『ビッグ・リトル・ライズ』シーズン2 事実を丹念に解き明かす「カーテンコール」

もともと1シーズン限りのリミテッドシリーズとして製作され、ゴールデン・グローブ賞やエミー賞を総ナメにした人気ドラマ『ビッグ・リトル・ライズ』に2年ぶりの新章、シーズン2が登場した。前シーズンで一旦は完結したはずの殺人事件だったが、事件に関わりを持った母親5人組の胸中は今も晴れず...。米HBOで6月9日から放送されている。

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この小学校、ドロドロしてます

勝気な性格の母親マデリン(リース・ウィザースプーン)は娘の入学式当日、街に越してきたばかりのシングルマザーのジェーン(シェイリーン・ウッドリー)と出会い、すぐに友達同士に。一方、ジェーンの息子に自分の子どもがいじめられたとしてPTAのボス格レナータ(ローラ・ダーン)と揉め、そこに割って入ったマデリンとレナータが犬猿の仲になってしまう。そんなドロドロした人間関係の小学校主催のパーティの夜、死亡事件が発生。警察が殺人を視野に捜査を進めると、父母たちは、嫉妬と侮蔑にまみれた他の親への本音を取調室で吐露し始める...。

シーズン2では、マデリンたち5人の母親グループが隠す事件の秘密がキーポイントに。シーズン1で解明された謎の全貌をベースとして、パーティの夜に関わりを持った者たちの胸中に光を当てる。

シーズン2は続編というよりもカーテンコールのように感じられる、とは米New York Times紙。前シーズンではストーリーの核となる事件だけでなく、浮気や性暴力などもテーマに勢いのあるシナリオが展開した。今作では驚くような新展開は控えめで、すでに起きた事象の後を追い、丹念に事実を解き明かす構成となっている。『ビッグ・リトル・ライズ(ささやかで大きな嘘)』から『ビッグ・リトル・トゥルース(ささやかで大きな真実)』に進化を遂げた、と同紙は表現する。

キャラクターたちは前作から引き継いだ秘密をまだ隠し持っているものの、それがシーズン2のスリルの源でないことは明らか、と米Variety誌。前作の事件の余波を描きつつ、複雑に絡まり合ったキャラクター同士の感情の糸を解きほぐすことが主題になっている。恥辱と怒りと哀しみとが、あらゆるキャラクターに迫り来る。

事件後の母親たちの心情に注目

シーズン更新とともに、監督がジャン=マルク・ヴァレからアンドレア・アーノルドへ交代。大英帝国勲章を受章しているイギリス出身監督の58歳の代表作は、15歳の少女の揺れ動く心情を繊細に描いた映画『フィッシュ・タンク』で、英国アカデミー賞の英国作品賞を受賞した。本作でもママ友同士の親密さを巧みに演出しており、あらゆる瞬間、あらゆる演技が目に楽しい、とNew York Times紙は賞賛する。

脚本はシーズン1から続投となるデヴィッド・E・ケリー。社会批判をしようとしてキャラクターに不自然な演技をさせてしまっているが、各キャラクターが胸に秘めている欲望を抑えたり露呈したりする様子は素晴らしい仕上がり、とVariety誌。殺人事件の秘密が影を落とす5人の母親の心情に注目したい新シーズンだ。

『ビッグ・リトル・ライズ』シーズン2は、米HBOで放送中。シーズン1はAmazon Prime Videoで配信中。(海外ドラマNAVI)

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『ビッグ・リトル・ライズ』シーズン2
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