2007年に日本上陸し、以来日本でも愛され続けた大ヒット犯罪捜査ドラマ『クリミナル・マインド FBI行動分析課』も残り2話の放送となった。本作で吹替を務めている、現レギュラー声優8人にシリーズ最終回の収録前に独占インタビュー。最後を締めくくるのは、オリジナルキャストで成長が著しいドクター・スペンサー・リード役の森久保祥太郎のインタビューをお届け!
――ついにファイナルを目の前にして今の心境は?
15年近く、長い年月携わらせていただいたんですけど、まだまだ演じたいという気持ちが正直あります。
@GUBLERNATION
Thank you Matthew !!
"Super ARIGATOU"Enjoy the rest of your stay in Japan !!
"AI SHI TE MA SU" pic.twitter.com/YQGM2gUJoV
— 森久保祥太郎 (@MorikuBorn) June 26, 2018
振り返ってみれば、約15年、様々な事件やドラマがあり、たくさん思い出があったなあと。今は全員が集まっての収録ではないので、一堂に会さずバラバラに終わっていくので、普通に終わるのとはまた違う寂しさがありますね。吹替キャストやスタッフのみんなが言っていますが、一緒に「お疲れ様でした!」とゴールテープを切りたいというのはやっぱりあるんですよ。でも、そういう気持ちがありつつも、これだけ長く作品に関わらせていただいたのは、ほんとにありがたいですし、この作品に出会えたことに感謝しています。
――15年も演じられると思っていましたか?
まさかこんな長くお付き合いできるとは思っていなかったですね。リード役はオーディションで決まったんです。それまではアニメ作品に携わることが多く、吹替の経験は少なくキャリアが浅かったので、『クリミナル・マインド』の収録は冷汗をかきながらやっていましたね。
でも、その冷汗もいまだにかいています(笑) 本当にリード、難しいんですよ! 早口だし、言っていることも難しいですし(笑)
――その苦悩されたというリードを演じる上で意識していることは?
すごいありますね! ドクター・スペンサー・リードっていうキャラクターは、他のキャラクターと比べると成長が著しいキャラクターだと思うんです。一番若いですし、トラウマを抱えることもありました。いろんな経験をして、成長して、時系列に合わせて僕の演じ方はシーズンを追うごとに変わっていきましたね。
シーズン1を見返すと、気になる芝居をしているんですよ! IQが高くて、どこかちょっとオタク気質があるキャラクターというのもあると思うんですが、表情やセリフの運び方など"変人です!"というのが全面に出ている。そこは、僕がリードと出会った瞬間に一番にピックアップして演じた部分ですね。
でも、シーズンを追うごとにどんどんナチュラルになっていって、それはリードの成長もあるだろうし、僕の推測ですが演じるマシュー(・グレイ・ギュブラー)のお芝居の仕方、アプローチが変わってきたのかなと。そういう意味でも僕もそれに合わせてしゃべり方や捉えるポイントは変わっていきました。変な話、やりやすくなっていきましたね。まあでも、今でもたまに気になるお芝居することがありますけどね(笑) それはやっていて楽しいです。
――マシューさんが来日された時に実際お会いされていましたが、役についてなどお話されたことはありますか?
i'm not sure what's happening in this photo. all i know is that i ended up eating that nice man next to me. pic.twitter.com/38cFKyj82J
— matthew gourd gourdler (@GUBLERNATION) July 3, 2016
とにかく立て板に水のように難しいセリフをバーっと話すので、日本語だと非常に難しいと言ったんです。で、「英語ではどうなの?」聞いたら、難しいとかはなく「別に」っていう感じだったんですよ(笑)
でも、彼自身普段からドクター・スペンサー・リードばりの早口なんですよね。頭がすごくいいので、普通にしゃべっても早いし、表情も変わるし、とにかくにぎやかな人で、僕は冗談半分で「頼むから、もう少しゆっくりしゃべってもらえないかな?」って言ってたんですけど、そういった彼に対して失礼だなって思いましたね。
あと驚いたことがあって、マシューはこの『クリミナル・マインド』で何回かメガホンをとっていて、キャストの監督回では確か最多だったと思うんですが(※編集部調べ シーズン5の第16話「母の祈り」から始まり全12回)、「演者と監督を担って、大変じゃない?」って聞いたんです。そしたら、会議室でテーブルを囲んでみんなで話しているシーンでは、テーブルの下に撮影用のモニターを置いて演じながらチェックして、ジャッジしているって言ってたんですよ! 後で見るんじゃなくて。それはびっくりしましたね。演者としてプレーすることも好きなんでしょうし、クリエイター気質もあって、映像作品に限らず、絵を描いたりだとか、実際お会いしていろんなクリエイティブなことをするのが好きな方なんだなって思いました。もちろんサービス精神が旺盛な方でもあって、皆さんに愛されているんだなってすごいわかる人でしたね。
――印象深いエピソードやシリアルキラーは?
どのエピソードも非常に濃いんですけども...、リードの監督回は他のエピソードとは雰囲気が違って印象的ですね。監督や脚本家をチェックせずに、そのエピソードを見ても「もしかして、(監督は)マシューじゃない?」って、本編が始まった瞬間から画の雰囲気でわかりますよね。タッチが違うというか、同じ『クリミナル・マインド』でも独特で面白いですね。
あと、リードとお母さんの関係性がわかるエピソードですね。お母さんが統合失調症ということで、自分に遺伝するかもしない、思うように行かないなど彼は悩んでいましたよね。ファイナルシーズンでも二人の関係性が描かれているんですが、これまでのリードが抱えていた苦悩が救われたようなエピソードで、ここへきて一番印象的なシーンになりましたね。
――リード以外に、興味深いキャラクターはいましたか?
ギデオンとロッシですね。ギデオンはリードとの関係性が印象深くて、リードがギデオンのことをどう思っていたかを垣間見れるシーンやセリフが多々あったんです。ロッシも優秀なキャリアの持ち主ですが、料理を振舞ったり、おしゃれなおじさんのプライベートが垣間見れるのがいいですね。リードを演じていて、師匠であり父親のようなロッシやギデオンと接しているリードの反応が他のメンバーとは違うところがあって二人が印象的ですね。
――15年リードを演じられて、思いを伝えるなら?
もちろん優秀な捜査官であると思うんですけど、リードにはまだまだ人間としての成長に伸びしろがあると思うんです。今回シリーズが終わりますけど、最近はリバイバルとかリブートとか多いですから、また5年後、10年後のBAUを描くような作品があった時に彼がグンっと大人になった姿を見たいですね。さらにもっといってね、ロッシの立場になったリードに会ってみたいですね。僕もその時、また声を当てられるように頑張りたいと思います。
マシューには、ほんとにお疲れ様でしたと伝えたいですね。僕らがアフレコを1日でやるのとは全然違うわけで、この長い年数を、しかもこういった役どころを演じ続けるということは大変なことだと思うんです。でもここからのマシューも楽しみですよね。
1度、彼が主演の映画『68キル』でも吹替をさせていただいたことがあるんですけど、またリードとは違って面白かったですし、他の作品でも彼を見たいですね。年齢を重ねれば重ねるほど、どんどん幅のあるお芝居をされる役者さんだと思うので、これからも期待しています。
私は日本が大好き!あなたの美しい国に私の新しい映画を持ってきてくれてありがとう、いつも最高のポスターを作ってくれてありがとう。 pic.twitter.com/jkUF4zSC4J
— matthew gourd gourdler (@GUBLERNATION) January 12, 2018
――収録現場の雰囲気は?
ディレクターやスタッフさんを含めて、みんな仲が良いですね。シーズンが終わるごとに毎回旅行に行くぐらいですから。でも、そういった間柄でも良い緊張感があって、例えばイントネーションを確認し合ったり、ディレクターの清水洋史さんが一言一句大事にこだわる方なので、あまたある収録現場の中でも時間をかけて録っている作品じゃないかなと思います。
あとで見返してもわかるんです、クオリティが詰め込まれている作品だと。悲惨なシーンが多いので映像のインパクトが強いですが、清水さんからこの場面に関してはこういうことを大事にしていこうとか、同じ会議室のシーンが毎回出てきますが、今回は緊張感を高めましょうとか、ここは緊張感緩くていいんじゃないかとか細かくディレクションをしていただくので毎回雰囲気が違うんです。それに応えようとする先輩方はお見事だし、僕はもう一番若手みたいなもんだったので、毎回勉強しながらやっていましたね。みんながセリフ一つ一つを大事に心がけていて、最高のものを制作する現場です。
なので、向こうの現場もそうだと思うんですが、物語が重ければ重いほど本番以外の時間はにぎやかなんですね。モーガン役の咲野さんがムードメーカーで、その後リーダーになるプレンティス役の深見さんも姉御でみんなを引っ張っていただいて、和気あいあいとしています。きっと、作品やお芝居の話をしていたら照れくさくなるんだと思います。演じる中にはグっとくるものがあるので、感情を本番以外では出さないようにとっておく感じですね。
そういうと、モーガンとリードは兄弟のような関係性だったので、モーガンが去るエピソード(シーズン11の第18話「美しき惨事」)はほんとに悲しかったですね。実際咲野さんとも毎週会えなくなるわけなので。本番でそういう空気になるので、それ以外のところでは作品の話はしないですね。
――そのエピソードはマシューさんが監督して、ガルシア役のカーステン・ヴァングスネスさんが共同で脚本されていましたね。
エモいですよね。向こうのキャスト同士も仲が良いですし、モーガン役のシェマー(・ムーア)とマシューは一緒に来日していましたね。その時、僕も咲野さんと一緒にこっそりとお二人に会いに行っていました(笑)
――そうなんですね。マシューさんは先ほどお伺いしましたが、シェマーさんはどんな方でしたか?
もうね、色気ムンムン!(笑) 劇中ではいつもしかめっ面していますけど、普段はニコニコしていて、柔らかい表情の方ですね。マシューはマシンガントークでワーッとはしゃいでいる感じですけど、また流れている時間の早さが違うような感じで、ゆったりしながらムーディーな方でしたね。あれはね、百戦錬磨でしょう。
――本作は全米ナンバー1を取ったことがないですが、シーズン15まで製作されました。改めて本作の魅力とはなんだと思いますか?
逆にナンバー1を取れなかったことが良かったのかなって。取ってしまうとナンバー1を守らなきゃいけないと思うんです。さらに上に飛ぶために、人気の俳優さんを使わなきゃとか、ストーリー以外のところを気にかけないといけなくなるんじゃないかなと。レギュラー陣の入れ替えもありましたけど、変わらずそこにBAUが存在し続けたというのは、最後まで『クリミナル・マインド』の世界観を崩さず日常を描き、ちょうどいい高度で飛行できたことでここまでこれたのかなって思います。
――作品に携わって影響を受けたことは?
当初、吹替というキャリアがなかったので、僕を知ってくれている人たちは「吹替やるんだ」っていう反応でしたし、今も吹替という印象が根付いていないみたいで、「たまたま『クリミナル・マインド』を見たら、この声、森久保じゃね?」っていうリアクションがありまして、アニメ以外もやるんだと知ってもらえた機会だったと思います。
それから、よく飲みに行くバーがあるんですけれども、そこの常連さんたちの中で僕を知っている方たちが何人かいらっしゃって、その方たちが吹替版で見てくれていて「面白い」って言ってくれるんです。「あれ次どうなんの?」って、聞かれますね(笑)
嬉しかったのは、久米宏さんがご自身のラジオ番組で「『クリミナル・マインド』は吹替版が面白い」って語ってくださったことですね。『クリミナル・マインド』自体が好きで字幕版も吹替版も見るけど、吹替版じゃないと見終わった感じがしないというぐらいの感想を言ってくれてて、これは収録現場で盛り上がりましたね。
あとは、そうですね。僕も一つ自信を持たせてもらいました。吹替というものに対して、まだ経験が浅かった分、一つの作品で一つのキャラクター、一人の方に毎週当てさせてもらえたことは僕にとって勉強にもなったし、成長したと思います。
――リードのファイナルシーズンのみどころは?
BAUが追う事件が本筋としてあるんですが、サブストーリーとして、リードのプライベートな部分が割とフォーカスされています。やり応えがありますね。
――最後に『クリミナル・マインド』吹替版のファンの方にメッセージをお願いします。
僕自身キャリア上、一番深く長く付き合わせていただいた作品なので、すごくありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。これまで毎週収録してきましたが、『クリミナル・マインド』は慣れることがありませんでした。先輩の吹替キャストのみなさんもおっしゃっていたんですけど、だいたい半年ないし1年やってくると、演じる俳優さんの呼吸がわかってきたりするものなんですが、毎回緊張感をもって演じてきました。吹替版には良いものが凝縮されているということを、自信をもってお伝えしたいと思います。リスペクトがあって、僕らなりに作品を良い方に膨らまそうと思ってやっていますので、存分に楽しんでいただけたらなと思います。
長い間、同じ人の顔を見て、声を当てているとすごく親近感も愛情も湧くし、会ったことのない役者さんたちも会ったことがあるような気がしてきちゃうし(笑)、それぐらい僕らは一心同体になって、シリーズ15までやってきたので、その辺の魂を感じていただけたらなと思います。最後まで精一杯リードとして、しっかり着地できるように演じさせていただきました。
ついにフィナーレを迎える『クリミナル・マインド FBI行動分析課』シーズン15(全10話)は、WOWOWプライムにて放送中。シリーズ最終回まであと2話。最後まで見届けよう。
■『クリミナル・マインド』吹替キャストインタビュー
【1】 ジェニファー・ジャロウ役 園崎未恵
【2】 マット・シモンズ役 中川慶一
【3】 タラ・ルイス役 塩田朋子
【4】 ルーク・アルヴェス役 阪口周平
【5】 デヴィッド・ロッシ役 菅生隆之
【6】 エミリー・プレンティス役 深見梨加
【7】 ペネロープ・ガルシア役 斉藤貴美子
【8】 ドクター・スペンサー・リード役 森久保祥太郎
(海外ドラマNAVI)
Photo:
森久保祥太郎
『クリミナル・マインド15 FBI行動分析課 ザ・ファイナル』(c) ABC Studios