アメリカドラマ史上最もアイコニックなテーマ曲の一つとして知られるのが、大人気犯罪ドラマシリーズ『LAW & ORDER』のオープニングテーマだ。1990年、シリーズの生みの親であるディック・ウルフから、音楽プロデューサーのマイク・ポストへ出された「ニューヨーク市を定義せよ」というミッションから、この名曲は誕生した。わずか6時間後には、シリーズを象徴するテーマ曲が完成したのである。
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『LAW & ORDER』の象徴的なテーマ曲
この曲が、放送開始から35年を経た今、再び脚光を浴びている。きっかけは、あるTikTokクリエイターがこの音楽に合わせて創作したダンス動画。ネット上では瞬く間にリメイク動画が量産され、中には『LAW & ORDER: 性犯罪特捜班』に出演するマリスカ・ハージティとケリー・ギディッシュが披露したバージョンも含まれていた。
@nbc Special Dance Unit 💃 #SVU | NBC and Peacock #LawAndOrder DC: @Sanoj
ニューヨークを定義するようなテーマ曲
このテーマ曲の制作は、ウルフがパイロット版の脚本をポストに送ったことから始まった。かつて『ヒル・ストリート・ブルース』(1981年~1987年)でもタッグを組んだ旧知の仲である二人は、すぐに音楽的な方向性について話し合った。
『LAW & ORDER』の脚本を受け取ったポストは、ウルフから「ストリートから蒸気が噴き出すような、ストリート感と威厳、そして“正義の天秤”を表現してほしい。全体としてニューヨーク市を定義するような曲にしてほしい」という明確な「行進命令」を受けたという。
ポストは、このコンセプトにジョージ・ガーシュウィンの名曲「Rhapsody in Blue」がすでに体現していると感じ、約70年前のこの作品から着想を得ることを決めた。キーボードで最初の印象的なリフが生まれ、手応えを感じたポストは、新しく手に入れたギターを試し、二つの要素が見事に融合した瞬間が訪れた。ガーシュウィンへの敬意を込めてブリッジ部分にはクラリネットを使用。こうして、ジャジーでざらついた質感のテーマ曲が完成し、ウルフへと届けられた。
ポストは当時のウルフの反応について、公式YouTubeでこう振り返っている。「彼は本当に気に入ってくれた。これこそ私のドラマだ。まさに望んでいたものだったと言ってくれたんだ」
妥協しないウルフの要求から生まれた「ダン・ダン!」
テーマ曲の完成後、次のプロジェクトに取り掛かろうとしていたポストのもとに、再びウルフから電話がかかってきた。今度は、場面転換に重みのある「日付スタンプ」のような音を入れたいというアイデアだった。
著名な作曲家であるポストは、当初このアイデアに難色を示し、「効果音担当に電話しろ」とまで言い放った。しかしウルフは引き下がらず、既製の音ではなくプロが新たに音を創作するべきだと主張。
そこで、ポストは作曲仲間のダニー・ラックスとともに、身の回りのあらゆる物を叩き、音を試していく。そしてついに、現在ではシリーズに欠かせない、象徴的なあの「ダン・ダン!」という音、通称「The Clang」が生まれたのである。
数年後、ウルフから届いたメモには「面白いと思わないか? 君が作ってきた素晴らしい音楽よりも、みんなが一番気にするのは“音符ですらない”二つの音なんだ」と記されていたという。ポストは「彼は正しかった」と認めつつ、「The Clang」が音楽として分類されているため、使用されるたびに著作権使用料が支払われることも明かしている。
『LAW & ORDER ロー&オーダー』はPrime Videoでレンタル配信中。『LAW & ORDER: 性犯罪特捜班』はHuluにて配信中。(海外ドラマNAVI)
参考元:People