ついにファイナルとなるシーズン15の放送が始まった大ヒット犯罪捜査ドラマ『クリミナル・マインド FBI行動分析課』。日本でも愛され続けた本作で吹替えを務めている、現レギュラー声優8人にシリーズ最終回の収録前に独占インタビューを実施し、それぞれの想いを聞きました。第1回目の今回は、シーズン1から出演するJJことジェニファー・ジャロウ役の園崎未恵のインタビューをお届け!
――(取材当時)次回の収録が最終回ということで
そうなんです、最終回...。つらい。
――ファイナルを目の前にして今の心境は?
実はこの取材を受けるにあたって、来週収録のファイナルシーズン最終話を見たんです。シリーズ最終回はこれまでのエピソードが変わった形で展開されていくんですけど、ハッピーだったこともその逆も、今いるメンバーはもちろん、去っていったメンバーや関わりのあった人たちを思い出せるエピソードなんです。
――それは、泣いてしまいそうですね。
話しているだけでちょっと...(涙) 見終わったばかりで話がフレッシュすぎちゃって。JJとしては、当初から変わったこともあったし、変わらないこともあるし...リードに対する思いもそうでしょうね。
正直、来週で終わるのかというのが信じられなくて、"いやいや、まだまだ続けられるでしょ"という気持ちでいたんですけど、最終回を見て、開いていた分厚い物語をパタッと閉じて「おしまい」、でもその本はいつでもそこにあって、いつでも読めるときにまた開けるような、いい終わり方でしたね。
我々には実質14年でしたけど、この間にドラマの中ではもちろん、日本語吹替チームにも色んなエピソードがあって、シーズン15の最終話を迎えてすごく寂しいですね。
――途中抜ける期間もありましたが、15年も演じられると思っていましたか?
思っていなかったですね! これまでいろいろな海外ドラマの吹替えのお仕事をさせていただきましたが、私の中で『クリマイ』は最長シーズンになりました。
ちょっと途中抜けたり、ということはありましたが、1シーズン丸々いなかったというわけではないんですよね。途中抜けと言いつつも、いなくなる理由を見せるためにシーズン冒頭に出ていたり、シーズンの終わりの方で"次のシーズンで帰りますよ"といった見せ方で登場したりしていたので、実質、全シーズン出番がありました。
On #Criminalminds set with @ajcookofficial today. Just a joy to work with and when she says ACTION, it means ACTION! pic.twitter.com/kU7Mfu92
— Vernon Cheek (@Cheekv) August 21, 2012
JJも成長して、もともと渉外担当だったのが捜査官になって、一旦ペンダゴンに行って昇進して帰ってきたと思ったら、すごい訓練されていて、銃をバンバン撃つ強い人になっていて。物語でも色々な変化がありましたけど、私自身も周りもどんどん変わっていて、そういった変化の多くある中で一つの役を変わらずにこれだけ長らく演じさせていただけるというのは、ただ純粋に嬉しいですね。
日本語吹替版は、A・J・クックさんがいて、さらに私がいてという二人三脚で作っているという気持ちでいるんですが、シーズン最後まで途切れることなく、吹替版が放送されるというのは、それだけ支えてくださるファンの方がいるからで、本当に大きな意味を込めてありがたいと思っております。
――印象深いエピソードやシリアルキラーはありますか?
印象深いエピソードといえば、自分中心になって恐縮ですが、やはりキャラクターの名前が付いたシーズン6の第2話「JJ」ですね。このエピソードは、彼女のペンダゴン異動のお話なんですけど、この日の事件を通してもういない姉を思うシーンがあるですが、"もしも姉が生きていたら"、"もしもこうだったら"、っていうJJの中で"もしも"という分岐点を考える1話になっていたと思います。
人間生きていて"もしも、あの時"って考える瞬間は、何か悩んでいるときで、立ち止まって後ろを振り返りますよね。目の前のことにがむしゃらになっていたら、"もしも"って考えないと思うんですよ。そして、その"もしも"が叶わなかった現実という今を受け入れる。そういう点でも私の中では大事なエピソードです。
貴美ちゃん(ガルシア役の斉藤貴美子さん)と大号泣しながらテストして(笑)、演出の方から「向こうそんなに泣いてないからね。そんなに泣きすぎないでね」って言われちゃって。お話もそうですが、収録時の私たちの様子でも思い出深いエピソードですね。
あと、その前のシーズン6の第1話「明けない夜」も印象深いです。このエピソードではラジオを通してJJが犯人を説得するシーンがあるんですけど、『クリミナル・マインド』は人を殺して快楽を得るような、理解しがたい犯人がいっぱい出てきますが、このエピソードの犯人には同情していくんですね。
この作品でたくさん触れられていたのは、私たち自身も何かを引き金に「向こう側」に行く可能性があるということ。それまで普通の、日常の暮らしがあった人が突然、何かのきっかけで犯罪を犯して、一線を越えてしまった、ただそれだけの人なんだっていうのを、すごく考えるようになりました。
説得して犯人に人質を解放させる、ということが目的ではあるんですけど、相手も自分たちと同じ人間で、だから一線を越えてしまったのならば、こっちに帰ってくるきっかけになってほしい、という気持ちをもって、さらに大事に演じた話数でもありました。この『クリミナル・マインド』という作品に関わって、世の中で起きている事件などに対しての見方も変わりました。
あと、キャストが監督した回はそれぞれ独特の雰囲気があって好きなんですけど、個人的にリード役のマシュー・グレイ・ギュブラーさんが監督をやっていたエピソードの犯人がみんなグロくて好きですね(笑) シーズン8の第10話「人形遣い」とか。
――その人形遣いのエピソードは関節を外したりしていて、個人的には見ていられなかったんですが、園崎さんはそういうシーンは平気ですか?
正直そういうシーンは得意ではないんですが、お仕事し始めて間もない頃、ホラー映画の吹替えをよくやらせていただいていてホラー映画だといっぱい出てくるじゃないですか!(笑)なので、そのときに培った技というか、そういうシーンが出たときは"これはドラマなんだ。フィクションなんだ。よくできてるな~"って思って、フィルターを一枚かけて見るようにしていますね。
でも、たまにそのフィルターが取れちゃって自分がしゃべっているシーンなのに"うわっ"て思わず目をそらしちゃって、自分のセリフのところがわからなくて結局、そのシーンを何回も見ないとならないとか、たまにありました(笑) さすがに15シーズンもやると、だいぶ慣れてきましたけどね。
悲惨な状態で出てくる死体シーンとか、あと解剖室でいろいろとむき出しになっているカットとかたくさんありましたけど、変な話ですがそういうところで逆に興味も湧いて、リードがカタカナいっぱいで説明する度に、どういうものなのか気になって解剖学の資料や辞典を調べたりして、知見が広まったりっていうのはありました。
――JJの好きなところは?
あの揺るがない意志の強さですね。大きな決断で揺らぐときもありましたが、女性としての強さもありますし、すべてのシーズンを通して見えるのは、まっすぐ立っている芯の強さですね。シーズン途中から母親になるということの強さであったり、仲間を思う気持ちの強さっていうところがやっぱりすごく魅力的ですよね。
あと、付き合いの長いスペンスやペネロープに対してプライベートを話す時、少し肩の力を抜いたときにちらっと見えるかわいらしさ。そういうのはやっぱり演じていても、楽しかったです。
――JJを演じるにあたり、意識していることは?
物理的な面で気をつけているところは、毎回、収録するときに姿勢を気にしています。JJを演じる時って絶対に自分の中の芯がまっすぐじゃないと、あの芝居とあの声は出ないんですよ。そのために、ヒールのある靴を必ず履いていますし、マイク前に立ったときにたぶん良い姿勢で話していると思います。
演技の面では、どこか客観視する力が強いキャラクターだと思うので、主観よりも一歩引いたところからお芝居をするイメージでなんです。これは初めから意図してやろうとしたのではなくて、気づいたらそうなっていた感じなのですが、よくよく考えると、立場的に事件を客観視しなくてはいけませんし、JJが初登場したシーズン1の第2話目からすでにそうだったのかもしれないですね。
時代の流れを感じるのですが、当初はブロンド女性は作品の中では賑やかしのポジションに置かれることが多い印象でした。実際にJJは渉外担当でまだ組織の末端でしたし、全員が若かったですし、世の中のそういう空気もあったのでBAUの捜査官のみんなが深刻な話をしている最中にワッと違う勢いで入ってくるような演出があったんですよね。でも、それはそれで彼女の"渉外担当というプライド"と"私は仕事をしてチームの役に立っているというプライド"のあらわれとして、シーズンを追うごとに"強さ"という方向に肉付けされていったようです。
15年やっていると世の中の流れが変わってきますから、JJは特にその流れに大きく影響を受けていると思います。日本国内でもそうですけど、ちょうど15-20年前ぐらいはまだ、女性は子どもを産んだら家庭に入るというのが当たり前のように言われていたし、それ以降は子どもを持ちながら仕事と家庭を両立させるためには、といった話は今も続いていますが、議論されていますよね。
そういうのはドラマの中でも描かれていましたし、女性が社会の中で家庭を持ちながらどう生きるかであったり、女性が男性と同じ仕事に就くにはだったり、15年の世の中の移り変わりが反映されて、こっそり社会派ドラマでしたね。
――園崎さんが15年続けていること、変わらないことってありますか?
私は結構飽きっぽいので(笑) 色々やってみるんですが、飽きちゃうのも早くて...。15年はなかなか難しいものですが、環境が落ち着いてここ8年ぐらいずっと続けていることと言えば、朝必ずコーヒーを淹れています。豆から粉に挽いて、休みの日もやっているので本当にほぼ毎朝ですね。朝時間がなくて自分で淹れられなかったとしても、必ず朝どこかのお店で買います。それが朝の日課になっていますね。
それから、シーズン15通してというか、吹替えの仕事を始めてから変わらずやっていることは、前日にリハーサルをしているけれど、出かける前に必ずもう一度、自分の出演シーンを重点的にぎりぎりまで見て出かけるっていうのは続いていますね。たぶんそれは今後も変わらずやっていくんだと思います。
――収録現場のお話をお伺いしたいのですが、まず収録日の初日のこととか覚えていますか?
そう、初日がね!私一人だったんですよ! ちょうどその時期舞台公演を控えていて、他のみなさんと日程が合わなくて、先に収録させていただいたんですよ。その時点ですでにシーズン2まで収録するということは決まっていたんですが、長いお付き合いになるなという予感もあって、すごく緊張していましたね。
実は第1話にもJJ役ではないのですが出させていただいたんです。(※ギデオンの初登場シーンで彼の質問に「遊歩道殺人鬼」と答える学生役。ちなみに、そのあとに登場する女子学生役をガルシア役の斉藤さんが吹き替えています)
――違う役をやられていたんですね。
ほんとに声だけという形でチラッと。それで第1話の雰囲気を知って、第2話からJJとして入ったんです。出番は少なかったんですけど、ものすごく緊張していましたし、手汗もかいていましたし(!)どこか浮ついた気持ちで1、2話録っていました。
というのも、私が『クリミナル・マインド』のレギュラーのお話を聞いたのが収録の1、2週間前だったんですよ。急なタイミングでしたので、心の準備があまりできないまま現場に行って、しかも制作さんも初めての方でしたし、それに加えて"一人で?"っていう状態で...。慌ただしく収録して、右左もわからないまま始まったんですね。
第3話から合流してみなさんと一緒に録ったのですが、レギュラーでしっかりご一緒したことがあったのがエル役の山像かおりさんだけでベテラン揃いでしたし、やっぱり緊張していました。当時は(ギデオン役の)有本欽隆さんがいらして、(ホッチ役の)森田順平さんが中心になって吹替チームをまとめてくださっていました。それで緊張している私と貴美ちゃんを二人がいつも気にしてくださっていて、はじめからすごく団結感ありましたね。
――当初から本編同様にチーム感があったということですが、メンバーの入れ替わりもある作品でした。吹替現場はどのような感じでしたか?
だいたい次のシーズンの話っていうのは、現場内でちらちらっと出るんですよ。前情報で特に(モーガン役の)咲野俊介さんが次シーズンはこういう人がくるらしいとか、新しいキャストの人は前は何役をやっていたとか、そういうことを事前に調べて教えてくれるんです。我々声優陣は"じゃあ声、誰だろう"ってドキドキワクワクしながら待っていましたね。
BAUの演者さんのように、吹替メンバーも家族や親せきの集まりみたいな雰囲気で。毎シーズン必ずお祝いごとがあったんです。シーズン1のときに制作の方にお子さんが生まれたことがスタートで、毎シーズン誰かに何か良い話があって、途切れなかったんですよね。それを必ずみんなでお祝いする。シリーズ通算100話、200話、300話もみんなでお祝いしました。
本当に"家族"と思える番組でしたね。(当初ロッシ役の)小川さんも欽隆さんも、いなくなってしまいましたけど、でも、我々の中にはまだ生きていらして事あるごとにお二人を思い出していて、こんなことありましたよね、なんて振り返ることも何度もありました。シーズンが変わってBAUを離れたメンバーと他の現場で会っても、あのときの空気感のまま引き締まるというか、山像さんも咲野さんもそうですし、(ケイト・キャラハン役の)小松由佳ちゃんもそうだし、みんなどこかこの番組の気持ちでいますよね。
――本作に関わって影響を受けたことはありますか?
15年やっているのもあると思いますが、日本語版ものすごく丁寧に作っています。まず頭からCM前やキリの良いところまで通してテストをして、そのあと"考慮時間"という我々にとっては長い休憩があるんですけど、そのとき調整室で何がなされているかというと、専門用語もたくさん出てきますし、理解しづらい複雑なセリフが多い中、日本語だけ耳で聞いていた場合でもできるかぎり分かりやすいものになるように話し合われています。
台本から我々声優に渡るまでも考慮されていますが、我々が現場に行って実際に音として収録する際も、何度もチェックされている番組だと思います。だから、「『クリミナル・マインド』見てます」と言ってくださる中にも、「日本語よくできていますよね。すごく分かりやすいです」という言葉をたびたび耳にします。
今は感染症拡大防止策の一環で少人数での個別録りになりましたけど、「今の言い方でもいいんですが、後半のシーンのためにここでは視聴者にこう見せたいのでこうしてください」といったようなめちゃくちゃ細かい演出が結構あるんです。それをやっている甲斐もあって、吹替版の人気もすごく高いのではと思いますね。
あと対外的に面白かったことは、朝の某番組で流行ったじゃないですか「じぇじぇじぇ」って(笑) 「あの番組であの言葉を聞くたびに園崎さんを思い出す」って何人かに言われて(笑) "園崎未恵は『クリミナル・マインド』のJJ"って思ってくださる方がすごく増えていて、純粋に嬉しいです。代表作と呼べるものに出会えているということですし、やっぱりとてもありがたいことです。
――最後に『クリミナル・マインド』吹替版のファンの方にメッセージをお願いします。
15年間応援してくださって、ありがとうございました。番組が15年間こうして続けてこられたというのは何よりも「続きが見たいよ」って思ってくださった視聴者のみなさんがいたからこそですし、それをこうやって自分も最後まで完走できたことが本当にうれしいし寂しいですが、有り難いなと思っています。
なんだかんだ犯罪ドラマといいながら、やっぱりこの番組は人間ドラマでもありましたので、ちょっと悩んで立ち止まったときにふとヒントになるような言葉や出来事が、いっぱい散りばめられている番組だと思います。怖い死体もいっぱい出てきて色んなグロいシーンもたくさんありましたけど、その裏には必ず人がいて、事件の裏には必ず人の思いがあるということを心にとめて、世の中に少しでも寛容でいられる世界になってほしいと願っています。
シーズン15最終話を迎えて寂しいですけど、毎話毎話に心を込めて、にぎやかであり、とっても繊細であり、楽しくそして厳かにみんなで力を合わせて収録してきましたので、どうぞ最後まで私たちの活躍を見届けていただけたら嬉しいです。...最終シーズンがほんとに10話しかないのがホントに寂しいですね。この1シーズンで過去のエピソードがギュッと詰め込まれていますので、またちょっと昔のエピソードを見返してみたりだとか、当時を振り返ってみてもらってもいいのかなと思います。
BAUの活躍を見守っていてくださったみなさま、ほんとうにありがとうございました!
ついにフィナーレを迎える『クリミナル・マインド FBI行動分析課』シーズン15(全10話)は、WOWOWプライムにて放送中。そして、毎週火曜日に吹替キャストの本作への思いをたっぷりと語っていただいたインタビュー記事を掲載していきますので、そちらもお楽しみに。
■『クリミナル・マインド』吹替キャストインタビュー
【1】 ジェニファー・ジャロウ役 園崎未恵
【2】 マット・シモンズ役 中川慶一
【3】 タラ・ルイス役 塩田朋子
【4】 ルーク・アルヴェス役 阪口周平
【5】 デヴィッド・ロッシ役 菅生隆之
【6】 エミリー・プレンティス役 深見梨加
【7】 ペネロープ・ガルシア役 斉藤貴美子
【8】 ドクター・スペンサー・リード役 森久保祥太郎
(海外ドラマNAVI)
Photo:
園崎未恵
『クリミナル・マインド15 FBI行動分析課 ザ・ファイナル』(c) ABC Studios