18年前の悲劇から現代の我々が学べることとは?『倒壊する巨塔 アルカイダと「9.11」への道』トークイベント

あの悲劇はなぜ防げなかったのか? 2001年に起きたアメリカ同時多発テロ「9.11」を題材に、それが起きた経緯を丹念な取材に基づいてリアルに描いた社会派作品『倒壊する巨塔 アルカイダと「9.11」への道』。ブルーレイ&DVDが9月11日(水)にリリースされるのに合わせて、10日(火)に都内でトーク付試写会が行われ、CIAとFBIに詳しいREINAと、映画評論家の松崎健夫が熱いトークを繰り広げた。

ピュリッツァー賞受賞のノンフィクション小説の初映像化で、実力派俳優たちが共演した本作は、実際の映像を交えながらもエンターテイメントに昇華した骨太なサスペンスドラマ。テロに至るまでの経緯と、FBIとCIAとの間にある確執を重層的に描き出すことで、これまでの「9.11」を題材にした作品群とは一線を画す。

すべては愛国心から

CIAとFBIの内定を取り、インターポール(国際刑事警察機構)のテロ対策部でインターンとして勤務した経験のあるREINAは、当時のFBIとCIAが「まだ非常に若い組織だったため、他の組織と連携を取り合ったりするよりも自分たちの基盤を築くのが先だった」と指摘。その連携不足が9.11へと繋がってしまうのだが、彼らはやり方こそ違えど、「国を守りたいという強い思いは同じ」だからこそ、決して高給がもらえるわけではない職務に励んでいたそう。

秘密裏に動くCIAは心理学も用いながら人から情報を集めるものの捜査をするわけではなく、片やFBIは表立って捜査をするという風にまったく異なる組織。本作ではさらにNSC(アメリカ国家安全保障会議)なども登場するが、それぞれの組織は「9.11」まで繋がりはなかったという。しかし、あの悲劇を受けて過程を見直し、徹底的に研究して改善したため、以降は一度もアメリカ国内で大きなテロ事件は起きていない。

日常生活にも通じるヒント

本作で描かれている「情報をどのように扱うか、それを共有するか否かによって起きるリスクについて考えることは、会社などでも応用できるのでは」と松崎が提案すると、REINAも「キャラクターになりきって"私だったらどうするだろう"と考えることによって、自分の問題解決能力やコミュニケーション能力を見直すことはできると思う」と賛同。そして「作品は社会を映し出す鏡」であることから、本作を見ることが多角的な意味で現代を見直すきっかけになるという話に発展。「メディアからの情報をそのまま受け入れて、何が正しくて何が正しくないのかを考えなくなる時代になってきたが、一歩下がって、これって本当に合っているのかな?という危機感は持っていた方がいい」とREINAが言うと、松崎も「利便性を得るということは何かを捨てることだと仮定すると、我々は便利な情報を得ることによって、本来知るべきことは知らないんじゃないかということも考えないといけない」と警鐘を鳴らした。

最後、本作について「スケールの大きい話なので客観的に見てしまいそうだが、自分の人生についても考えるきっかけになると思うので、ぜひそういう観点で観ていただきたい」とREINAがメッセージを寄せている。

「誰も悪くない」(REINA)のに愛国心が皮肉にもアメリカ史上最悪のテロを招いてしまう『倒壊する巨塔 アルカイダと「9.11」への道』は、ブルーレイ&DVDリリース中。(海外ドラマNAVI)

Photo:

『倒壊する巨塔 アルカイダと「9.11」への道』トークイベントの松崎健夫とREINA