ドラマの主戦場が配信サービスへと移って以来、その最大の強みの一つは、毎週1話ずつ放送するテレビのスタイルとは異なり、まとまったエピソードを一度に配信し、視聴者が「イッキ見」できる点にあった。しかし、ここ数年で、このトレンドに大きな変化が生じている。『私たちの青い夏』や『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室』などのように、週ごとにエピソードを配信する作品が目立ち始めたのだ。
これは、ストリーミング世代の視聴体験を根本的に変えつつある現象であり、配信サービスが従来のテレビの慣習を取り入れ始めた理由と、その影響について専門家が分析している。
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飽和するコンテンツ市場が招いた選択の麻痺
オスロメトロポリタン大学でメディアコミュニケーション学を教えるヴィルデ・シャンケ・スンデ(以下、ヴィルデ)教授は、ストリーミングプラットフォーム、特に初期から市場を牽引してきたNetflixが、「好きなときに好きなものを見られる」という柔軟性を売りにしてきたと指摘する。これが、シーズン全話を数日あるいは一度に視聴する「イッキ見」スタイルを確立させた。
しかし、ストリーミング市場に競合が多数参入し、無数のコンテンツが溢れかえるようになった結果、多くの視聴者は選択肢の多さに圧倒され、「何を見るべきか決められない状態」に陥ったとヴィルデは述べている。
こうした視聴者の状況を受け、ストリーミングサービスは段階的な配信、すなわち「週1配信」を復活させるなど、従来のテレビの慣習を取り入れ始めた。さらに、授賞式やスポーツイベントといったライブ配信の要素も組み込み始めており、これは市場の状況に対する明白な対応策だと研究者たちは記録している。
「リアルタイム」と「イッキ見」の良いとこ取り
セントラルフロリダ大学の映画・マスメディア学準教授ブリジット・ルーベンキング(以下、ブリジット)も、かつてイッキ見視聴で名を上げたストリーミングサービスの多くが、近年はリアルタイム視聴寄りのスタイルへと移行していることを認める。だが、現在の状況は、両者のメリットを融合させた中間点に位置するものだという。
一度ストリーミングの柔軟性を知った視聴者が、完全にリアルタイム視聴へ戻ることは考えにくいとブリジットは分析する。そのため、「段階的配信」こそが、ファンが両方のメリットを享受できる最適解なのである。イッキ見したい視聴者は数話をためてから一気に視聴でき、一方で文化的な盛り上がりに参加したいファンは週ごとにリアルタイムで楽しむことが可能となったのだ。
文化的な会話を取り戻す戦略
この部分的なリアルタイム視聴への回帰は、かつてのように決まった時間にテレビを見ることを強いられた時代とは異なり、「文化的な会話に参加したい人々が自ら選択している」結果だとヴィルデは語る。
最新エピソードが公開され次第すぐに視聴することで、ネタバレを避けられるうえ、作品についてのコミュニケーションに参加すること自体が楽しみとなる。
ブリジットもまた、Netflix初期の戦略を振り返り、とにかく多くの作品を揃えることで誰にでも何かを提供しようとしたが、その結果、視聴者がそれぞれ異なる作品を見ていることが多くなり、作品の文化的影響力が希薄になったと述べる。友人同士で同じ作品について熱く語り合える機会が失われていたのだ。
しかし、ストリーミングサービスが段階的配信を導入したことで、こうした文化的な会話が再び戻りつつある。『ラブ・イズ・ブラインド』のようなリアリティ番組は、最終回に向けて視聴者の熱も高まり、視聴会が開かれるほどの盛り上がりを見せている。
また、AppleTVの『セヴェランス』では、かつての「ウォータークーラー効果」(職場などの雑談スペースで話題になる現象)が健在だ。ファン理論やワークライフバランスをテーマにした議論が生まれ、没入型イベントにファンが殺到するなど、その社会的影響力は計り知れない。
イッキ見という自由度を保ちつつ、「週ごとの公開」という仕組みを取り入れることで、番組のヒットの仕方は新たなフェーズに入ったと言えるだろう。(海外ドラマNAVI)
参考元:CBC





