Netflix『アンブレラ・アカデミー』あのキャストのアイデアがボツになった理由

Netflixの人気SFドラマ『アンブレラ・アカデミー』でカギを握るキャラクターとして登場したエリオット・ペイジ演じるヴィクター。キャスト同士で違うシナリオの可能性を話していたというが、もしそのアイデアが実現していれば、より悲劇的な内容になっていたかもしれないとScreen Rantが考察している。

 

ヴィクターが個人として成長する物語を重視

ジェラルド・ウェイとガブリエル・バによる同名コミックを原作とした『アンブレラ・アカデミー』。風変わりな大富豪サー・レジナルド・ハーグリーブズ(コルム・フィオール)に引き取られ、訓練を受けた超能力を持つ7人の養子たちを描く本作では、数々の印象的なストーリーがあるが、そのひとつに挙げられるのがヴィクターとシシー・クーパー(マリン・アイルランド)の物語。

シーズン2でハーグリーブズ兄妹たちは1960年代のテキサス州ダラスにバラバラにタイムスリップすることになり、ヴィクターは1963年に到着するが、その直後にシシー・クーパーが運転する車にはねられてしまう。記憶喪失に苦しむヴィクターはシシーの自宅で介抱してもらうことになるが、療養生活を送る中でシシーの息子ハーランと深い絆を築き、シシーとも恋に落ちることに。こうして出会ったヴィクターとシシーだが、二人に待ち受ける運命は過酷なもので、最後まで結ばれることはなかった。

二人の関係を支持していたファンの間では「タイムトラベルによってもしも二人が再会したら…」という声もあがっていたが、その思いはキャストも同じだったようだ。

Apple TV+で3月14日より配信が始まったクライムドラマ『ドープ・シーフ』に出演するマリンはMovieWebの取材に応じる中で「『アンブレラ・アカデミー』が終わってしまったのは残念。エリオット・ペイジと私は、ずっとファンのような夢を抱いていた。あの作品にはタイムジャンプがあるから、もし別のタイムラインでキャラクターたちが再会できたらいいのにと思っていたの」とコメント。エリオット・ペイジと共に別のストーリー案を考えていたことを明かした。

確かにファンが見たかったストーリーラインではあるものの、作品が重視したのは二人の愛を育むことではなくヴィクターが個人として成長する物語を描くこと。兄妹の中でも最も強力な能力を持っていたヴィクターは、力の制御に苦戦。ゆえに記憶操作を受けたり、兄妹から孤立することになったり、世界の終末を招く引き金になってしまったりする。

しかしその旅路を描くことは、単なる自己発見にとどまらず、成長と過去の傷を癒す物語を描くことでもあり、作品に欠かせない重要なテーマを映し出すことに成功した。もしもシシーと幸せになる展開が描かれていれば、こうしたところまで深く描くことはできなかったかもしれない。

ヴィクターに限らず、ハーグリーブズ兄妹の誰も本当の意味で幸せな結末を迎えることはなかった。結局ハーグリーブズ兄妹たちは宇宙を救うために自らを犠牲にしなければならず、彼らが本当の意味で幸せになる未来は最初から用意されていなかったのだ。もしシシーとヴィクターが再会していたとしたら、それはヴィクターの結末をさらに悲劇的なものにしていた可能性もある。

『アンブレラ・アカデミー』シーズン1~4は、Netflixにて独占配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:Netflixシリーズ「アンブレラ・アカデミー」シーズン 1~4独占配信中