正統派ヒロインからセクシー女優まで、『ダウントン・アビー』リリー・ジェームズの魅力に迫る

英女優リリー・ジェームズが快進撃を続けている。数多くの話題作に出演し、個人的にも今一番気になる女優だ。そこで今回は、リリー・ジェームズの活躍を振り返りながら、彼女の魅力を探ってみよう。

リリー・ジェームズは英南部サリー出身の1989年生まれで現在34歳。映画『エイリアン』に出演した米女優ヘレン・ホートンを祖母に持ち、2010年にギルドホール音楽演劇学校を卒業した。同校からは、ユアン・マクレガー、ダミアン・ルイス、ダニエル・クレイグ、ヘイリー・アトウェル、ジョディ・ウィッテカー、ミシェル・ドッカリーらが輩出されている。

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『ダウントン・アビー』
リリーが一躍脚光を浴びるようになったのは、人気シリーズ『ダウントン・アビー』のローズ役がきっかけ。彼女が登場するシーズン3がイギリスで放送されたのは2012年で、このとき、リリーは23歳。好奇心と冒険心いっぱいのローズのキャラはそのままリリーのイメージになったのではないだろうか。

その後、ケネス・ブラナー監督が実写化したディズニー映画『シンデレラ』(2015年)に主演。不運にも負けずに王子に身染められて幸せをつかんでいくストーリーに豪華なドレスなど、女子の夢をそのまま体現した文字通りのフェアリーテールで美しく賢い主人公エラを演じて大ブレイクした。これ以降、歴史ドラマを中心にメジャーな英国ドラマに出演していく。

■『戦争と平和』(2016年)

トルストイ原作を映像化したBBC製作の豪華な大河ドラマ。天真爛漫で恋に憧れる少女ナターシャ・ロストワは、アンドレイとピエールというまったく性格が異なる二人の男性から愛されるキャラクター。

■『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017年)

ゲイリー・オールドマンが第二次世界大戦下に英首相になったチャーチルを演じたジョー・ライト監督(『つぐない』)の戦争映画。男ばかりの話のなかで、添え物的役割ではなく、チャーチルを影から支える秘書エリザベス・レイトン役。

■『ガーンジー島の読書会の秘密』(2018年)

メアリー・アン・シェイファーとアニー・バロウズ原作をマイク・ニューウェル監督(『フォー・ウェディング』)が映画化。第二次世界大戦下のガーンジー島の読者会をめぐる人間模様を描く。二人の男性の間で揺れ動きながらも、自らの人生を切り開いていく作家ジュリエットに扮する。

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■『時の面影』(2021年)

実話をもとに、1938年に英東部サフォークで、アングロサクソン時代の船葬墓サットン・フーの発掘に携わった考古学者を描くNetflixオリジナル映画。発掘を手伝う若き考古学者ペギーを演じる。

そして、リリーの魅力をぎゅっと凝縮した作品が、今年5月に英BBC Oneで放送された全3話のドラマシリーズ『The Pursuit of Love(原題)』だ。

リーズデイル男爵ミットフォード家の長女であるナンシー・ミットフォードの自伝的作品でもある小説「愛の追跡」を映像化した同作。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の英国を舞台に、自由奔放で情熱的な英上流階級の娘リンダ(リリー・ジェームズ)の恋愛遍歴を知的な従姉妹のファニー(エミリー・ビーチャム)の視点から綴っていく。

BBCお得意の正統派文芸ドラマと思いきや、ちょっとエキセントリックなロマンチックコメディ風味。ガーリーなファッションとヘアスタイル、色鮮やかなインテリアもゴージャス、T・レックスやブライアン・フェリーなど音楽の使い方もユニークだ。

世間体など気にせず、一途に愛を追い求めるうちに、本当の愛を見つけてくリンダ。そしてリンダの側にいつも寄り添うファニー。親友同士のふたりをリリー・ジェームズとエミリー・ビーチャムが好演。女性であることの喜びと苦しみ、愛することの美しさと悲しさが心に刺さりまくる。

1930~1940年代の英国ファッションがいつもお似合いのリリーだが、本作でも美しいドレスを着倒して、見る者の目を楽しませてくれる。BBCのインタビューにリリーは、同作の製作で影響を受けた作品として、ソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』などを挙げている。映画『メリー・ポピンズ リターンズ』などの英女優エミリー・モーティマーが監督・脚本を手がけ、アンドリュー・スコット(『フリーバッグ』)、ドミニク・ウェスト(『レ・ミゼラブル』)など共演陣も豪華。今作が日本上陸の際にはぜひ注目していただきたい。

歴史ドラマ常連の一方で、現代を舞台にした作品でのリリー・ジェームズはガラリと異なる顔を見せる。エドガー・ライト監督によるアクション映画『ベイビー・ドライバー』(2017年)では、犯罪世界に住む青年と運命の出会いをするキュートなウェイトレスのデボラ役を。大ヒットミュージカル映画の続編『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』(2018年)では、前作でメリル・ストリープが扮したドナの若き日を演じ、歌や踊りも披露。そして、ビートルズが消えてしまった世界を描いたダニー・ボイル監督のファンタジー・コメディ映画『イエスタデイ』(2019年)では、主人公ジャックを支えてマネージャー兼運転手を務める幼馴染みのエリー役を務める。

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映画『イエスタデイ』
いずれもキラキラ輝くような笑顔で、恋愛や仕事にも全力投球、愛する人を支える強さをあわせもち、元気いっぱいで前向きなキャラクターという点で共通している。彼女自身が意識してそういう役柄を選んでいるのかはわからないが、歴史ドラマ、現代ドラマ共々、自分に正直に生きていく女性を嫌みなく素のままで演じられるところがリリーの一番の魅力だろう。

そんなリリー・ジェームズの最新作は、モトリー・クルーのドラマー、トミー・リーとセクシー女優パメラ・アンダーソンの波乱万丈の結婚生活を描く『Pam & Tommy(原題)』。今年7月に撮影が終了した同作は、2022年2月2日より米Huluにて配信予定。トミー役はマーベル映画のバッキー・バーンズ役でおなじみセバスチャン・スタン、そしてパメラをリリーが演じる。

今年5月、ソーシャルメディアにファーストルックが公開され、本人たちにソックリと大反響。そして、先日ティザー映像が公開となり、再び話題を呼んでいる。

正統派で清楚なイメージが強い彼女がパメラ・ジョーンズ?とも思ったが、実は私生活のリリーは恋多き女性としても知られている。マット・スミス(『ドクター・フー』)と5年間にわたり交際、昨年はドミニク・ウェストとの不倫騒動や、クリス・エヴァンス(『アベンジャーズ/エンドゲーム』)とデート報道があり、今年2月からは米ロックバンド、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのメンバー、マイケル・シューマンとの交際をスタートするなど話題を集めている。数々の恋愛を遍歴し、大人の女性の艶かしさをも見られるようになったリリー。『Pam & Tommy』では、これまでとは一味違う彼女の側面が見られることは間違いなしだ。

コロコロと変わる表情、可憐な笑顔、そこにいるだけで存在感がある。そんな女優がリリー・ジェームズ。「美しい衣装を着て、カメラに向かって微笑んでいるだけ」「実力派女優とは真逆で演技力はちょっと...」という厳しい批判の声も聞かれるが、それもいわゆる美人女優が直面する試練ともいえるだろう。リリー・ジェームズの今後のさらなる活躍を期待したい。

(文/Yoshie Natori)


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Photo:リリー・ジェームズ©Lia Toby/FAMOUS /Disney+(ディズニープラス)にて配信中 実写版『シンデレラ』© 2021 Disney /『ダウントン・アビー』© 2014 Carnival Film & Television Limited. All Rights Reserved. /『ガーンジー島の読書会の秘密』© 2018 STUDIOCANAL SAS /『イエスタデイ』© Universal Pictures