米AMC製作による傑作クライムドラマ『ブレイキング・バッド』。2013年の放送終了から10年以上経つ今もなお語り継がれる本作では、様々な衝撃的な展開があったが、中でも特にショックを与えたあの人の死について、その理由をCBRがまとめている。
(この記事はネタバレを含みます)
物語全体に大きな影響を与えた死
2008年から2013年にかけて全5シーズン放送された米AMCの大ヒットクライムドラマ『ブレイキング・バッド』。テレビドラマの歴史を変えた画期的な作品として今もなお高く評価される本作は、巧みに視聴者を翻弄してきたが、特に転換点として今も記憶に焼き付いているのがクリステン・リッター演じるジェーン・マーゴリスの死。シーズン2という比較的早い段階で起きた出来事だが、物語全体に与えた影響は計り知れない。ジェーンの死がなぜこれほどまでに衝撃的で象徴的なシーンになったのか。その理由を見てみよう。
ジェシーを暗い道へと追いやるきっかけに
ジェシー・ピンクマン(アーロン・ポール)と心温まる関係を築いていたジェーン。元ヘロイン中毒者である彼女は、一度は薬物を絶っていたもののジェシーと時間を過ごす中で再び薬物に手を出してしまう。傷つきやすく弱さを抱えた二人は、幸せや赦し、自由を求めて努力するが、薬物依存から抜け出す方法を見つけられない。その姿は残酷なもので、ジェシーはジェーンの薬物再依存と、お互いに悪影響を与え合う関係に対して、罪悪感を抱き続けていた。
それでもジェーンを愛していたジェシーにとって、彼女の死は人生を永遠に変えてしまうものになる。この悲劇によってジェシーは罪悪感や自己嫌悪に囚われ、さらにはウォルターの支配下にますます深く取り込まれるように。ジェシーとジェーンが夢見た幸せは儚くも崩れ去り、ジェシーは苦しい道へと進むことを余儀なくされてしまうのだ。
ウォルターにとっての悪役としての転換点
過去に人の命を奪うことはあっても、合理的に正当化する理由があったウォルターだが、ジェーンの死への関与は、初めて自身の利己的な目的のためだった。この出来事を機に、ウォルターは暗黒の悪役へと変貌していく。ジェシーに対してますます支配的な態度をとるようになるのだ。ウォルターはこのことについて多くは語らなかったものの、はっきりとその影響を理解しており、あえてジェシーを従わせる手段として沈黙を使っている点が最も恐ろしい。
悲劇的な連鎖を引き起こす
ジェーンの死は、ジェシー、ウォルターだけでなく、多数の犠牲者を出す連鎖反応を引き起こす。空港の管制官であるジェーンの父ドナルドは娘を失った悲しみを仕事にぶつけることで現実逃避できると信じていたが、結局仕事に集中できず、飛行機同士の衝突を認識することができなかった。結果、墜落事故が起きてしまい167名が命を落とす史上最悪の航空事故のひとつに。多くの人の命を奪った悲劇の発端にはウォルターがいるというのが恐ろしく、単純な行動がどれだけ大きな結果を引き起こすかを強く見せつけた。
『ブレイキング・バッド』は、Netflixにて配信中。(海外ドラマNAVI)
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