディアであるTelegraphは、本作には可哀そうで見るに堪えない場面があると書く。しかし、リッキーの本気の演技が最も光るのはそのような場面であるとし、笑いのなかに、生きていくことを情熱的に促すメッセージを持つドラマだと評している。

地域の一風変わった人たちが、一度新聞に載りたいという思いだけでこぞって連絡をよこしてくるトニーの職場。ジャーナリズムとはかけ離れたナンセンスなトピックだらけだが、そんな地域市民の人生を通しても同じく、生きていくということへのポジティブなメッセージが見え隠れしていることがわかる。

またFinancial Timesは、厳しさと過度な甘さが混在するドラマと評し、そのぎこちなさが笑いにつながるというレビューを掲載している。『After Life』は、悲しさと笑いの紙一枚の境界を行ったり来たりする。厳しいだけでなく、そして甘いだけでもない人生と、その貴重さを表現しようとするリッキーの試みなのかもしれない。

『After Life/アフター・ライフ』シーズン1は6話完結。1話約30分なので、笑ったり、呆れたり、ときにはほろりときたりしながら楽しんでほしい。(海外ドラマNAVI)

Photo:

Netflixオリジナルシリーズ『After Life/アフター・ライフ』は独占配信中。