マット・リーヴスに電話インタビュー!Amazon『ザ・ループ』と『猿の惑星』『フェリシティの青春』の共通点とは

SFアートで知られるスウェーデン出身のシモン・ストーレンハーグの同名イラスト集を映像化したAmazon Original『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』。本作で製作総指揮を担うのは、青春ドラマ『フェリシティの青春』のプロデュースから、SF映画『猿の惑星』のリブート版シリーズ、『クローバーフィールド/HAKAISHA』などを手掛けたことで知られるマット・リーヴス。2021年公開予定のバットマン映画最新作『The Batman(原題)』の監督を務めるなど幅広い作品作りで知られるリーヴス監督は本日4月27日(月)に54歳の誕生日を迎える。そんな彼に、海外ドラマNAVI編集部が電話インタビューを実施したのでお届けしよう。

Amazon Original『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』はストーレンハーグが2014年に発表した同名のイラスト集が原作の、全8話から成るSFヒューマンドラマ。スウェーデン出身のストーレンハーグのイラストは日常の中に突如としてSFの世界が入り込んだようなノスタルジックな作風が特徴だが、ドラマ版の舞台はアメリカ・オハイオ州の片田舎。宇宙の謎を解き明かすため村に建設された粒子加速装置"ループ"の施設。そこでは10年にわたって実験が行われていた。その影響は、時間、空間、認知、感情、記憶といった様々な概念に大きな変化をもたらし、不思議な現象が次々に起こっていた――。

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――本作を製作することになった経緯を教えていただけますか?

僕が製作総指揮で、脚本家がナサニエル・ハルパーン、原案のイラストを描いたのがシモン・ストーレンハーグ、そして第一話の監督を務めたのはマーク・ロマネクだ。これが製作チームで、他にも多くのエピソード監督がいる。まずストーレンハーグの絵を見た時、凄く美しいと思った。そしてストーリー性を感じた。だから友人でもある(監督の)ロマネクにまず相談したんだ。それから(脚本家の)ハルパーンに「この絵からTVシリーズが作れるか」と尋ねた。だって今までそんなことしたことがないだろう、絵からストーリーを作るなんて。僕にはそれぞれの絵が語りかけてくるように思えたんだ。そしてハルパーンは僕たち以上に興奮していた。

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それから(イラストレーターの)ストーレンハーグにハルパーンを紹介したんだ。ご存知のようにストーレンハーグが描く絵は全て、子ども時代を過ごしたストックホルム郊外での経験からきている。1週間も経たないうちにハルパーンはシリーズの原案を創り上げてきた。そこから2年かけて作品を仕上げたというわけだ。ジョナサン・プライスやレベッカ・ホールをはじめとする才能ある俳優や製作スタッフに恵まれて、時間をかけて作り上げたけれど、実際これが番組になるかはまだこの時点ではわからなかった。でもAmazonが非常に気に入ってくれてリリースできたというわけだ。

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――原案となったストーレンハーグの絵というのは、ロボットや謎めいた機械とのどかな風景という相反するイメージを描きながらどこかノスタルジーを感じさせますが、その世界観を表現するにあたり気をつけたところはどこでしょうか?

非常に挑戦的な異質なイメージだよね、だからこそシリーズ化できると思ったんだ。1枚1枚の絵からストーリー性を感じられたし、自然対テクノロジーというだけじゃなくて、野原に遺棄されたマシンからはそれ以上の物語を感じとることができた。自分たちが暮らす町オハイオの地下に存在するあの施設が宇宙の神秘に通じる鍵だとハルパーンは想定したんだ。そして遺棄されたマシンたちは宇宙の神秘の謎を探る実験が行われていた証拠だとね。

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ストーレンハーグの絵を見ているとメランコリックでノスタルジックな感情が湧いてくる。子どもの頃抱いていた生命の神秘の謎のようなもの思い起こさせる。そんなことを本作で描きたかった。でも、生命の神秘に対しての答えは結局ないし、私たち人間にとっては「生きる」という行為そのものが実験だ。SFがテーマのドラマだけど、『トワイライト・ゾーン』みたいなひねりもないし、解説もしていない。「人生」や「老いていく」こと、人間の辿る道にフォーカスして、登場人物の内面を描いたんだ。

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――この作品を拝見してまさにそう思いました! サイエンスとフィクションはもちろんですが、たくさんの愛が詰まったドラマですね。

そう、愛! それがハルパーンがイラストから感じたイメージだ。ハルパーンとストーレンハーグが幼少期を送った環境は実はとても似ていて、この物語は二人の子ども時代の記憶から生まれたもの。このドラマはSFだけど、感情に訴えかける物語を作りたかったんだ。僕の製作会社にとってもこれは大事にしていることだよ。

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実は僕が作品作りを始めた頃、1970年の映画『シャンプー』や『チャンス』みたいなちょっと悲しいコメディ作品を作りたかったんだ。面白くて、感情の起伏があって美しくて...。でも業界の変化はあまりにも早かった。多くのプロダクションがSFを扱うようになり、僕の場合は『クローバーフィールド』や『猿の惑星』を製作するようになって、そして『The Batman(原題)』に繋がるんだけど。そこで僕は、人間の感情の起伏を描こうと思ったんだよ、それがアクションでもSFでもね。だから本作でハルパーンが「こんなことがしたい」とアイデアを持ってきたとき、とても嬉しくて興奮したよ。

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――このドラマには、良いか悪いかは別として、登場人物たちが表現した人間の持つ小さなエゴからくる行動に共感できるシーンがいくつかありました。本作で伝えたいことは何でしょうか。視聴者にどのような気持ちで見て欲しいと思いますか?

そうだね、「共感」というのはまず本作の大きなポイントだ。「自分以外の人生を送れるとしたら」という物語を描いたエピソードは僕のお気に入りのエピソードのひとつだよ。ミステリーだけじゃなく感情移入や共感というのも訴えたかったところだ。そしてこれは本作の重要なテーマのひとつなんだけど、誰かが亡くなっても人生は続くということ、そしてみんなの命に限りがあるということ。それが命の輪だし、これからも続いていく普遍の原理だ。

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――実は私はあなたが製作した『フェリシティの青春』の大ファンなんですが、あの作品は学園ドラマですよね。当時まさか同じ監督がその後SF作品を製作するようになるとは想像もつきませんでした。その他にも多くの有名なドラマや映画を生み出してきましたが、作品作りで大切にしていることを教えてください。

ありがとう!『フェリシティの青春』は僕も大好きなんだ。この作品が僕の原点でやりたかったこと、ちょっと悲しくて面白くてというのがね。そしてJ・J(・エイブラムス)と僕にとって特別な作品なんだよ。ただ残念ながら今の時代には売り辛いのも事実だ、あの頃と違って。だから今は、まず人々の興味を惹くような体裁を整えて、その内側に情感や個人的な経験からくる感情を込めるようにしている。そうすることで視聴者は思いがけない感動を体験することができるというわけだ。

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「『猿の惑星』を見て泣くとは思わなかった」という感想を聞けたときは本当に嬉しかったし、一番の褒め言葉だと思っている。『ザ・ループ』もそんな風に感じて欲しいと思う。この作品を見て感動したり、怒ったり、感情の起伏を感じて欲しいし、それが僕の作品作りにおいて一番大切にしたいと思っているところだ。『フェリシティの青春』と本作は一見似ていないように思えるけれど、ある意味繋がっているんだよ。

本作は、原作者ストーレンハーグの出身地スウェーデンの公式TwitterでもPRされるなど、国をあげて応援されている。

ストーレンハーグの世界観を忠実に再現し、単なるSFドラマではなく、私たちの感情に訴えかける作品に仕上がった『ザ・ループ TALES FROM THE LOOP』は、Amazon Prime Videoで全8話を独占配信中。

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Photo:マット・リーヴス©Shutterstock