1990年代、紛争によるキナ臭い空気に包まれていた北アイルランド。そんな政治情勢はどこ吹く風、マイペースかつ型破りな女子高生たちの日常を綴った『デリー・ガールズ ~アイルランド青春物語~』シーズン2が英Channel 4で3月上旬から放送中だ。
♦︎反逆児たちのカトリック系スクールライフ
16歳のエリン(シアーシャ=モニカ・ ジャクソン)は、アイルランド北西部のデリーに住む女子高校生。新学期の朝だというのに爆弾発見のニュースが流れるなど、紛争下の町は落ち着かない。そんな状況にもめげず、エリンと、優しいがどこかズレているクレア(ニコラ・コーグラン)、静かなトラブルメーカーのオーラ(ルイーザ・ハーランド)の3人は、ルール無用の自分たちらしい高校生活を送ろうと互いに誓う。制服のブレザーを捨てデニムを羽織る約束が、裏切りにより早速ご破算になったことで一悶着。スクールバスで登校初日に事件を起こしたミシェル(ジェイミー=リー・オドネル)、女子校に通う唯一の男子生徒で行くべきトイレがないジェームズ(ディラン・ルウェリン)とともに、シーズン1では問題だらけの高校生活が笑いを巻き起こした。
新シーズンで彼女たちは、1泊2日の研修旅行に参加。生徒間の絆を深めるのが目的だが、主催は何かと良い噂のないピーター先生(ピーター・チャンピオン)。女性と駆け落ちし、捨てられ、そして再び聖職者の地位にしれっと戻った彼は、エリンたちの不信の源。さらにはカトリック系とプロテスタント系スクールの交流イベントだったこの研修旅行で、両宗派の間にわだかまりが起こり...。
♦︎ふつうの高校生たちが生み出す、ナチュラルな笑い
「彼女たちが街に戻ってきた!」と、Guardian紙は喜びをストレートに表現。人気の高さから、シーズン1の第1話放送直後には新シリーズ製作がすでに決定していた。並外れて愉快で、ときおり大いに感動させられる作品、と同紙はシリーズを絶賛している。研修旅行中、宗派の違いを超えるために共通点を挙げるよう促された生徒たちは、「プロテスタントはABBAなんて聴かない」「プロテスタントはトースターを食器棚にしまいたがる」といったピント外れの答えを続々発表。まったく狙っている気配のない、ナチュラルなボケで視聴者の笑いのスイッチをくすぐる。
本作『デリー・ガールズ』はこうしたユーモアに加え、青春真っただ中の不安、そして約25年前の世界へのノスタルジーなど、様々な要素をミックス。キラキラと輝くカクテルのよう、とTelegraph紙は表現している。女子校に通うエリンたちの目は、カトリック側の男子生徒に釘付け。少し近づいただけで「気があるのか」と軽口を交わすなど、フレッシュなやり取りが楽しい。外部の生徒の登場によって、高校生活のエネルギーに満ちた作品に、さらに勢いが加わっている。
♦︎題材に深入りしないスタンスで成功
前シーズンで確立した『デリー・ガールズ』のマジックが今もそのまま継承されている、とGuardian紙は喜ぶ。90年代の紛争下という設定だが、時代描写を極めてさり気なくこなしたことがコメディ作品としてプラスに働いた。さらに主人公たちも、どこにでもいるような平凡な高校生たち。橋に爆弾が仕掛けられるなど不安定な情勢のなか、ありふれた高校生活の描写が安心感を与えてくれる。若者の毎日を生き生きと写し取った作品であり、疑うことを知らず純真、そして無鉄砲で情熱的な生徒たちの物語だ、と同紙。
暗い要素を極力排除したストーリー作りに、Telegraph紙も好感。プロテスタントとの相違を挙げるシーンでは歴史的背景への言及もあるものの、クリエイターのリサ・マギーによるハイペースで笑いに満ちた場面作りによって不思議なほどライトなトーンが実現した。エリン役のシアーシャなど、生徒役キャストのチャーミングな演技も効いている、と同紙はキャストの技量も高く評価している。
批評家絶賛のコメディ『デリー・ガールズ ~アイルランド青春物語~』シーズン2は、英Channel 4で放送中。シーズン1は日本からもNetflixで視聴可能。(海外ドラマNAVI)
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シアーシャ=モニカ・ジャクソン
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